質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第六七号

高度プロフェッショナル制度の立法事実に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年四月九日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   高度プロフェッショナル制度の立法事実に関する質問主意書

 政府が提出した働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(第百九十六回国会閣法第六三号。以下「働き方改革関連法案」という。)のうち、高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)の立法事実に疑義があるので、以下質問する。

一 高度プロフェッショナル制度を導入することにより労働生産性が上がるというデータはあるのか、政府の把握するところを明らかにされたい。

二 加藤厚生労働大臣は、「働く方の立場に立って働き方改革を推進していく」と答弁しているが、労働者に対して働き方に関する実態把握や調査を実際に行ったのか、また、把握した実態や調査結果に高度プロフェッショナル制度を導入する必要があることを示すものはあるか。

三 政府は、株式会社ビズリーチが二〇一七年九月に公表した高度プロフェッショナル制度に関するアンケート調査を同制度の立法事実としているのか。同アンケート調査はわずか八百六名を対象に調査したものであるため、これを同制度の立法事実とすることは、不適切ではないか。

四 前記三のアンケート調査では、高度プロフェッショナル制度を「労働時間ではなく成果に基づいて賃金を払う仕組み」と説明しているが、そのようなことは、労働政策審議会に諮問された働き方改革関連法案の要綱のどこにも書かれておらず、事実と異なるのではないか。

五 裁量労働制においても共通している問題点だが、高度プロフェッショナル制度は、「二倍の成果を上げたなら二倍の賃金が支払われる」といった成果に応じて賃金が支払われる仕組みではなく、いくら成果を上げても、支払賃金を一定にするという法的効果しかないのではないか。その結果、労働現場では、支払賃金に見合う成果以上の成果を求められることになるのではないか。

六 二〇一八年二月二日の衆議院予算委員会において、高度プロフェッショナル制度に関する立憲民主党の西村智奈美委員からの「労働者がこれで喜ぶ制度なのでしょうか、大変疑問です」との指摘に対し、加藤厚生労働大臣は、「あまり時間について言われない中で自分の力を存分に発揮していきたいという声を直接聞かせていただいた」と答弁しているが、いつ、どのような職種にある、何人くらいの人から話を聞いたのか。

七 高度プロフェッショナル制度を導入することにより労働生産性が上がるというデータがなく、また、労働者の働き方に関して把握した実態や調査結果に同制度を導入する必要があることを示すものがないのであれば、それはつまり、同制度には立法事実がないということにほかならないのではないか。

八 過労死に追い込まれるような人は、真面目で責任感が強い人、上司からの不条理な指示、命令を断りにくい人が多いと言われている。そうした方々があたかも自己責任で亡くなったかのようにされるような制度の導入ではなく、そうした方々が過労死に追い込まれないしくみを作るのが、厚生労働省の行うべき仕事なのではないか。

  右質問する。