質問主意書

第195回国会(特別会)

答弁書


答弁書第四〇号

内閣参質一九五第四〇号
  平成二十九年十二月十九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員吉川沙織君提出三十五歳から四十歳代の就職氷河期世代の生活実態に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉川沙織君提出三十五歳から四十歳代の就職氷河期世代の生活実態に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十九年版厚生労働白書では、二千年代以降の三十歳代及び四十歳代の男性一般労働者の所定内給与額の減少については「バブル崩壊後の採用抑制と賃金制度の見直しによる影響の可能性」が考えられる旨を、世帯主が三十歳代及び四十歳代の世帯における世帯総所得三百万円未満の世帯割合の増加については「三世代世帯割合の減少」、「単独世帯割合の増加」等による旨をそれぞれ記述している。なお、御指摘の「住宅保有率は減少傾向にあるにもかかわらず、金融資産額が大きく減少している」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世帯主が四十歳代以下の二人以上世帯における金融資産額の減少については、平成二十九年版厚生労働白書では、「住宅・土地購入による負債が増加した」ことによる旨を記述している。

二について

 御指摘の「資料」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、御指摘の「男性一般労働者の所定内給与の賃金カーブは、年齢階級、勤続年数階級いずれにおいてもここ二十年間で上昇が緩やかになり、賃金が上がりにくい状況」については、バブル崩壊後の賃金制度の見直しにより、年功的な賃金カーブが抑制された影響が現在まで続いていることが可能性のある要因の一つとして考えられ、また、御指摘の「大学・大学院卒の労働者に占める課長の比率は、三十歳代後半が十三・四%から七・二%へ、四十歳代前半が三十二・三%から十七・八%へと大きく低下し、ピークが四十歳代後半にずれている」ことについては、男性の就業者のうち四十歳以上のものの割合が増加していることが可能性のある要因の一つとして考えられる。

三及び八について

 お尋ねについては、様々な要因が考えられることから、一概にお答えすることは困難であるが、いわゆる就職氷河期に学校を卒業し就職の時期を迎えたと考えられる者のうち、雇用環境等により安定した就職に至らなかったものが、就労に困難を抱えたまま加齢したことが、可能性のある要因の一つとして考えられる。

四から六までについて

 お尋ねについては、様々な要因が考えられることから、一概にお答えすることは困難である。

七について

 お尋ねについては、様々な要因が考えられることから、一概にお答えすることは困難であるが、いわゆる就職氷河期に就職活動を余儀なくされて非正規雇用労働者となった者の多くが、現在においても、非正規雇用労働者であることが、可能性のある要因の一つとして考えられる。

九について

 御指摘の「親と同居の未婚者の最近の状況(二○一六年)」において、平成二十八年の「親と同居の壮年未婚者(三十五歳から四十四歳)」の完全失業率が八パーセントを超えていること及び当該「壮年未婚者」のうち「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」が平成二十八年において五十二万人いることが指摘されていることは承知しており、こうした「壮年未婚者」のうちの「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」のニーズに応じた安定した雇用の確保が重要であると認識している。このため、政府としては、当該者が安定した職業に就くことができるよう、「わかものハローワーク」等を設置し、就職支援ナビゲーターによるきめ細かな職業相談・職業紹介等を実施しており、今後とも、こうした施策に取り組んでまいりたい。

十について

 御指摘の「自治体等による各種調査」の結果において四十歳代以上の「ひきこもり」の状態にある者の存在が指摘されていることは承知しており、こうした者については、必要な支援を受けられるようにしていくことが重要であると認識している。このため、都道府県等に設置された専門相談窓口である「ひきこもり地域支援センター」での相談支援等を通じた支援を行ってまいりたい。

十一について

 お尋ねの「満四十歳以上も対象としたひきこもりに関する実態調査」の意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣府においては、平成三十年度概算要求において、満四十歳以上の者を対象とした「ひきこもり」に関する調査を実施するための費用を計上しているところである。

十二について

 一部の都道府県において、「ひきこもり地域支援センター」の相談支援対象者をおおむね四十歳までとしているが、その場合であっても、四十歳以上の者から相談があった際には、適切な対応を講じているものと承知している。
 また、「ひきこもり」の状態にある者やその家族が利用できる相談支援機関としては、「ひきこもり地域支援センター」のほか、生活困窮者自立支援制度による相談支援窓口等があり、関係機関が連携して対応していく必要があると考えている。

十三について

 御指摘の報告書によれば、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関における新規相談者の特性として、年齢の区分にかかわらず、「経済的困窮」、「就職活動困難」、「病気」、「家族関係・家族の問題」、「住まい不安定」等といった多岐にわたる課題を複数抱えている状況にあることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

十四について

 お尋ねの「わかものハローワーク」等については、一労働局を除き、おおむね四十五歳未満の者を対象としており、当該対象年齢については周知を図っているところである。また、お尋ねの「三十五歳以上の職業紹介、正職員化」については、いわゆる就職氷河期世代を含むフリーター等に対する正規雇用化に向けた就職支援の必要性が特に高い地域において「わかものハローワーク」等を設置しているほか、これ以外の地域でもハローワークにおいて利用者のニーズを踏まえた就職支援を行っており、こうした現行の窓口を活用し、対応してまいりたい。

十五について

 お尋ねの地域若者サポートステーション(以下「サポステ」という。)の対象年齢の引上げについて、厚生労働省としては、平成三十年度概算要求において、いわゆる就職氷河期世代に該当する四十歳代前半の無業者を対象に、これまでのサポステ事業のノウハウを活用した就職支援を十か所のサポステでモデル的に実施し、御指摘の「四十歳代前半の無業者の実態」の把握や、御指摘の「これらの者に対するサポステにおける職業的自立に向けた支援方法の有効性等」についての検証を行うための費用を計上しているところである。

十六について

 政府としては、「人づくり革命」を断行し、我が国の社会保障制度を子供・若者から高齢者まで誰もが安心できる「全世代型の社会保障」へ大きく転換していくこととしている。このため、「新しい経済政策パッケージ」(平成二十九年十二月八日閣議決定)では、お尋ねの「三十歳代後半及び四十歳代の世代への支援」にも資するものとして、幼児教育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化等を盛り込んだところであり、当該パッケージに基づきこうした施策を講じていく。
 また、お尋ねの「政府等が実施する子育て世代に対する支援のような恩恵を受けることができない、子どものいない非正規雇用労働者や無業の者に対する支援」については、「働き方改革実行計画」(平成二十九年三月二十八日働き方改革実現会議決定)等に基づき、三十五歳を超えて離転職を繰り返すフリーター等に対し、同一労働同一賃金制度の施行を通じて処遇改善を図るとともに、個々の対象者の職務経歴、職業能力等に応じた集中的な就職支援等による正社員化に取り組んでまいりたい。