質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第五一号

内閣参質一九三第五一号
  平成二十九年三月二十一日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員又市征治君提出復興資金流用問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出復興資金流用問題に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「内訳」及び「今後の使用予定」の意味するところが明らかではないが、東日本大震災復旧・復興関係経費の各年度の歳出予算額及び予備費使用額の合計額に前年度繰越額等を加えたものである各年度の歳出予算現額と各年度の支出済歳出額との差は、各年度の決算において翌年度繰越額又は不用額として処理されている。

二について

 お尋ねの「内訳」及び「今後の使用予定」の意味するところが明らかではないが、東日本大震災の被災市町村における災害廃棄物及び津波堆積物(以下「災害廃棄物等」という。)の分別、保管、収集、運搬、再生、処分等(以下「処理」という。)に要した費用に対し支出された災害等廃棄物処理事業費補助金、災害等廃棄物処理促進費補助金及び災害等廃棄物処理事業費(以下「事業費補助金等」という。)についての各年度の歳出予算額に前年度繰越額を加えたものである各年度の歳出予算現額と各年度の支出済歳出額との差は、各年度の決算において翌年度繰越額又は不用額として処理されている。

三について

 御指摘の答弁書(平成二十八年十二月六日内閣参質一九二第四三号。以下「前回答弁書」という。)一についてでお答えした事業費補助金等についての支出済歳出額の合計額の平成二十三年度から平成二十七年度までの各年度の累計額と、前回答弁書二についてでお答えした岩手県、宮城県及び福島県(以下「被災三県」という。)の平成二十三年度から平成二十七年度までの支出済歳出額の合計額との差は、被災三県以外の道県における災害廃棄物等の処理に要した費用であり、これらの道県における事業費補助金等についての平成二十三年度から平成二十七年度までの支出済歳出額の合計額をお示しすると、それぞれ以下のとおりである。
 北海道 約三億四千七百万円
 青森県 約四十九億五千四百万円
 茨城県 約八十三億八千六百万円
 栃木県 約十二億二千八百万円
 群馬県 約三千九百万円
 埼玉県 約千九百万円
 千葉県 約二十七億六千三百万円
 新潟県 約六億六千九百万円
 長野県 約七億千三百万円
 静岡県 約四百万円

四について

 災害廃棄物等の発生量の推計方法については、前回答弁書二についてでお答えしたとおりである。前回答弁書二についてでお示しした「過去の実績等」は、東日本大震災の被災市町村が実際に民間事業者と委託契約を行った際の労務単価、一般財団法人建設物価調査会が発行している「建設物価」等の資料に記載された廃棄物の処理単価等を指すものである。
 また、阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震における災害廃棄物に係る処理単価の実績は、御指摘の災害等廃棄物処理事業費補助金及び災害等廃棄物処理促進費補助金に係る予算額の積算根拠として用いていない。お尋ねの「阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震における災害廃棄物等一トン当たり処理単価」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の取扱いについて」(平成二十三年五月二日付け環廃対発第一一〇五〇二〇〇三号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長通知)において、過去の実績例として、阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震において災害等廃棄物処理事業費補助金の対象となった災害廃棄物の処理に係る事業費を災害廃棄物発生量で単純に除した数値を示しており、当該数値は、阪神・淡路大震災が一トン当たり約二万二千円、新潟県中越地震が一トン当たり約三万三千円である。

五について

 岩手県及び宮城県の沿岸市町村において処理が必要とされた災害廃棄物等の量については、事業の進捗に応じて、環境省において適時に推計を行い、岩手県における総量については平成二十四年九月末時点で約五百二十五万トン、平成二十五年三月末時点で約五百二十五万トン、平成二十六年三月末時点で約六百十八万トンと、宮城県における総量については平成二十四年九月末時点で約千八百七十三万トン、平成二十五年三月末時点で約千七百三十四万トン、平成二十六年三月末時点で約千八百八十八万トンと、それぞれ推計してきたところであり、必ずしも御指摘のように下方修正してきたものではない。
 また、「なぜ宮城県及び岩手県においては、災害廃棄物等の処理のための予算をほぼ使い尽くすような事態となっているのか」とのお尋ねについては、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、前回答弁書三についてでお答えしたとおり、事業費補助金等の毎年度の予算額については、事業の進捗に応じて毎年度必要と見込まれたものを計上したものである。

六について

 御指摘の「災害廃棄物等の一トン当たりの処理費用の地域差は、通常、日本全国で数パーセントから数十パーセントであるのが一般的と考える」ことの理由が明らかではないが、前回答弁書四についてでお答えしたとおり、災害廃棄物等の処理に係る事業費は、災害廃棄物等の発生状況やその状態等によって異なるため、各市町村における事業費を災害廃棄物等の処理量で単純に除した数値にはおのずと差異が生じるものであるから、「不自然である」との御指摘は当たらないと考えている。また、お尋ねの事例については、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

七の1及び2について

 災害廃棄物等の処理は、分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の行程により市町村が行うことが基本であるが、その具体的な行程及び実施主体については、災害廃棄物等の発生状況やその状態等によって異なるものであり、一概にお答えすることは困難である。

七の3について

 御指摘の「災害廃棄物等の処理に係る国の補助金」の意味するところが必ずしも明らかではないが、災害等廃棄物処理事業費補助金は、被災市町村が災害廃棄物等の処理に要した費用について、国から当該被災市町村へ直接交付されるものである。また、被災市町村から他の地方公共団体へ委託された災害廃棄物等の処理に要した費用については、当該被災市町村から当該他の地方公共団体へ支出されるものであり、御指摘のように「被災市町村を通さず、国から直接、処理委託費用に相当する額を補助する」こととはしていない。

七の4について

 岩手県及び宮城県の被災市町村から他の地方公共団体へ委託された災害廃棄物等の処理に要した費用については、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。また、お尋ねの「国が被災市町村に交付した補助金額」の意味するところが必ずしも明らかではないが、災害等廃棄物処理事業費補助金について、平成二十三年度から平成二十七年度までの支出済歳出額の合計額を岩手県及び宮城県の被災市町村等ごとにお示しすると、それぞれ以下のとおりである。
 岩手県宮古市 約三百二十八億三千七百万円
 岩手県大船渡市 約四百七十三億九千六百万円
 岩手県花巻市 約四千百万円
 岩手県久慈市 約三十六億七千三百万円
 岩手県遠野市 約二千八百万円
 岩手県一関市 約十億七千三百万円
 岩手県陸前高田市 約七百二十億六千三百万円
 岩手県釜石市 約三百六十五億八千三百万円
 岩手県奥州市 約二億七千二百万円
 岩手県気仙郡住田町 約千二百万円
 岩手県上閉伊郡大槌町 約二百二十億八千五百万円
 岩手県下閉伊郡山田町 約百九十六億四千百万円
 岩手県下閉伊郡岩泉町 約十八億六千六百万円
 岩手県下閉伊郡田野畑村 約二十一億六千四百万円
 岩手県下閉伊郡普代村 約四億七千万円
 岩手県九戸郡野田村 約七十八億四千六百万円
 岩手県九戸郡洋野町 約六億八千二百万円
 岩手県奥州金ケ崎行政事務組合 約百万円
 岩手県一関地区広域行政組合 約四百万円
 宮城県仙台市 約六百七十三億八千五百万円
 宮城県石巻市 約千六百八十七億五千六百万円
 宮城県塩竈市 約百四十億千四百万円
 宮城県気仙沼市 約九百九十三億三千八百万円
 宮城県白石市 約六億五千百万円
 宮城県名取市 約二百八十一億五千五百万円
 宮城県角田市 約八千六百万円
 宮城県多賀城市 約百三十三億五千万円
 宮城県岩沼市 約二百二十九億八千万円
 宮城県登米市 約四十一億七百万円
 宮城県栗原市 約十七億円
 宮城県東松島市 約五百二十三億三千六百万円
 宮城県大崎市 約二十一億四千四百万円
 宮城県刈田郡蔵王町 約二千百万円
 宮城県柴田郡大河原町 約六千四百万円
 宮城県柴田郡村田町 約二千三百万円
 宮城県柴田郡柴田町 約九千八百万円
 宮城県柴田郡川崎町 約三百万円
 宮城県伊具郡丸森町 約百万円
 宮城県亘理郡亘理町 約四百二十九億三千七百万円
 宮城県亘理郡山元町 約三百八十二億六千六百万円
 宮城県宮城郡松島町 約十八億四千百万円
 宮城県宮城郡七ヶ浜町 約百四十八億九千七百万円
 宮城県宮城郡利府町 約二億九千六百万円
 宮城県黒川郡大和町 約一億七百万円
 宮城県黒川郡大郷町 約二億九千万円
 宮城県黒川郡富谷町(現富谷市) 約一億三千万円
 宮城県黒川郡大衡村 約二千百万円
 宮城県加美郡色麻町 約二千四百万円
 宮城県加美郡加美町 約六千五百万円
 宮城県遠田郡涌谷町 約九億五千四百万円
 宮城県遠田郡美里町 約十五億二千三百万円
 宮城県牡鹿郡女川町 約百四十八億九千七百万円
 宮城県本吉郡南三陸町 約二百九十六億千八百万円

八の1及び2について

 御指摘の「十五事業主体」ごとの①災害廃棄物の広域的な処理(以下「広域処理」という。)を要請した市町村、②環境省において把握した各事業主体における災害廃棄物の広域処理の受入れ予定量、③各事業主体において処理された広域処理に係る災害廃棄物の量をお示しすると、それぞれ以下のとおりである。なお、御指摘の「十五事業主体」のうち、北海道中・北空知廃棄物処理広域連合、秋田県鹿角広域行政組合、秋田県潟上市、群馬県佐波郡玉村町、群馬県甘楽西部環境衛生施設組合、埼玉県川口市、東京都ふじみ衛生組合、東京都西秋川衛生組合、京都府綾部市及び大阪府堺市については、受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物の受入れが行われなかったものである。
 秋田県秋田市 ①岩手県九戸郡野田村 ②約七千七百七十トン ③約五千九百三十一トン
 山形県酒田地区広域行政組合 ①宮城県宮城郡松島町 ②約千トン ③約二百七十六トン
 富山県高岡地区広域圏事務組合 ①岩手県下閉伊郡山田町 ②約五百トン ③約五百十九トン
 静岡県静岡市 ①岩手県上閉伊郡大槌町及び下閉伊郡山田町 ②約千七百トン ③約千百二トン
 福岡県北九州市 ①宮城県石巻市 ②約二万三千トン ③約二万二千六百九十六トン

八の3について

 循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠は環境省から、震災復興特別交付税は総務省から、それぞれ交付されたものである。ただし、震災復興特別交付税については、広域連合又は一部事務組合にあっては、当該広域連合又は当該一部事務組合の構成市町村へ交付されたものである。

八の4、九及び十の1について

 御指摘の「十五事業主体」に対して交付された循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠の交付額は、廃棄物処理施設の整備事業等の交付対象事業費を基礎として算出したものである。また、震災復興特別交付税は、東日本大震災に係る災害復旧事業、復興事業その他の事業の実施のため特別の財政需要があること及び東日本大震災のため財政収入の減少があることを考慮して地方団体に対して交付するものであり、当該廃棄物処理施設の整備事業等の実施のため特別の財政需要があることも含め、多様な財政需要があることを考慮した上で当該震災復興特別交付税の額の算定を行ったものである。このため、御指摘の「十五事業主体」ごとに、同交付金の復旧・復興枠及び震災復興特別交付税の交付額の合計額を、各事業主体が処理した広域処理に係る災害廃棄物の量で除して得た数値を、当該広域処理に係る災害廃棄物の一トン当たりの処理費用とみなすことは適当ではないと考える。
 同交付金の復旧・復興枠は、予算に基づくものであり、「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(平成二十四年三月十五日付け環廃対発第一二〇三一五〇〇一号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長通知。以下「交付方針」という。)にのっとって交付を行っているものである。また、同交付金の復旧・復興枠は平成二十三年度から平成二十五年度にかけて御指摘の「十五事業主体」に対して交付されているところ、震災復興特別交付税の額の算定に当たっては、同交付金の復旧・復興枠の対象事業の実施のため特別の財政需要があることについても考慮しており、当該算定及び当該震災復興特別交付税の交付に係る法令上の根拠は、平成二十三年度分については、東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律(平成二十三年法律第四十一号)第六条第一項及び地方団体に対して交付すべき平成二十三年度分の震災復興特別交付税の額の算定方法、決定時期及び決定額並びに交付時期及び交付額の特例等に関する省令(平成二十三年総務省令第百五十五号)第一条第五号であり、平成二十四年度分については、地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成二十五年法律第四号)による改正前の地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)附則第十三条第一項並びに地方団体に対して交付すべき平成二十四年度分の震災復興特別交付税の額の算定方法、決定時期及び決定額並びに交付時期及び交付額等の特例に関する省令(平成二十四年総務省令第三十六号)第一条第二項第五号及び第九号であり、平成二十五年度分については、地方交付税法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第五号)による改正前の地方交付税法附則第十三条第一項並びに地方団体に対して交付すべき平成二十五年度分の震災復興特別交付税の額の算定方法、決定時期及び決定額並びに交付時期及び交付額等の特例に関する省令(平成二十五年総務省令第六十一号)第二条第一項第十七号及び第三条第一項である。

十の2について

 御指摘の「災害廃棄物処理費」及び「費目」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「十五事業主体」に対して交付された循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠については、平成二十三年度一般会計補正予算(第三号)の(組織)環境本省(項)東日本大震災復旧・復興廃棄物処理施設整備費(事項)東日本大震災復旧・復興に係る廃棄物処理施設整備に必要な経費並びに平成二十四年度東日本大震災復興特別会計予算及び平成二十五年度東日本大震災復興特別会計予算の(組織)復興庁(項)東日本大震災復興事業費(事項)廃棄物処理施設整備に必要な経費として計上されている。また、震災復興特別交付税については、平成二十三年度交付税及び譲与税配付金特別会計補正予算(特第三号)の(項)地方交付税交付金(事項)東日本大震災復旧・復興に係る地方交付税交付金に必要な経費並びに平成二十四年度交付税及び譲与税配付金特別会計予算及び平成二十五年度交付税及び譲与税配付金特別会計予算の(項)地方交付税交付金(事項)東日本大震災復興に係る地方交付税交付金に必要な経費として計上されている。

十一について

 循環型社会形成推進交付金が復旧・復興予算の対象とされたのは、震災から半年を経てもなお、放射能汚染に対する懸念から広域処理の見通しが立たない中、政府を挙げて広域処理を後押しするための施策の一つとして必要と判断されたことによるものであり、交付方針を示した平成二十四年三月の時点では一都三県において実施されていた広域処理の受入れが、平成二十六年三月までに一都一府十六県にまで拡大したことから、環境省としては、被災地の復旧・復興の前提である災害廃棄物の処理や広域処理の拡大に関し一定程度の寄与があったものと考えている。なお、前回答弁書十についてでお答えしたとおり、環境省としては、会計検査院からの指摘を踏まえ、引き続き、同交付金をはじめとした予算の執行の適正化に努めていく考えである。