質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二四号

内閣参質一九三第一二四号
  平成二十九年六月十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員石上俊雄君提出持続可能な社会保障制度の確立に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出持続可能な社会保障制度の確立に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の「拠出金負担の重い被用者保険者」への財政支援については、平成二十九年度において後期高齢者支援金等の拠出金負担の重い医療保険者に対する負担軽減措置を拡充するとともに、前期高齢者納付金の伸びが大きい医療保険者に対する高齢者医療運営円滑化等補助金を拡充することとしているが、平成三十年度以降における取組の詳細については、未定である。

一の2について

 御指摘については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成二十七年五月二十六日参議院厚生労働委員会)において「後期高齢者支援金の総報酬割の拡大に当たっては、被用者保険の保険財政への影響の評価及び検証を行う」とされており、政府としては、その趣旨を十分尊重し、被用者保険の保険財政への影響の評価及び検証を行うよう努力してまいりたい。

二について

 御指摘の「準備金」は、健康保険事業に要する費用の支出に備えるため、毎事業年度末において、当該事業年度及びその直前の二事業年度内において行った保険給付に要した費用の額等を勘案して算出される額に達するまで当該事業年度の剰余金の額を準備金として積み立てるものである。御指摘の「既存の健康保険組合に一定規模以上の被保険者が異動する場合、健康保険組合間での準備金の移管を可能とする」ことについては、準備金の在り方を含めて検討すべきものと考えている。

三について

 御指摘については、政府としては、保険者の財政に与える影響等を踏まえ、関係者の理解を得つつ必要な検討を行うことが重要であると考えており、今後、厚生労働省において、検討を行ってまいりたい。

四について

 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百五十条第一項に規定する介護給付費・地域支援事業支援納付金(以下「介護納付金」という。)については、高齢者を社会的に扶養するという意味を持つことを踏まえ、各医療保険者に係る介護保険の第二号被保険者の数に応じて負担する仕組みとされていたところ、被用者保険等保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第七条第三項に規定する被用者保険等保険者をいう。以下同じ。)における介護保険の第二号被保険者間の負担の公平を図り、及び負担能力に応じた負担とするという観点から、被用者保険等保険者に係る介護納付金の額については、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成二十九年法律第五十二号)により、各被用者保険等保険者に係る同法第一条の規定による改正後の介護保険法第百五十二条第二項に規定する第二号被保険者標準報酬総額に応じて負担する仕組みとしたものであり、政府としては、御指摘のように「介護保険制度が社会保険方式であることを踏まえ、被用者保険間の負担調整は、公費の拡充を含めて検討するべき」とは考えていない。

五について

 御指摘の「日中独居対策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、要介護者及び要支援者(以下「要介護者等」という。)のニーズに対応した介護サービス基盤の確保に取り組んでいる。
 なお、御指摘の「行政サービスを利用できない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、要介護者等に対しては、同居家族等がいることのみを判断基準とするのではなく、個々の利用者の状況に応じて、適切なケアプランに基づき、訪問介護等における生活援助を提供することとしている。

六について

 総合合算制度については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第七条第一号イにおいて、総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入について、総合的に検討する旨が規定されていたが、「平成二十八年度税制改正の大綱」(平成二十七年十二月二十四日閣議決定)において消費税の軽減税率制度を導入することとしたことに伴い、消費税率引上げに伴う低所得者対策としては実施しないこととしたところである。

七の1について

 情報通信機器を用いた診療(以下「遠隔診療」という。)の推進については、「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」(平成九年十二月二十四日付け健政発第一○七五号厚生省健康政策局長通知)において、直接の対面診療による場合と同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十条等に抵触するものではないと示しており、遠隔診療の取扱いについて明確化を図るとともに、厚生労働科学研究費補助金による様々な研究等を行っている。また、遠隔診療の診療報酬上の評価の在り方については、医療の質の向上や効率的な医療の提供を図る観点から、中央社会保険医療協議会において、議論をしているところである。
 地域包括ケアシステムの構築には、良質かつ適切な医療を効率的に提供することも重要と考えており、遠隔診療をはじめとしたICTの活用も含め、地域包括ケアシステムの構築を推進してまいりたい。

七の2について

 介護ロボットについては、都道府県が設置する地域医療介護総合確保基金により、介護事業所への導入を支援しており、政府としては、平成二十六年四月の消費税率引上げによる増収分等を財源として、平成二十七年度から当該基金の財源に充てるために必要な資金の交付を行っている。

七の3について

 御指摘の「介護ロボット機器」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十七年度からは、これまで三年に一度となっていた介護保険の給付対象となる福祉用具の種目の追加等に係る検討を随時行うこととするなど弾力化を図ることとしたところである。