質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第五二号

六ヶ所再処理工場の高レベル廃液の早期安定化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年三月二十九日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   六ヶ所再処理工場の高レベル廃液の早期安定化に関する質問主意書

 日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場(以下「六ヶ所再処理工場」という。)のガラス固化の進捗状況について質問する。

一 二〇〇六年のアクティブ試験開始から現在までに処理した高レベル廃液の量、発生したガラス固化体の本数、まだ処理していない高レベル廃液の量をそれぞれ明らかにされたい。また、ガラス固化した高レベル廃液中のセシウム137、ストロンチウム90の放射能量(ベクレル数)を明らかにされたい。さらに、まだ処理していない高レベル廃液をガラス固化した場合、ガラス固化体は何本発生する見込みか明らかにされたい。

二 「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」に基づく我が国からIAEAへの報告書「National Report of Japan for the Fifth Review Meeting October, 2014」百十頁において、六ヶ所再処理工場が貯蔵する高レベル廃液の量はゼロとされており、二〇一八年にIAEAに提出する報告書の案でも同様にゼロとされている。なぜこれらの報告書では、六ヶ所再処理工場が貯蔵する高レベル廃液の量を実際とは異なりゼロとしているのか、その理由を明らかにされたい。

三 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、二〇一三年七月一日に原子力規制委員会に提出した「「再処理施設に関するこれまでの検討チームにおける議論に対する意見」(東海再処理施設)」において「既に多くの高放射性廃液や、Pu溶液を保有しており(中略)可能な限り早期にこれらの溶液を固化し、安定化を図ることで、施設の潜在的なハザードを低減し施設の安全性を高めることが重要であると認識している。」とし、二〇一六年一月から高レベル廃液のガラス固化を開始している。
 一方、六ヶ所再処理工場の審査に関わると思われる「使用済燃料再処理施設に関する審査業務の流れについて」(平成二十九年六月三十日原子力規制部)には、「施設のリスクを低減させるための活動については(中略)実施の可否を個別に判断する」とある。「施設のリスクを低減させるための活動」の一つである六ヶ所再処理工場における高レベル廃液のガラス固化について実施の可否の判断はすでに行われたのか明らかにされたい。行われていないのならばその理由を明らかにされたい。

四 六ヶ所再処理工場については核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査(以下「新規制基準審査」という。)が三年間延期されているが、延期されている間、極めて危険な高レベル廃液をそのままの状態で保有するのではなく、前記三の判断を迅速に行って、東海再処理工場のように早期に高レベル廃液のガラス固化を進めるべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

五 二〇一三年に終了したガラス固化溶融炉の試験運転の報告書について、先に私が提出した「六ヶ所再処理工場の高レベル廃液とそのガラス固化に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第八七号)に対する答弁(内閣参質一九三第八七号)の三及び四についてでは、「政府としては、新規制基準に係る適合性審査を優先して行うことが必要であると判断し、日本原燃から提出された「再処理施設アクティブ試験におけるガラス固化試験結果等に係る報告について」は、その内容の確認を行っていない。」とされた。新規制基準審査が延期される三年の間に当該報告書の審査評価を行い、六ヶ所再処理工場において技術的な問題を起こさずに高レベル廃液のガラス固化を行うことが本当にできるのか確認しておく必要があるのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

六 ガラス固化のためのA溶融炉は、天井レンガが剥離するなどかなり傷んでいるとの情報があるが、政府として日本原燃に問い合わせ、当該情報の真偽を把握し、これを明らかにする必要があるのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

七 六ヶ所再処理工場における高レベル廃液が極めて高い危険性を有することに鑑みると、ガラス固化体の製造に当たっては、LFCM法(ジュール加熱方式)は止めて、英仏で行われているAVM法(ロータリーキルン・高周波誘導加熱方式)を導入し、高レベル廃液を早期に固化しリスクを低減させるべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

八 平成二十八年八月三日に開催された平成二十八年度第二十六回原子力規制委員会での配布資料に「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所東海再処理施設における高放射性廃液のリスク低減策の検討について(指示)」があるが、これと同趣旨の指示を原子力規制委員会から日本原燃に行い、高レベル廃液のリスクを低減させるための実効性のある計画を策定させることにより、安心・安全を国民に提供すべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の事故では、電源が喪失してから二十四時間後に水素爆発が発生した。六ヶ所再処理工場は電源が喪失すると約七時間で水素爆発濃度に達する高レベル廃液貯槽があり、しかもこれが貯蔵する高レベル廃液の中には福島第一原発事故で大気へ放出された量の約三十五倍のセシウム137が含まれている。高レベル廃液という危険極まりないものをこの世に出現させ、不安定なまま貯蔵し国民へ潜在的脅威を与え続けていいと考えているのか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。