質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一三九号

IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十四日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する質問主意書

 昨年提出した、「IoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する質問主意書」(第百九十一回国会質問第一三号)に対する答弁書(内閣参質一九一第一三号。以下「前回答弁書」という。)が閣議決定されてから、約一年が経過している。この間のIoTやビッグデータ解析、人工知能等のイノベーション利活用による「日本版・第四次産業革命」を見据えた我が国電機産業の発展に関する取組みを踏まえ、以下のとおり質問する。

一 就業構造の変化への対応について

 IoT、ビッグデータ、人工知能等の急速な発展・活用拡大に伴い、既存の仕事の減少や、必要となるスキルの変化により技術や技能の転換が加速される等、働き方に大きな影響を及ぼすと考えられている。こうした技術や技能の転換に対応するため、社会人の生涯学び直しや企業内での能力開発を進める必要がある。二〇一六年九月、「産業競争力会議」と「未来投資に向けた官民対話」を統合し、第四次産業革命を推進する政府全体の新たな司令塔「未来投資会議」が設置され、医療・介護、建設、公的資産の民間開放、行政のIT化、自動走行等の検討課題について検討が進められている。また、同年十二月、「未来投資会議構造改革徹底推進会合」の下に「第四次産業革命 人材育成推進会議」が設置され、第四次産業革命の時代に求められる人材像やスキル、人材育成についての検討が始まっている。第四次産業革命に対応した人材育成について、産(労使)・官・学(高等教育機関、職業訓練機関)による議論を加速させ、新たに必要とされる資質や能力・スキルなどを速やかに示すとともに、雇用の安定につながる実践的な人材育成システムを構築するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 人工知能(AI)活用環境の整備について

1 人工知能(AI)については、近年、機械学習やディープラーニング等の技術発展により社会における適用・応用分野が一挙に拡大するとの期待が高まっている。政府でもこれに対応するべく、二〇一六年に「人工知能技術戦略会議」が設置され、二〇一七年三月には「人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップ」がまとめられた。今後は、AI実用化に向け、同ロードマップを着実に遂行するとともに、AIが一般化する時代に備え、AIの利活用に求められる資質や能力・スキルを整理し、AI技術やその活用方法について習得する環境を整備するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 AIが事故等の不具合を起こした場合の責任の在り方や軍事利用における制限若しくは禁止、知的財産を生み出した際の権利化、また、AIの利活用で派生する倫理や社会制度上の諸課題に関する議論を深め、これらに関するルールの整備を促進していくべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 老朽インフラへの対応について

 いわゆる高度成長期に整備された大量の公共インフラの多くは、建設後三十年から五十年が経過しており、二〇二〇年頃から橋梁、交通施設、上下水道施設等が一斉に更新時期を迎える。しかし、こうした設備の点検は五年に一度、作業員が目視や打音等により劣化状況を手作業で確認する検査が一般的であり、作業員個々人のスキルの差や見落とし等が問題視されている。さらには、人手不足や地方自治体の財政難も問題を深刻化している。こうした状況を背景に、政府は、二〇一三年に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定し、二〇二〇年度までに国内の重要インフラ・老朽化インフラの二十パーセントについてセンサー等の活用による点検・補修を行い、課題解決の成功モデルを構築し、国際展開を図ることとしているが、その実現のためにも、センサー技術のさらなる研究開発を加速化するとともにセンサーや画像処理技術等を駆使した効率的な監視・管理体制が可能となる次世代インフラの標準システム化を早急に確立するべきであり、また、インフラ監視・点検については、増大する重大事故のリスクに対応するため、高度なセンシングによるビッグデータの収集、AIによる分析を通じた異常・予兆の早期検知システムの導入を急ぐべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 企業や団体におけるマイナンバー管理に伴う事務手続きの負担軽減について

 マイナンバー制度は、公平・公正な社会の実現、国民の利便性の向上、行政の効率化を目的に導入されているが、企業や団体においては制度の導入により業務負担が増加している状況がある。たとえば、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「マイナンバー法」という。)第十九条にある特定個人情報の提供が許されるケースには、「転籍」が含まれておらず、そのために企業グループでマイナンバーを一元管理していても、法人間をまたいだ異動・転籍に際して、再度従業員からマイナンバーを取得することが必要になっている。また、マイナンバー法第二十二条は、企業が同法第二十一条第二項の規定による総務大臣からの通知を受けた場合、従業員の特定個人情報を提供しなければならないとしているが、一方で同法第十四条によれば、企業は従業員に対してマイナンバーの提供を求めることができるとされているものの、従業員は企業へのマイナンバーの提供を強制されていない。これらにより、マイナンバーの収集業務やマイナンバーの提供の不同意者への対応の長期化など企業側の負担が極めて重くなっているため、マイナンバー管理に伴う企業や団体における事務手続きの負担軽減を図る必要があると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

五 電子行政の推進について

 電子行政の推進は、国民の利便性向上及び行政運営の効率化を実現する上で重要だが、企業における行政手続きの効率化を実現するという視点も必要と考える。たとえば、企業は、従業員の入社・異動・退社等に伴う社会保険手続きに関する申請を、ハローワーク・年金事務所・健康保険組合それぞれに提出しており、過大な事務負荷が発生している。また、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第十四条及び第十五条は、毎年度、特定事業者に対して主務大臣宛に計画書・報告書の提出を義務付けているが、各地方自治体も同様に、条例に基づき同様の計画書・報告書の提出を事業者に義務付けている。主務大臣と各地方自治体に提出する計画書・報告書の記載内容がほぼ同一であるにも関わらず、これらの書式は統一されていないため、地方自治体をまたいで広域展開する事業者は、膨大な重複作業を強いられている。行政分野におけるIT化の推進を強化し、国と地方を通じた申請のワンストップ化や書式・様式の統一化等を推進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

六 ビッグデータ利活用ルールの整備について

 情報通信・処理技術の進展により、位置情報や行動記録、購買履歴等の個人の行動や状態等に関するデータ(ビッグデータ)を、商品やサービスの開発や販売促進へと活用する動きが急速に広がっている。個人情報を保護した上でビッグデータの利活用を一層図る環境を早急に整備すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

七 サイバーセキュリティ対策の強化について

 第五期科学技術基本計画(二〇一六年一月閣議決定)で示された、目指すべき将来像「Society5.0」に向けては、社会全体がインターネットでつながり、相互にデータが交換・活用されていくことが前提となるが、社会全体がインターネットでつながると、サイバー攻撃を受けた場合に、生命が危険にさらされたり経済的損失が発生したりするなど、社会全体で様々なリスクが増加することも考えられる。一方、経済産業省による「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」(二〇一六年六月)によると、情報セキュリティ人材は現在十三・二万人程度不足しており、二〇二〇年には十九・三万人程度不足すると推計されている。サイバーセキュリティ対策の強化は、国民の安全な暮らしや企業活動を守るため決定的に重要であることを考えると、社会全体で最低限必要なサイバーセキュリティ対策のレベルを示し、それに対応できる人材育成やシステム導入への支援といった対策を施していくことが必要であるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。