質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第五九号

医師等医療従事者の働き方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年四月二日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   医師等医療従事者の働き方に関する質問主意書

 医師等医療従事者の医療機関における長時間労働が社会問題として顕在化している。こうした長時間労働による疲労が蓄積された状態で患者に提供される診療、調剤、看護、検査などの医療行為は、ヒューマンエラーを誘発し、重大な医療ミスにつながることが知られている。疲労が原因である医療におけるヒューマンエラーの発生について、患者の立場からも大いに懸念するところであるので、以下質問する。

一 厚生労働省に設置された「医師の働き方改革に関する検討会」が取りまとめた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」には、タスク・シフティングなどによる医師の負担軽減などが盛り込まれた。しかし、同取りまとめに掲げられた取組は、被用者である医師の健康を守るための環境改善という観点のみが強調され、ヒューマンエラーを誘発する長時間労働を是正するという観点が欠如しているのではないか。

二 ヒューマンエラーの原因となる医療従事者の「疲労」を管理する観点を医療従事者の労働時間短縮に向けた取組に取り入れていくことについて政府の見解を明らかにされたい。

三 「疲労はミスを誘発する」といわれており、悲惨な事故を経験している航空業界にあっては、疲労を管理し、疲労状態で業務に従事することによるヒューマンエラーを未然に防ぐ努力がなされていると聞く。これに比して医療機関においては、医療従事者本人の主観的な判断に疲労管理を委ねているのが現状であると承知している。患者をヒューマンエラーが原因である医療事故から守るという観点からいえば、医療を提供している医療機関の設置者や管理者が、自身の提供する医療の質について責任をもつべきであると考える。医療機関の設置者や管理者には、雇用している医療従事者の勤務時間管理や疲労管理を厳格に義務付けるべきであり、医療法などを改正し医療機関の設置要件に「医療従事者の勤務時間管理や疲労管理」を加えるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 目の前にいる患者のために努力を惜しまない医療従事者の在り方は決して責められるべきものではないが、疲労を我慢して努力をした結果として、患者を危険にさらしてしまうようなことがあるとすれば、それは患者のみならず医療従事者にとっても悲劇でしかない。政府は、航空業界においては、運航乗務員の疲労管理に向けた対策を進めつつあり、医療機関においても、患者本位の観点から医療従事者の疲労対策を議論するべき段階にあるのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 医療機関における医療従事者の長時間労働の背景には、長時間労働とならないよう十分な数の医療従事者を雇用すると人件費が嵩み、金銭的な負担が大きくなり過ぎるがゆえに、残業代を支払ってでも少数精鋭の医療従事者で診療していくしかないという医療機関の厳しい経営事情があると聞く。経済・経営的な理由で医療従事者を雇用できないというような医療機関があるとするならば、そうした経営環境は是正されなければならない。昨今の診療報酬改定は、プラス改定と吹聴はしているものの、実質的にはほとんど増えていないような小数点レベルのプラス改定である。プラス改定の中身については、当然にメリハリが必要であるが、医療機関が医療従事者を雇用するために十分なプラス改定を行う必要があるのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。