質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第二九号

障害者虐待防止法の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十二月五日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   障害者虐待防止法の見直しに関する質問主意書

一 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(以下「障害者虐待防止法」という。)附則第二条に規定する各施設における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方等の調査検討について、厚生労働省が自ら行うのではなく、民間団体である一般社団法人日本総合研究所に事業を委託した理由を明らかにされたい。

二 「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」など厚生労働省に設置された研究会等と比べて、前記一の事業を実施するため日本総合研究所に設けられた、日本女子大学の小山聡子教授を委員長とした検討委員会(以下「本事業検討委員会」という。)は、傍聴ができず、議事録が公開されないなど、極めて検討過程の透明性が低い。本事業検討委員会は「審議会等会合の公開に関する指針」の対象となる会合ではないが、これに準じた取扱いを行わない理由を明らかにされたい。

三 本事業検討委員会に対してヒアリングを受けたいとの要望を申し出た団体数と実際に同委員会がヒアリングを実施した団体数及びヒアリングの対象団体を決めた際の選定基準を明らかにされたい。また、ヒアリングの対象団体の選定には厚生労働省が関与したものと推測されるが、どのような関与を行ったのか、明らかにされたい。

四 本事業検討委員会が二〇一七年十月二十三日に障害者団体を対象としたヒアリングを開催した際、日本身体障害者団体連合会をヒアリングの対象としなかった理由を明らかにされたい。今回、日本身体障害者団体連合会はDPI日本会議や全国「精神病」者集団などと日本障害フォーラムとしてひとまとめにされ、しかも同フォーラムとして二名までしかヒアリングへの出席が許されなかったが、このような取扱いは、広範な当事者から意見を聞く機会として適当ではなかったのではないか。

五 一方で、前記四のヒアリングでは「日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構」という二年前に設立されたばかりの一般社団法人をヒアリングの対象としているが、その経緯と理由を明らかにされたい。

六 二〇一五年、さいたま市の障害者就労支援施設「キャップの貯金箱」の職員が同施設における障害者虐待を障害者虐待防止法第十六条第一項の規定に基づきさいたま市に通報したところ、当該職員が同施設側から名誉毀損で訴えられた、という事件を踏まえると、同条第三項以降の規定では障害者虐待の通報者の保護について実効性が確保されていないと言わざるをえないのではないか。障害者虐待の通報者の保護を強化する方向で、同条を改正することを検討するべきではないか。

七 障害者虐待防止法の通報義務の対象とされていない者からの通報、具体的には精神科病院等の職員からの通報が市町村にあった場合についても当該通報者が通報をしたことを理由とした不利益を受けず、匿名性が守られるための明文の規定を同法に設ける必要があるのではないか。

八 障害者虐待防止法の通報義務の対象とされていない医療機関、教育機関及び官公庁において発生した障害者虐待の件数及び内容を政府として把握する必要はないと考えているのか。

九 精神科病院における障害者虐待は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の処遇改善請求で対応可能とされてきたが、処遇改善請求は、障害者虐待防止法の通報義務と比較して、虐待死した場合には請求できない点、精神障害者本人及び家族等やその代理人など決められた人だけしか請求できない点、処遇改善請求は義務ではなく任意にとどまる点で、極めて不十分ではないか。精神科病院については、障害者虐待防止法の通報義務ではなく、精神保健福祉法の処遇改善請求ですべて対応できると政府が考える根拠を明らかにされたい。

十 精神科病院における障害者虐待について、任意の処遇改善請求、任意の通報ではなく、精神科病院を障害者虐待防止法の通報義務の対象にすることで、多くの情報が集まるようになり、虐待による死亡と疑われる事案の真相の解明に寄与できると考えるがどうか。

十一 二〇一七年十一月二十四日付で国連自由権規約委員会は、日本政府に対して障害者虐待防止法の通報義務の範囲に精神科病院を含めるための法整備の進捗状況への回答を求めており、仮に精神科病院が通報義務の対象から再び漏れるようなことがあれば総括所見で勧告を受けることになるが、そのことをどのように考えているのか。

  右質問する。