質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第七五号

内閣参質一九三第七五号
  平成二十九年四月十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 今国会に提出している組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「改正後組織的犯罪処罰法」という。)第一条においては、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」と規定しているところ、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を採択した平成十二年の国際連合総会決議第二十五号には、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が、とりわけ、マネー・ローンダリング、腐敗、絶滅危惧種の野生動植物の不正な取引、文化財に対する犯罪等の犯罪活動及び拡大している国際的な組織犯罪とテロリストによる犯罪活動とのつながりとの戦いのための有効な手段であるとともに国際協力のために必要な法的枠組みとなることを強く確信し」との趣旨の記載があるように、同条約が「テロ対策を目的とした条約ではない」との御指摘は当たらない。
 また、「テロリズム」とは、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知しているところ、改正後組織的犯罪処罰法第六条の二における「テロリズム集団」は、同条第一項において定義している「組織的犯罪集団」すなわち「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」の典型として分かりやすいものを例示したものであり、この「テロリズム」の語は、右に述べた「テロリズム」の一般的な意味を前提として用いているものである。

四及び五について

 改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の罪は、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」が関与する一定の犯罪が実行されることによる重大な法益侵害を未然に防止するために、当該実行の前段階の行為を処罰の対象としているものであるところ、御指摘の収賄罪及び事前収賄罪は、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の資金源となり得る犯罪であることから、これらの罪を同条の罪の対象犯罪としていることには十分な合理性があり、お尋ねの各場合において同条の罪が成立し得ることは、刑罰法規の在り方として妥当性を欠くものではないと考える。

六について

 犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるが、改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の罪は、同条第一項各号に掲げる罪に当たる行為で、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ」若しくは「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」の遂行を二人以上で計画し、「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」が行われた場合でない限り、成立しない。

七について

 お尋ねの「その実行を共同の目的とする犯罪」は、収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるところ、例えば、薬物密売の構成員らが組織的殺人を実行する場合のように、お尋ねの「計画した犯罪」が「その実行を共同の目的とする犯罪」とは異なる場合もあり得る。

八について

 個々の事例が改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の規定による処罰の対象となるか否かについては、同条の規定及び収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるが、実行準備行為は、同条に規定する計画行為とは別の行為であって、「計画をした犯罪を実行するため」の行為であるものに限られる。