質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第四〇号

三十五歳から四十歳代の就職氷河期世代の生活実態に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十二月八日

吉川 沙織   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   三十五歳から四十歳代の就職氷河期世代の生活実態に関する質問主意書

 いわゆる就職氷河期世代は、一般に働き盛り、子育て世代と言われる三十五歳から四十歳代にさしかかり、現役世代の中軸として社会を支え、牽引する役割が期待されている。しかし、バブル崩壊後の社会経済情勢の影響等により、就職氷河期世代における様々なひずみが顕在化している。
 こうした観点から、以下、質問する。

一 「平成二十九年版厚生労働白書」(厚生労働省)によれば、三十五歳から四十四歳の男性一般労働者の所定内給与は減少傾向にあり、他の年齢層と比してここ十年間の減少傾向が強い。また、世帯主が三十歳代及び四十歳代の世帯では、ここ二十年間で世帯総所得三百万円未満の低所得世帯割合が増加し、所得分布が全体的に低い方へシフトしている。さらに、世帯主が四十歳代の世帯(二人以上世帯)では、ここ二十年間で住宅保有率は減少傾向にあるにもかかわらず、金融資産額が大きく減少している。これらの原因についてどう考えるか。

二 独立行政法人労働政策研究・研修機構が「平成二十八年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)を元に作成した資料によれば、男性一般労働者の所定内給与の賃金カーブは、年齢階級、勤続年数階級いずれにおいてもここ二十年間で上昇が緩やかになり、賃金が上がりにくい状況にある。特に、四十歳代、勤続二十年から二十九年の層で一九九五年調査とのかい離が大きい。また、一九九〇年と比較した二〇一五年の大学・大学院卒の労働者に占める課長の比率は、三十歳代後半が十三・四%から七・二%へ、四十歳代前半が三十二・三%から十七・八%へと大きく低下し、ピークが四十歳代後半にずれている。これらの原因についてどう考えるか。

三 「平成二十九年版労働経済の分析」(厚生労働省)によれば、三十五歳から四十四歳の男性の就業率は平成五年以降低下傾向で推移しており、平成二十八年はリーマン・ショック前の平成十九年と比較して〇・七%のマイナスと、各年齢層の中で最も減少幅が大きくなっている。この原因についてどう考えるか。

四 「平成二十八年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)で平成二十四年と平成二十八年を比べると、短時間労働者の一時間当たり賃金は全体として上昇傾向にある中で、三十五歳から四十四歳の男性短時間労働者の一時間当たり賃金は、減少している。この原因についてどう考えるか。

五 「平成二十八年度過労死等の労災補償状況」(厚生労働省)によれば、脳・心臓疾患の労災補償を年齢層別に見ると、四十歳代の請求件数は対前年度四十一件増の二百三十九件と、他の年齢層の件数の推移と比して急増している。また、精神障害の労災補償を年齢別に見ると、四十歳代は請求件数五百四十二件(全年齢層の三十四・二%)、支給決定件数百四十四件(全年齢層の二十八・九%)といずれも最も多くなっている。これらの原因についてどう考えるか。

六 「平成二十八年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等のために講じた施策の状況」(厚生労働省)によれば、月末一週間の就業時間が六十時間以上の就業者の割合は、三十歳代、四十歳代の男性で高いが、平成二十七年以降は両者の割合が逆転し、四十歳代の男性が最も高くなっている。この原因についてどう考えるか。

七 「労働力調査(詳細集計、平成二十八年平均)」(総務省)によれば、三十五歳から四十四歳及び四十五歳から五十四歳の非正規職員・従業員である男性が非正規雇用労働者である理由として正規の職員・従業員の仕事がないことを挙げた割合は約四割であり、他の年齢層と比べても「不本意非正規」の割合が高い。この原因についてどう考えるか。

八 「労働力調査」(総務省)によれば、非労働力人口のうち家事も通学もしていない無業者の数は、三十四歳以下の若年層では平成十四年に急増して以降ほぼ横ばいで推移しているが、三十歳代後半では平成二十年まで増加傾向にあり以降は横ばいが続き、四十歳代では平成二十年代前半においてもなお増加傾向が続いた。この原因についてどう考えるか。

九 「親と同居の未婚者の最近の状況(二〇一六年)」(総務省統計研修所)によれば、二〇一六年における親と同居の壮年未婚者(三十五歳から四十四歳)は二百八十八万人であり、その完全失業率は八%を超え、高い水準で推移している。さらに、このうち基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者(完全失業者、無就業・無就学者及び臨時雇・日雇者)は五十二万人もいるとされている。こうした状況をどう認識し、どのような対策を講じていく考えか。

十 「長期高年齢化したひきこもり者とその家族への効果的な支援及び長期高年齢化に至るプロセス調査・研究事業報告書」(KHJ全国ひきこもり家族会連合会・厚生労働省平成二十八年度社会福祉推進事業)によれば、ひきこもりが高齢・長期化し、四十歳以上のひきこもりが多数存在することが自治体等による各種調査で明らかになったとされている。こうした実態をどう認識し、どのような対策を講じていく考えか。

十一 「若者の生活に関する調査報告書(平成二十八年九月)」(内閣府)におけるひきこもりに関する実態調査の対象は満十五歳から満三十九歳までに限定され、満四十歳以上は調査の対象からはずされている。満四十歳以上も対象としたひきこもりに関する実態調査を早急に行うべきではないか。

十二 ひきこもりに特化した専門相談窓口であるひきこもり地域支援センターについて、センターによっては相談の対象者をおおむね四十歳までに限定しているところがあるとの指摘があるが、こうした実態をどう把握、認識しているか。また、前記十の報告書では、「本人や家族が自立相談支援の窓口の利用以前に利用した相談機関や窓口」としてひきこもり地域支援センターを挙げたのは、全年齢で九・九%、四十歳代以上ではわずか二・〇%に過ぎず、「実際の相談ケースに関して、連携を行った相談機関や窓口」としてひきこもり地域支援センターを挙げたのも全年齢で六・六%、四十歳代以上では二・六%と極めて低調である。これについてどう認識しているか。

十三 「生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関における支援実績の分析による支援手法向上に向けた調査研究事業報告書」(みずほ情報総研・厚生労働省平成二十八年度社会福祉推進事業)によれば、平成二十七年四月から平成二十八年十二月の新規相談者のうち四十歳代が全体の二割を占め、他の年齢層の中で最も多い。この原因についてどう考えるか。

十四 就職氷河期世代の実態把握と雇用対策に関する質問(第百九十回国会質問第一四七号)に対する答弁書(内閣参質一九〇第一四七号。以下「答弁書」という。)では、四十歳代前半の者も支援の対象として「わかものハローワーク」等を設置している旨答弁しているが、わかものハローワークが四十歳代前半層も対象としていることについての周知はほとんど進んでおらず、また、地域によっては対象年齢を三十四歳以下等に限定しているところがある。こうした実態をどう認識しているか。三十五歳以上の職業紹介、正職員化に特化した窓口を設置する必要があるのではないか。

十五 答弁書では、地域若者サポートステーション(サポステ)の対象年齢を四十歳代前半まで引き上げることについて、①四十歳代前半の無業者の実態や、②これらの者に対するサポステにおける職業的自立に向けた支援方法の有効性等を踏まえつつ、検討してまいりたいと答弁しているが、検討状況如何。また、①及び②についてどう認識しているか。

十六 政府は、我が国の社会保障制度を全世代型に改革し、「人づくり革命」を行うとしているが、その観点から、三十歳代後半及び四十歳代の世代への支援をどう講じていく考えか。中でも、同世代でありながら、政府等が実施する子育て世代に対する支援のような恩恵を受けることができない、子どものいない非正規雇用労働者や無業の者に対する支援方策を問う。

  右質問する。