第193回国会(常会)
答弁書第五八号 内閣参質一九三第五八号 平成二十九年三月三十一日 内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 伊達 忠一 殿 参議院議員福島みずほ君提出「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会報告書」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会報告書」に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「第一線救護衛生員」については、我が国が直接の武力攻撃を受け、自衛隊も、我が国防衛のため、武力の行使を行っている状況で、例えば、現に火砲による攻撃を受けているような状況下において、隊員が負傷したが、その場には医官がおらず、かつ、緊急に医療施設に搬送することも困難であるというような最も厳しい場面を念頭に置いて養成することとしている。ただし、第一線救護衛生員の知識及び技能が活用できる自衛隊の任務においては、同様に活動し得る者であると考えるが、御指摘の「南スーダンなどでのPKO活動やアデン湾での海賊対処行動、あるいはかつての、イラクでの「復興支援」活動のようなケース」で活動することを目的として養成する者ではない。 二について お尋ねの「陸上又は洋上における第一線」については、自衛隊の任務により様々であることから、一概にお答えすることは困難である。 また、お尋ねの「部外病院」については、自衛隊病院以外の病院を意味しているが、具体的な病院を想定したものではない。 三について 陸上であれ洋上であれ、医官がいない場所において第一線救護衛生員が活動を行う場面である。 四について 我が国が外部から武力攻撃を受けた事態における医官の配置については、任務遂行により負傷した自衛隊員の生命を最大限に守るため、最も効果的と考えられる配置をすることとなるが、具体的な医官の配置については、当該武力攻撃の態様に応じその都度判断すべきものであり、一概にお答えすることは困難である。 五について 国際連合南スーダン共和国ミッションに派遣されている自衛隊の部隊に所属する自衛隊員のうち、第十一次要員における医師の資格を有する者は四名、救急救命士及び准看護師の資格を有する者は二名、准看護師の資格を有する者は三名である。 六について お尋ねの「受傷機転」とは、負傷するに至った原因や経緯のことをいう。 七について 防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会においては、第一線での救護に関して、米軍等での取組を参考に検討したものであり、御指摘の「差」について検討したものではない。 八について 平成二十八年四月一日時点での自衛隊医官の自衛隊病院における定員は三百五十名、現員は二百七十六名、充足率は約七十八・九パーセントであり、医務室における定員は二百七名、現員は六十九名、充足率は約三十三・三パーセントであり、医務室が置かれていない部隊における定員は四百六十七名、現員は百九名、充足率は約二十三・三パーセントであり、自衛隊病院、医務室及び医務室が置かれていない部隊以外における定員は八十四名、現員は六十六名、充足率は約七十八・六パーセントであり、医務室が置かれていない部隊における充足率は、御指摘の平成二十一年三月三十一日時点に比べ、向上している。 また、自衛隊医官の充足率が低い主な原因としては、例えば、医師としての研修・診療機会の不足に起因する退職があるものと認識している。 九から十一までについて 第一線救護衛生員は、准看護師の免許等を有することから、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)等の規定に基づき、准看護師等が行えるとされている行為を行うことについて、法律の改正を行う必要はなく、御指摘の「医師法等の規定を逸脱」し、「議会制民主主義の根幹を揺るがす」ものであるとは考えておらず、また、第一線救護衛生員が当該行為を適切に行うために防衛省が実施する訓練課程について、その都度、御指摘の「厚生労働省の指導または了解」を得る必要はないと考えている。 また、防衛省メディカルコントロール協議会(以下「協議会」という。)は、大臣官房衛生監を委員長とし、人事教育局衛生官、統合幕僚監部首席後方補給官、陸上幕僚監部衛生部長、海上幕僚監部首席衛生官、航空幕僚監部首席衛生官及びその他委員長の指定する者を委員としている。なお、大臣官房衛生監、人事教育局衛生官、陸上幕僚監部衛生部長、海上幕僚監部首席衛生官及び航空幕僚監部首席衛生官については、現在、医師の免許を有する者を充てている。また、協議会の審議事項に関して専門的な知見を得るため委員長が必要と認める場合には、協議会に有識者を招へいし、助言を得ることとしており、協議会の委員等は、協議会の審議事項を審議するために適当な者である。 さらに、自衛隊の任務は、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第三条に規定するとおりであり、当該任務を遂行する上で必要な衛生支援体制を整備することは当然であり、当該整備について、御指摘の「自衛隊員の人権の侵害につながる」とは考えておらず、また、第一線救護が行われる状況に陥ることを避けるべく政府が外交努力を重ねていくことと相反するものではない。 |