質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第九二号

内閣参質一九三第九二号
  平成二十九年五月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員小川勝也君提出我が国の農業を支える生態系の保護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川勝也君提出我が国の農業を支える生態系の保護に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の措置については、平成二十六年六月に、農林水産省において、「平成二十六年度の水稲の開花期に向けた蜜蜂被害軽減対策の推進について」(平成二十六年六月二十日付け二六消安第一六八三号・二六生畜第四一一号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長及び生産局畜産部畜産振興課長連名通知)を発出し、農薬による蜜蜂の被害軽減のための対策の実施を求めたものであるところ、同省が実施した「蜜蜂被害事例調査」によると、農薬が原因と疑われる蜜蜂の被害事例の数は、平成二十六年度には七十九件であったものが、平成二十七年度には五十件となっており、農薬使用者と養蜂家との間の情報共有等の対策が蜜蜂の被害軽減に有効であったとの報告を都道府県から受けているところである。

一の2について

 政府としては、環境省において、花粉を媒介する動物(以下「花粉媒介動物」という。)のうち主要なものである野生のハチを対象とし、農薬が環境中で野生のハチに与える影響についての調査を実施し、当該影響についてのリスク評価手法やリスク管理手法に係る検討を行っているところである。その結果、農薬の使用が、野生のハチの生息に深刻な影響を及ぼしていると認められる場合には、必要な対策を検討していく考えである。

二について

 農薬製造者から、農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)に基づく申請があったスルホキサフロルの登録に係る申請書の記載内容については、当該登録の審査を行っている現時点においては、これを公にすることにより、当該農薬製造者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。なお、スルホキサフロルはアブラムシ類等の防除を目的とした農薬として登録の申請があったものであるところ、食品安全委員会農薬専門調査会幹事会に当該農薬製造者が提出した当該登録の申請の概要に関する資料(以下「概要資料」という。)においては、使用上の注意事項の中に「ミツバチの巣箱及びその周辺にかからないようにすること」、「受粉促進を目的としてミツバチ等を放飼中の施設や果樹園等では使用を避けること」及び「養蜂が行われている地区では周辺への飛散に注意する等、ミツバチの危害防止に努めること」との記載があると承知している。

三について

 農薬取締法に基づく農薬の登録においては、申請者に対して、花粉媒介動物である蜜蜂への影響が考えられ得る農薬について、当該影響の程度を把握するため、蜜蜂への影響試験の成績を記載した書類の提出を求めるとともに、当該登録の審査においては、当該試験の結果、農薬に含まれる有効成分の蜜蜂に対する有害性が高い場合には、当該農薬による蜜蜂への影響を防止するための注意事項が申請書に適切に記載されているかどうかについても審査しており、スルホキサフロルの登録の審査においても、この観点からの審査を行っているところである。

四について

 三についてでお答えした蜜蜂への影響試験は、農薬原体又は製剤を用いた蜜蜂への急性毒性試験により行うこととしており、スルホキサフロルの登録の審査においても、蜜蜂への影響を防止する観点から、当該登録の申請を行った農薬製造者から提出されたスルホキサフロルの農薬原体及び製剤を用いた蜜蜂への急性毒性試験の成績も活用して審査を行っているところである。お尋ねの「当該試験成績の概要」については、概要資料において、スルホキサフロルの農薬原体を用いた試験成績は、当該農薬原体を蜜蜂に経口で与えてから四十八時間後の急性毒性の強弱を把握するための半数致死量の値が蜜蜂一頭当たり○・一四六マイクログラムであり、スルホキサフロルの製剤を用いた試験成績は、当該製剤を蜜蜂に散布してから二十四時間後の死亡率が百パーセントであるとの記載があると承知している。
 また、お尋ねの「追加試験を同審査で実施する予定」については、スルホキサフロルの登録の審査を行っている現時点においては、これを公にすることにより、審査に係る意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ及び当該登録の申請を行った農薬製造者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。