質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第二五号

米軍ヘリ炎上事故についての日米間のやり取り及び日米合同委員会合意に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十二月四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   米軍ヘリ炎上事故についての日米間のやり取り及び日米合同委員会合意に関する質問主意書

 在日米軍普天間基地に配備されているヘリコプターCH53Eが、平成二十九年十月十一日に沖縄県東村高江地区の民間の牧草地に不時着して大破炎上した事故(以下「当該米軍ヘリ炎上事故」という。)に関して提出した「沖縄・米軍ヘリ炎上事故現場における米軍の行為及び日本政府の対応と日米地位協定に関する質問主意書」(第百九十五回国会質問第六号。以下「前回質問主意書」という。)に対する答弁(内閣参質一九五第六号。以下「前回答弁書」という。)に疑義があるため、安倍内閣の認識を改めて確認すべく、当該米軍ヘリ炎上事故についての日米間のやり取り及び日米合同委員会合意等に関して、以下質問する。

一 前回答弁書の六から十までについてで、「米側とのやり取りの詳細について明らかにすることは、米側との関係もあり、差し控えたい。」との答弁があった。当該答弁は極めて不誠実かつ、そもそもこの答弁の文言そのものの意味するところが全く明らかではないため、以下について明確かつ丁寧に説明されたい。その際、答弁は以下の項目ごと必ず個別に行い、複数の項目を一つにまとめて済ませることのないよう厳に求める。

1 前回答弁書の六から十までについてにおける「米側とのやり取り」とは、日米間の意見の交換や協議(以下「日米間協議」という。)のうち、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二十五条1に基づいて設置された日米合同委員会(以下「日米合同委員会」という。)における日米間協議を指すとの理解でよいか。
2 前記一の1に関して、当該答弁における「米側とのやり取り」が日米合同委員会における日米間協議を指すものであるとする場合、日米合同委員会における日米間協議以外にも「米側とのやり取り」に該当する日米間協議が存在するのか。
3 前記一の2に関して、日米合同委員会における日米間協議の他に「米側とのやり取り」に該当する日米間協議が存在する場合、それは如何なる「米側とのやり取り」か、該当する日米間協議について、日時、場所及び日米双方の出席者氏名と併せて網羅的に明確かつ詳細に示されたい。
4 当該答弁における「詳細について明らかにすること」とは、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十四条により提出された質問主意書に対して安倍内閣が同法第七十五条により閣議決定して提出した答弁書において「詳細について明らかにすること」という意味であるとの理解でよいか。
5 当該答弁における「米側との関係もあり」の「関係」とは如何なる関係のことか、具体的に示されたい。
6 当該答弁では「米側との関係もあり、差し控えたい。」としているが、「関係も」としたのは、「米側との関係」の他にも「米側とのやり取りの詳細について明らかにすること」を「差し控え」る理由が存在するとの理解でよいか。
7 前記一の1から6を踏まえて、「米側とのやり取りの詳細について明らかにすること」を「差し控え」る理由を網羅的に具体的かつ丁寧に説明されたい。

二 前記一の1及び2に関して、当該米軍ヘリ炎上事故について日米合同委員会において我が国政府が「米側とのやり取り」をした事実は存在するか、明確に示されたい。加えて、当該事実が存在する場合、その日時、場所及び日米双方の出席者氏名を明確に示されたい。

三 前記二に関して、当該事実が存在する場合、当該日米合同委員会における日米間協議の内容を記した議事録の公表を、国会議員のみならず如何なる日本国民が求めた場合であっても、「米側とのやり取りの詳細について明らかにすることは、米側との関係もあり、差し控えたい。」としてその公表に応じることはない、との認識を安倍内閣として有しているか。

四 日本国憲法第六十二条は「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と、いわゆる国政調査権を議院の権能として認めている。両議院あるいは何れかの議院によって、当該米軍ヘリ炎上事故の詳細及び当該事故に係る「米側とのやり取りの詳細」に関して「証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求」された場合であっても、前回答弁書の一及び二について及び六から十までについてでの答弁と同様に、政府として「詳細についてお答えすること」及び「米側とのやり取りの詳細について明らかにすること」を「差し控え」るとするのか、安倍内閣の認識を法的根拠とともに明確に示されたい。

五 日米合同委員会における日米間協議の内容を記した議事録(以下「日米合同委員会議事録」という。)の公表に関して、「日米両政府の合意がない限り公表されない」とする旨の合意(以下「日米合同委員会議事録非開示合意」という。)は日米間に存在するか、明確に示されたい。また日米合同委員会議事録非開示合意が日米間に存在しないとする場合、日米合同委員会議事録を公表できない理由は、「米側との関係」においては存在しないとの理解でよいか、安倍内閣の認識を明確に示されたい。

六 前記五に関して、日米合同委員会議事録非開示合意が存在する場合、それは、いつ、どこで、如何なる者たちによって、また如何なる法的根拠に基づく手続きに則って締結されたのか、安倍内閣として把握している事実を網羅的に明確かつ詳細に示されたい。

七 前記六に関して、日米合同委員会議事録非開示合意を明確に記した文書は存在するのか、加えて、当該文書が存在する場合、当該文書の開示を国会議員あるいは国会議員以外の日本国民が求めた場合、我が国政府として当該文書の開示に応じるか、安倍内閣の認識を明確に示されたい。

八 前記七に関して、当該文書が存在し、かつ我が国政府が国会議員あるいは国会議員以外の日本国民による当該文書の開示の要求に応じないとする場合、それは如何なる法的根拠に基づくものか、具体的かつ明確に示されたい。

九 日米合同委員会における日米間での合意(以下「日米合同委員会合意」という。)は、日本国憲法第七十三条第三号により国会の承認を必要とする国際約束と、同条第二号にいう外交関係の処理の一環として行政府限りで結び得る国際約束の何れに該当するか、安倍内閣の認識をその理由とともに明確に説明されたい。

十 前回答弁書の三から五までについてで、日米地位協定についての合意された議事録(以下「合意議事録」という。)は、「締結について国会の承認を得た日米地位協定の実施細目等を定めるものとして、内閣の権限の範囲内で締結した国際約束であり、締結について国会の承認を得る必要があったとは考えていない。」との答弁があったが、日米合同委員会合意の締結について、「国会の承認を得た日米地位協定の実施細目等を定めるものとして、内閣の権限の範囲内で締結した国際約束」であり、国会の承認を得る必要はないとの認識を安倍内閣として有しているのか、明確に示されたい。

十一 第二次安倍内閣発足以降、日米合同委員会に内閣総理大臣を始めとした国務大臣が出席して米側委員と直接意見の交換や協議を行ったことは合計何回あるか、日時、場所及び出席した国務大臣の氏名とともに網羅的に示されたい。

十二 日米合同委員会議事録は、過去のものも含めて全て、内閣総理大臣を始めとした全ての国務大臣に対して開示されているのか否か、明確に示されたい。

十三 内閣総理大臣を始めとした国務大臣は日米合同委員会の委員として米側委員と直接意見の交換や協議を行い、日米合同委員会において合意された事項及び議事録等は、全て内閣として国会に報告し、国会においてその正当性及び合理性等につき審議され評価されるべきであると考えるが、安倍内閣としての認識を明確に示されたい。

十四 前回答弁書の六から十までについてで、当該米軍ヘリ炎上事故現場での米軍による土壌の搬出に関して、「政府として、米軍と土地所有者との間のやり取りの詳細を承知しているわけではないが、米軍は、機体の残骸の回収及び汚染の拡散防止の観点から、あらかじめ土地所有者の同意を得たと認識した上で、事故現場の土壌の搬出を行ったものと承知している。」との答弁があった。この答弁に関して以下質問する。

1 当該米軍ヘリ炎上事故現場から米軍が搬出した土壌は、合意議事録の第十七条10(a)及び(b)に関する規定2において、日本国の当局が、通常、捜索、差押え又は検証を行う権利を行使しないこととされている米軍の財産に該当するのか、あるいは当該米軍ヘリが不時着した牧草地の所有者(以下「土地所有者」という。)の財産に該当するのか、安倍内閣の認識を明確に示されたい。加えて、前者であるとする場合、その根拠を明確に示されたい。また後者であるとする場合、米軍は、米軍の財産に該当しない我が国国民の財産を搬出したとの理解でよいか、明確に示されたい。
2 前回質問主意書の九で示した通り、土地所有者は、搬出する土壌の量についての米軍からの説明は事前になく、大量の土壌を搬出する米軍車両を見て驚いた旨の証言をしている。前回答弁書は「米軍は(中略)あらかじめ土地所有者の同意を得たと認識した上で、事故現場の土壌の搬出を行ったものと承知」としているが、当該答弁は土地所有者の証言とは明らかに食い違っている。安倍内閣として、米軍による土壌の搬出に係る米軍と土地所有者との間のやり取りの詳細に関して、今後改めて調査する意向はあるか、明確に示されたい。加えて、当該調査を改めて行う意向がないとする場合、その理由を明確に示されたい。

十五 日本国憲法第二十九条は「財産権は、これを侵してはならない。」として我が国国民の財産権を保障しているが、日米合同委員会の刑事裁判管轄権に関する合意事項二十(以下「当該合意事項」という。)は「合衆国軍用機が(中略)私有の財産に墜落又は不時着した場合には、(中略)当該財産に対し不必要な損害を与えないよう最善の努力が払われなければならない。」としており、我が国国民の私有財産に「損害を与えないよう」にとの努力義務を課してはいるものの、我が国国民の私有財産に「損害を与え」ることを明確に禁じてはいない。即ち当該合意事項は、日本国憲法が「侵してはならない」とする我が国国民の財産権に対して、一定の侵害を許容する憲法違反の国際約束であると言わざるを得ず、現行憲法下においてはその効力を有しないと考えるが、安倍内閣の認識を明確に示されたい。

十六 前記十五に関して、当該合意事項が現行憲法下においても、その効力を有するとの認識を安倍内閣として有している場合、日本国憲法第九十八条において「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定されている日本国憲法の最高法規性と齟齬を生じると言わざるを得ないが、安倍内閣の認識如何。

十七 前記十六に関して、当該合意事項が憲法違反の国際約束に該当するか否かについて、また当該合意事項が現行憲法下において効力を有しているとすることが日本国憲法の最高法規性と齟齬を生じるか否かについては、国家主権に関わる重要判断となるため、その判断は、一内閣のみに委ねられるべきではなく、内閣として国権の最高機関たる国会に諮り、国会において十分な審議を行った上で決定されるべきであると考えるが、安倍内閣の認識をその理由とともに明確に示されたい。

十八 日米合同委員会合意あるいは合意議事録の内容等が「国の最高法規」である日本国憲法の「条規に反する(中略)国務に関するその他の行為の全部又は一部」に該当する場合、「その効力を有しない」ことになる。即ち日本国憲法の最高法規性を踏まえれば、全ての日米合同委員会合意及び合意議事録の内容等に関して、日本国憲法の条規に反するものか否かの判断が行われるべきであるが、その判断は、国家主権に関わる重要判断となるため、一内閣のみに委ねられるべきではなく、内閣として国権の最高機関たる国会に諮り、国会において十分な審議を行った上で決定されるべきであると考えるが、安倍内閣の認識をその理由とともに明確に示されたい。

  右質問する。