質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第六八号

チンパンジー等に対する侵襲的実験の禁止およびヒトとのキメラ作成に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年四月十日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   チンパンジー等に対する侵襲的実験の禁止およびヒトとのキメラ作成に関する質問主意書

 文部科学省の科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚等研究専門委員会において、動物性集合胚によるヒトと動物のキメラ産出の解禁について検討がなされている。二〇一八年三月三十日の同専門委員会(第百四回)において主査一任で了承された取りまとめ文書「動物性集合胚を用いた研究の取扱いについて」では、ヒト以外のヒト科霊長類(以下「チンパンジー等」という。)の胚にヒトの細胞を入れ、種間キメラを作成することを明確に禁止する記述がなされていない。
 そもそも、ヒトと最も近縁であるため倫理的取扱いが求められている、絶滅危惧種でもあるチンパンジー等に対する侵襲的実験について、EUでは「科学的な目的のために使用される動物の保護に関する二〇一〇年九月二十二日の欧州議会及び理事会指令 2010/63/EU」において実質的に禁止されており、アメリカでも種の保存法における許可制のもと医学目的では許可されないこととなったため、国際的には法的にも廃絶の流れにある。
 しかし、我が国では霊長類研究者らによる自主的取り組みでチンパンジー等に対する侵襲的実験は廃絶されてはいるものの、法的には明確に禁止されていない。にもかかわらず、チンパンジー等に対する侵襲的実験は行われるはずがないのだからヒトとチンパンジー等との間のキメラ個体の産生の禁止を明文化する必要はない、との結論に至っていることは理解に苦しむ。ヒト科間のキメラ作成に関し、あまりに性善説に立ちすぎているのではないかとの観点から政府の見解を確認したく、以下質問する。

一 現時点で、我が国において、チンパンジー等に対する侵襲的実験を禁ずる法令は存在するか。

二 チンパンジー等に対する侵襲的実験が霊長類研究者らによる自主的取り組みで廃絶されていることをもって、今後も日本国内の研究機関等においてチンパンジー等に対する侵襲的実験が行われることはないと文部科学省が考える根拠は何か。

三 前記取りまとめ文書における「我が国においては、平成二十四年以降、類人猿に対する侵襲を伴う研究は廃絶されている」との文言をもって、ヒトとチンパンジー等との間のキメラ胚の作製及びその着床からキメラ個体の産生までの行為は禁止されたものと解釈してよいか。

四 ヒトとチンパンジー等との間のキメラ胚の作製及びその着床からキメラ個体の産生までの行為の禁止について、前記取りまとめ文書において明文化していない理由は何か。ヒトとチンパンジー等との間のキメラ個体が産生されてもよいと考えているのか。

五 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律ではヒトとチンパンジー等との間のキメラ胚の作製及びその着床からキメラ個体の産生までの行為を禁止することができないのであれば、政府として、チンパンジー等に対する侵襲的実験自体を禁止する法的措置を講ずる必要があるのではないかと考えるが、いかがか。

  右質問する。