質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一四六号

難民認定状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十五日

石橋 通宏   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   難民認定状況に関する質問主意書

一 難民認定実務の実績について

1 二〇一六年の難民認定申請件数と難民認定件数を示されたい。また全ての難民認定の理由(政治的意見、宗教などのカテゴリー)を示されたい。仮に、難民認定の理由の「カテゴリー」ごとの件数について、二〇一六年においても統計をとっていないのであれば、今後の難民問題に対する我が国の更なる効果的な取組を考える上で、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 二〇一六年の難民認定申請者の申請時の在留状況とこれまでの申請回数についてそれぞれの内訳を明らかにされたい。
3 二〇一六年末時点で、難民認定申請中の人数、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)継続中の人数、同日時点での収容の有無、申請年ごとの内訳及び国籍の内訳とその人数をそれぞれ示されたい。また、このうち二〇一四年十月以前の難民認定申請者については、いまだに申請が継続している主たる理由が、①事実確認に時間が必要な案件であること、②難民認定申請者からの立証資料の提出等に期間を要したこと、③難民認定申請数の急増により難民認定申請に係る事務手続が相当程度輻輳していること等であったのであれば、このうち①と③に関し、今後の具体的な改善策について明らかにされたい。
4 二〇一六年に審査請求の結果が出た件数と、難民認定申請を行ってからの平均審査期間を示されたい。このうち、認定、不認定別の平均審査期間についても明らかにされたい。
5 二〇一六年に難民認定された全員について、申請の処理に要した期間(申請日から認定の結果がなされた日までの日数)を示されたい。
6 二〇一六年の難民認定手続の一次審査で親族以外の者が同席した数を示されたい。
7 二〇一六年の難民認定手続の一次審査の平均処理期間を示されたい。
8 二〇一六年に難民の認定を受けた者について、一次審査におけるインタビューの平均回数を示されたい。また、同年の不認定となった者について、一次審査におけるインタビューの平均回数を示されたい。仮に、不認定となった案件のうち、インタビューが一度もなされなかった例があるならば、その件数及びその理由を明らかにされたい。
9 二〇一六年に難民認定申請が不認定となった案件のうち、不認定後に在留資格が更新された者、されていない者の人数をそれぞれ示されたい。また、在留資格が更新された者については、その在留資格の種別ごとに就労許可の有無別の人数をそれぞれ示されたい。
10 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇〇五年から二〇一六年末までの間に提起された件数、当該期間に終局裁判がなされた件数を明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の確定又は難民不認定処分が取消し若しくは無効とされた後、難民認定及び在留資格が付与されたかどうか、付与されていない場合はその理由をあわせて示されたい。また、付与された場合にはその時期もあわせて示されたい。
11 二〇一六年に仮滞在を許可した人数、不許可の人数及びその平均審査期間を示されたい。
12 二〇一六年の我が国の国際空港における難民認定申請の件数を示されたい。このうち、仮滞在を許可した人数と、不許可の人数及び仮滞在不許可の場合はその理由別の人数を明らかにされたい。
13 二〇一六年に行われた難民認定申請に際し、難民認定申請書が日本語以外の言語で書かれていた件数を言語別に示されたい。このうち、入国管理局として翻訳サービスを提供した件数を言語別に示されたい。仮に二〇一六年においても統計をとっていないのであれば、今後の難民問題に対する我が国の更なる効果的な取組を考える上で、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 複数回申請者の難民認定状況について

 二〇一六年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む)及び人道配慮による在留許可を受けた者(入管法第六十一条の二の二第二項による在留特別許可を受けた者、人道上の配慮を理由に在留が認められ在留資格変更許可を受けた者を含む。以下同じ。)のうち、二回目以降の難民認定申請手続又は審査請求手続で認定又は許可された者の数を明らかにされたい。

三 難民審査参与員制度について

1 二〇一六年に審査請求手続で裁決(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の入管法第六十一条の二の九第三項の規定による決定を含む。)が出された事案について、「理由あり」とされた事案と「理由なし」とされた事案の件数をそれぞれ示されたい。
2 前記三の1の「理由なし」とされた事案中で、法務大臣が意見を聴いた三人の難民審査参与員のうち二人以上が審査請求に理由があり難民の認定をすべきである旨の意見を提出したにもかかわらず、法務大臣が不認定とした事案の件数、その全ての事案の国籍と理由を明らかにされたい。加えて、法務大臣が意見を聴いた三人の難民審査参与員のうち二人以上が難民該当性を否定する旨の意見を提出したにもかかわらず、法務大臣が認定した事案の件数、その全ての事案の国籍と理由を明らかにされたい。
3 前記三の1の「理由なし」とされた事案中で、法務大臣が意見を聴いた三人の難民審査参与員のうち一名でも審査請求に理由があり難民の認定をすべきである旨の意見を提出した事案の件数を示されたい。また、その事案中で人道配慮による在留許可を受けた者の数及びその後の手続で難民認定又は人道配慮による在留許可を受けた者の数を示されたい。仮に二〇一六年においても統計をとっていないのであれば、今後の難民問題に対する我が国の更なる効果的な取組を考える上で、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 二〇一六年に難民審査参与員を経験した全員について、①元外交官、②元裁判官、③元検事、④元弁護士(日本弁護士連合会推薦)、⑤商社等海外勤務経験者、⑥海外特派員経験者(ジャーナリスト)、⑦NGO・国際関係機関の勤務経験者、⑧①、⑤、⑥及び⑦以外の地域情勢や国際問題に明るい者、⑨国際法の専門家(学者)、⑩国際法以外の法律の専門家(学者)の分類で、それぞれの人数を明らかにされたい。
5 二〇一六年に難民審査参与員が、一人当たり何件の難民認定意見を出したかに関し、①事実認定を含む法律実務の経験豊富な法曹実務家、②地域情勢や国際問題に明るい元外交官、商社等海外勤務経験者、海外特派員経験者、NGO、国連関係機関勤務経験者等、③国際法、外国法、行政法等の分野の法律専門家の三区分ごとに、その平均の数を明らかにされたい。また、同年に難民認定意見を一度も出したことのない難民審査参与員の数について明らかにされたい。仮に、これらの統計をとっていないのであれば、今後の難民問題に対する我が国の更なる効果的な取組を考える上で、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 保護費の支給状況について

1 二〇一五年度及び二〇一六年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)について、保護費の申請者数、受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。また、同様に二〇一五年度及び二〇一六年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(ESFRA)の申請者数、利用者数、国籍、入居までの平均待機期間をそれぞれ示されたい。
2 二〇一五年度及び二〇一六年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)について、保護費を受給していた者の申請後から受給決定までの待機の平均期間、受給している者の平均受給期間をそれぞれ示されたい。
3 二〇一六年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍、申請から受給結果が出るまでの待機の平均期間を明示されたい。また受給できなかった理由が「生活に困窮していることが認められなかったこと」である場合には、その具体的な判断基準、他の理由である場合には、その理由を明らかにされたい。
4 二〇〇五年度から二〇一六年度までについて、ESFRAを求めたが受給できなかった者の数、国籍、また受給できなかった理由をそれぞれ明示されたい。
5 二〇一六年に保護費を受給した者のうち、在留資格の有無とその在留資格の種別の人数を示されたい。
6 二〇一五年度及び二〇一六年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)について、①保護費、②生活費、③住居費及び④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。
7 保護費の支給に際し、収入認定の基準の有無について明らかにされたい。また基準がある場合はその基準を示されたい。

五 空港等での庇護申請関係の統計について

1 二〇一四年から二〇一六年までの各年に一時庇護上陸許可を申請した者の数、許可状況及び申請の処理に要した期間を国籍別に示されたい。また、不許可処分を受けた者のうち、不許可の通知後、難民認定申請を行った者の数、国籍及び不許可の通知後に国籍国に帰国した者の数を示されたい。
2 二〇一六年において、国際空港等の出入国港において口頭又は文書で庇護を求め、その審査のために、入国管理局の収容場以外の場所(出国待機施設や「成田エアポートレストハウス」などの入管法第十三条の二第一項により指定される施設や入管法第五十六条が定める協力義務に基づいて運送業者等が決定する民間宿泊施設等)にて身柄を留め置かれていた者の数及び留め置かれていた期間を明らかにされたい。
3 国際空港などの出入国港(直行通過区域内(トランジットエリア)、出国待機施設、「成田エアポートレストハウス」などの入管法第十三条の二第一項により指定される施設や入管法第五十六条が定める協力義務に基づいて運送業者等が決定する民間宿泊施設、入管収容場等も含む)で、日本国籍を有しない者から口頭又は文書で庇護が求められた場合に、入国管理局から具体的にどのような内容の案内が行われ、どのような手続がとられるのか明らかにされたい。特に①直行通過区域内にいる者から庇護を求められた場合、②上陸審査中の者から庇護を求められた場合、③上陸申請が不許可とされ、退去命令を受けた者から庇護を求められた場合、④不退去又は不法入国により退去強制手続の対象とされた者から庇護を求められた場合のそれぞれについて、具体的な案内の内容と手続を明らかにされたい。
4 一時庇護上陸許可申請中の者が難民認定申請を希望する場合には、どのような対応をとるのか、明らかにされたい。
5 一時庇護上陸許可をしない場合、その後の具体的な手続とその法的根拠を明らかにされたい。また、一時庇護上陸許可をしない処分を受けた場合、行政事件訴訟法に基づき、行政事件訴訟の提起が可能であるが、一時庇護上陸許可申請中の者の弁護士への連絡や弁護士等による面会は認められるのか、明らかにされたい。
6 一時庇護上陸申請について不許可処分を受けた外国人が、迫害のおそれを理由に引き続き庇護を求める場合、入国管理局から具体的にどのような内容の案内が行われ、どのような手続がとられるのか、明らかにされたい。特に、難民認定申請に関する案内はどのようにされるのか、明らかにされたい。
7 日本に助けを求めて逃れてきた難民を支援する者等からの報告では、難民認定申請を希望しているにもかかわらず、一時庇護上陸申請の不許可が通知される際に日本から退去するための飛行機に(航空会社等から)搭乗するよう求められるとの情報もあるが、そうした手続は存在するか。存在する場合は、その目的及び法的根拠も明らかにされたい。

六 難民認定の実務について

1 二〇一六年に難民認定された者のうち、いわゆる「新しい形態の迫害」に当たる者は含まれているか。含まれているのであればその人数及びどのような迫害を受けていたのかを明らかにされたい。
2 二〇一六年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。仮に統計をとっていないのであれば、法務省が二〇一五年九月十五日に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の議論を深めるためにも、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 難民認定申請者の在留資格の更新について

 二〇一六年に難民認定再申請を行った者のうち、在留資格の更新の際に就労制限をされた者の人数とその国籍、また在留期間の制限をされた者の人数とその国籍を明らかにされたい。

八 難民認定申請者の収容について

1 二〇一〇年から二〇一六年までの各年に、難民認定申請をしたことのある者で収容施設に収容されている者の人数とそれぞれの年における最長の収容期間(収容施設を移送された者については合計期間とする)を明らかにされたい。
2 二〇一〇年から二〇一六年までの各年に収容施設に収容された者のうち、二回以上の収容となった人数と、各年の収容者に対する比率を明らかにされたい。

九 国費送還について

 二〇一〇年から二〇一六年までの各年に、難民認定申請をしたことのある者を国費で送還した件数と、その国籍を明らかにされたい。また、そのうち難民認定をしない旨の結果を通知したときから二十四時間以内、又は一週間以内に国費で送還されたそれぞれの件数及びその国籍を明らかにされたい。

十 抜本的な改革について

 法務省は二〇一五年九月十五日に「難民認定制度の運用の見直しの概要」を公表し、「真の難民」の迅速かつ確実な庇護を推進するとしているが、「真の難民」の庇護の実現は、現時点でどの程度達成されていると考えているか、今後の取組の課題とあわせて明らかにされたい。

  右質問する。