質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第四八号

奨学金返還者の負担軽減に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年三月二十日

藤末 健三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   奨学金返還者の負担軽減に関する質問主意書

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金については、返還困難者への救済措置として、毎月の返還額を減額する減額返還制度が平成二十三年一月から導入され、平成二十六年四月からは、一定期間返還期限を猶予する返還期限猶予制度の適用年数の五年から十年への延長、減額返還制度及び返還期限猶予制度の適用基準の緩和などの措置が導入された。また、平成二十九年四月からは、無利子奨学金について、返還の負担を軽減するため、所得に応じて毎年の返還額が決まる新たな所得連動返還方式が導入されている。
 しかしながら、奨学金の延滞者数は増加しており、平成二十八年度の延滞者数は有利子奨学金と無利子奨学金とを合わせて三十三万五千人に上る。また、奨学金の返還が困難となったために自己破産した件数は、過去五年間で延べ約一万五千件にも及ぶ旨の報道がなされている。その中には、大学卒業後、想定していた収入が得られず、奨学金の返還負担の重さからやむなく自己破産をした結果、家族や親戚などの保証人に奨学金の返還請求がなされ、保証人も連鎖的に自己破産に追い込まれるケースも出ている。こういった深刻な状況が社会問題化するような現状を放置することは許されず、このような状況が続けば、奨学金制度そのものへの信頼が揺らぎかねない。政府及び機構は、奨学金の返還困難者への救済措置を一層充実させるとともに、返還者の負担を軽減すべきであるとの観点から、以下質問する。

一 奨学金の返還負担の重さを理由とする自己破産や自殺の現状について、政府及び機構が把握しているところを明らかにされたい。また、この現状をどのように受け止めているのか政府の認識を示されたい。

二 機構が行った「平成二十七年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」によれば、平成二十七年度において、延滞者のうち返還期限猶予制度を知らない者は三割を超え、減額返還制度を知らない者は約半数おり、奨学金の返還負担を軽減する救済制度の周知が徹底されているとは到底言えない状況である。政府及び機構は、このような救済制度の周知に一層力を注ぐべきだと考えるが、具体的にどのような取り組みを行っているか。また、延滞者における救済制度の認知率をより向上させるための方策について、今後の方針を明確に示されたい。

三 前記二の調査によれば、平成二十七年度において、延滞者の約八割が年収三百万円未満である。また、延滞が継続している理由の第一位は「本人の低所得」であり、約七割となっている。このため、平成二十九年四月から導入された所得連動返還方式は、何らかの理由で卒業後の所得が低迷し続けても、返還の負担が抑えられ、学生の将来の所得に対する不安を和らげる効果がある。一方で、将来も年収が低いままの場合、月々の返還負担は軽減されるが、返還しなければならない債務総額自体は変わらないため、返還期間が大幅に長くなってしまうという課題も指摘されている。そこで、同方式については、諸外国のように最長返還期間を定め、これを超えたら債務残高が全額免除される仕組みとすることが望ましいが、政府の見解を示されたい。さらに、既に返還を開始した者にも同方式を適用したり、無利子奨学金のみならず有利子奨学金も対象にしたりするなど、同方式の適用対象の拡充について検討すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 奨学金の返還により生活が困窮することがないよう、その負担を軽減する観点からは、「住宅ローン減税」のように、奨学金の借入残高に応じてその一定割合を税額控除する制度を導入することも考えられるが、当該制度の導入に当たり想定される課題も含め、政府の見解を示されたい。

  右質問する。