質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一六四号

国立公文書館から内閣官房副長官補室が本年入手した「慰安婦」関係文書に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十六日

紙 智子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国立公文書館から内閣官房副長官補室が本年入手した「慰安婦」関係文書に関する質問主意書

 内閣官房副長官補室は、本年二月三日に国立公文書館から十九簿冊、百八十二点の日本軍「慰安婦」関係文書(以下「「慰安婦」関係文書」という。)を入手し、その写しを本年四月二十四日に紙智子事務所が受け取った。それらの文書について、以下質問する。

一 内閣官房副長官補室は、本年二月三日に国立公文書館から「慰安婦」関係文書を入手したのか。

二 「慰安婦」関係文書は、「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(以下「内閣官房長官談話」という。)の時には入手していなかった文書であり、政府による「慰安婦」に関する調査において初めて入手したものであるか。

三 政府は、「慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(中略)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである」と閣議決定(以下「本件閣議決定」という。)を行っているが、内閣官房副長官補室が内閣官房長官談話の発表以降に入手した「慰安婦」関係文書も、本件閣議決定でいうところの政府による「関係資料の調査」の対象となるべきものであり、今後、「政府が発見した資料」の範疇に含まれるものと考えられるが、如何か。

四 「慰安婦」関係文書は、いわゆる東京裁判およびアジア各地で行われたBC級戦争犯罪裁判の関係文書であり、全部で十九簿冊、百八十二点の文書であるか。

五 「慰安婦」関係文書には、次の記述があるか、以下質問する。なお、原文はひらがな表記に直し、人名を伏せ字又は記号とする。

1 (政府の通し番号二九の二)「桂林市民九名の(桂林市内に於ける日本軍残虐行為)宣誓供述書広西省」に「偽組織人員を利用し工場設立を宣伝し四方より女工を招致し麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した」との記述があるか。
2 (政府の通し番号三〇の二)カゾーラ・フエルナンの宣誓供述書に「各地ではフランス人女子に対する凌辱行為も若干行われました。ある婦人と十四歳になるその妹は、強制的に数週間、約五十名の日本兵と雑居させられ、その虐待と暴行を受けました。その一人は発狂しました。彼女達は二人ともその後処刑されました。また別の例では(中略)更にまた数地方では原住民女子は売淫行為を強制されました」との記述があるか。
3 (政府の通し番号三一の一二)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第25号事件(1名)」の法務省面接調査でバリ島海軍第三警備隊特別警察隊隊長からの聞き取りとして「私の一番恐れていた事件は、慰安所事件であった。これは慰安婦の中には、スラバヤから蘭軍下士官の妻君五人の外、現地人七十人位をバリ島に連れてきた件である。(中略)この外にも、戦中の前後約二百人位の婦女を慰安婦として奥山部隊の命により、バリ島に連れ込んだ。私は終戦後、軍需部、施設部に強硬談判して、約七十万円を本件の工作費として貰い受け各村長を介して住民の懐柔工作に使った。これが完全に功を奏したと見え、一番心配した慰安所の件は一件も訴えが出なかった」との記述があるか。
4 (政府の通し番号三三の一)「BC級(オランダ裁判関係)ポンチャナック裁判・第13号事件(13名)」の起訴状に「本被告は(中略)特警隊が強制売淫をなさしむる目的を以て彼女等の意思に基かずして少女婦人を拉致せるを黙認せり。(中略)又本被告は〇〇に対しカタバンの少女・婦人等をポンチャナックに連れて来り慰安所に入所せしむべく命じたり。其の命により二十名の少女・婦人等は自己の意思に基かずして(中略)慰安所に入所せしめたる上強制的に淫売婦たらしめたり」との記述があるか。
 (政府の通し番号三三の三の二)同事件の判決文に「第一被告はポンチャナック特警隊分遣隊隊長としTKTに依り犯罪行為が行われたることを知りいたる上、多くの場合に自ら命令を与えたり(処刑、及び慰安所用に婦女を探すこと)」との記述があるか。
 同判決文に「斯かる最大級の野蛮なる振舞いをしても住民を絶えず恐怖におののかしむには未だ足りずとて、敵は婦女子を慰安所にいれて之に売淫を強制することに依り犯罪を重ねたり」との記述があるか。
5 (政府の通し番号三五の二)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第69号事件(12名)」に「婦女達は交互にこの手術台に乗せられ一番検査に都合の良いやうな恰好をした。之を眺めているものが見て、大声で笑ひたてた。恐れと痛みから台から降りやうとすると、手荒く取扱はれた(中略)此の時〇〇の行動も極めて唾棄すべきものがあった。即ち、彼は煙草の火で陰毛や大腿部を焼いたりして、皆で大笑ひの種にした。(中略)三名の娘が失神したが、名は憶へていない。此の三名は正気づかせる為に打ち殴られたり、大声で怒鳴られたりした。既に第一日目である日曜日の午前中に十八名~二十名の客がとられ、その上夜間にも仕事があった。月曜日の朝には既に数名の娘は起き上れず、歩けもしなかった。B姉妹は逃げ出して終った。然し、彼女達は火曜日の朝には警察の手に依って捕った。送り帰されて来てから、彼女等は裸にされ、洗濯夾を乳首につけられて、便所の掃除をさせられ、通りがかりの日本人から侮辱された。」との記述があるか。
6 (政府の通し番号三五の三六)前記第69号事件の判決に「被告は(中略)婦女子を抑留所より連行し之を慰安所に入れることが、たとえそれが自由意志にて行はれたにせよ、人道及び国際条約の侵反行為なりと悟る程には本件を深く考えざりき。(中略)(日本人)自らが設けたる抑留所の非人道的な悪状況(食料、宿舎)を利用して抑留所より志望者を募集すること自体が既に道義と人道に反する行為なるも、本件の場合はそれと共に又戦争の法規慣習に対する違反行為なり。更に「兵站係将校」」をも兼務しありたる被告は、斯かる計画を是認し、その計画に協力し、更に、本計画が如何に実行され、又その結果開設されたる慰安所が如何に経営せられたるやの監督を全く行はざりし事実に依り、犯罪行為に責任を負はざるべからず。(中略)被告は高級将校として和蘭人婦女子が一般的に、又、主義として日本人の慰安所に慰安婦として働くために抑留所を離るることを欲さざること及び斯かることは偽瞞乃至暴力を用ひて始めて可能なることを当然知りいたる筈なり。(中略)被告〇〇を強制売淫の為の婦女子の連行、売淫の強制、強姦なる戦犯行為に依り懲役15年に判決す」との記述があるか。
7 (政府の通し番号三六の七四)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第106号事件(1名)」の〇〇中将に対する「判決文」に
 「次の部下が下記の刑に処せられていることを考慮し、即ち
 a 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制及び強姦罪で死刑
 b 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制罪で懲役十年
 c 被逮捕者の悪待遇罪で懲役七年
 d 被逮捕者の悪待遇及び強姦罪で懲役十六年
 e 強制売春の為の婦女子のら致罪で懲役二年
 f 売春強制罪で懲役二十年
 g 売春強制罪で懲役十年
 h 売春強制罪で懲役十五年
 i 売春強制罪で懲役七年
 j 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制、強姦罪で懲役十五年
 (中略)この本人の自由意志に反してキャンプから連れてきた婦女子を遊女屋に入れることを容認したと言うことは、婦女及び娘達は、自己の意志に反してスマランの遊女屋に入れられたものであり、又、〇〇一味に対する事件の審理の際にも既に明らかにされた如く、彼女等は、如何なる条件の下にも遊女屋を出ることは許されず監禁され、上記判決に証拠充分と認められ且つ本件においても右判決に基いて確実と見られているが如く或は強姦或は悪待遇で売春を強制されたことが判明している故に、同時に彼の部下が犯した「売春強制」、「被逮捕者の悪待遇」及び「強姦」と言う戦争犯罪を容認したと言うことにもなることを考慮し(中略)本判決の頭初に掲げた被告人〇〇に対し、起訴事実のうち、証拠不十分のものについては無罪を、証拠充分のものについては売春の強制、強姦、監禁した者の悪待遇なる戦争犯罪に有罪を宣告し、よって懲役十二年の刑に処す」との記述があるか。

  右質問する。