質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

介護報酬の書面請求の廃止が訪問診療に及ぼす影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年一月二十四日

田村 智子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   介護報酬の書面請求の廃止が訪問診療に及ぼす影響に関する質問主意書

 居宅療養管理指導など支給限度額管理が不要なサービスを一種類のみ行う事業所等、一定の要件を満たす事業所は、現在、書面での介護報酬の請求(以下「書面請求」という。)が認められている。ところが、二〇一八年四月以降は新規の書面請求を認めないとされている。
 全国保険医団体連合会が各都道府県の国民健康保険団体連合会に対して行った調査によれば二十三都道府県で医科医療機関九千八百七事業所のうち三千五百九十三件(三十六・六%)、歯科医療機関四千七百九十九事業所のうち二千七百七十四件(五十七・八%)(二〇一七年十月審査分)が書面請求を行っている。
 これは、訪問診療にともなう居宅療養管理指導等における電子情報処理組織または磁気テープ等による介護報酬の請求(以下「電子請求」という。)には多額の費用と手間が必要で、居宅療養管理指導の算定が月一件から数件程度である多数の医療機関にとっては、書面請求の方が費用の面でも手間の面でも容易となるからである。国民健康保険中央会が電子請求を行うための無料ソフトを用意しているが、ソフトを動かすためのコンピュータや運用費用は無料ではなく、得られる収入とコストとを比較して考えると、電子請求は現実的ではない。また、将来にわたって国民健康保険中央会から無料ソフトが提供され続けるとは限らない。新規の書面請求を認めなければ介護報酬の請求をあきらめる医療機関が出てくることも予想され、結果的に要介護者への訪問診療等在宅医療の提供を阻害することになりかねない。加えて、三月中に電子請求の免除申請を行わなければ現に書面請求を行っている事業所であっても四月以降の書面請求は認めないこととされているが、そのことが十分知られていないため、混乱が広がることも懸念される。
 また、厚生労働省はケアマネジャーと医師、歯科医師の連携を進める方針であり、その連携を財政面から支えるのが居宅療養管理指導である。居宅療養管理指導に電子請求を強いてさらなる負担を求めることは、厚生労働省のこの方針とも矛盾する。
 厚生労働省は新規の書面請求を認めない理由を「審査上の多大な労力となる」ためと説明しているが、現に書面請求が認められている事業所は二〇一八年四月以降も継続が認められるのであり、大きな負担となるとも思えない。
 新規の書面請求を認めない政府の方針は、訪問診療を行う医療機関への影響が大きく、再検討が必要と考える。
 この立場から以下、質問する。

一 書面請求の状況について政府が把握するところを、医科医療機関、歯科医療機関、保険薬局ごとに明らかにされたい。書面請求の状況を把握していないのであれば、その理由を示されたい。また、書面請求の状況を把握していない場合、新規の書面請求を認めないという政府の方針を検討する際に、当該状況を把握すべきであったと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 前記全国保険医団体連合会調査による書面請求の現状は、介護報酬の請求件数が少ない医療機関には電子請求の負担が大きく、書面請求のニーズが強いことをうかがわせる。新規の書面請求を認めないことは、要介護者に対する訪問診療に新規で取り組もうとする医療機関にこれまでにない新たな負担を負わせることになり、ひいては訪問診療等在宅医療の普及を妨げる要因になるのではないか。医療機関などの書面請求の実態を把握し、必要な新規の書面請求を認めないという方針の再検討を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。