質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第八八号

「テロ等準備罪」新設法案に「テロの定義」が明記されていないことに関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年四月二十一日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「テロ等準備罪」新設法案に「テロの定義」が明記されていないことに関する再質問主意書

 平成二十九年三月三十一日に提出した「「テロ等準備罪」新設法案に「テロの定義」が明記されていないことに関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第七二号)に対する答弁書(内閣参質一九三第七二号。以下「前回答弁書」という。)に疑義があるため、以下再質問する。

一 前回答弁書の一から三までについてで「「テロリズム」とは、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知している。今国会に提出している組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「改正後組織的犯罪処罰法」という。)第六条の二における「テロリズム集団」は、同条第一項において定義している「組織的犯罪集団」すなわち「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」の典型として分かりやすいものを例示したものであり、この「テロリズム」の語は、右に述べた「テロリズム」の一般的な意味を前提として用いているものである。」との答弁(以下「当該答弁」という。)を得た。当該答弁に関して、以下質問する。

1 当該答弁によって「テロリズム集団」は「「組織的犯罪集団」すなわち「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」の典型として分かりやすいもの」とされたが、「テロリズム集団」と「テロリズム集団」に該当しない「その他の組織的犯罪集団」とを「分かりやす」く明確に峻別することは可能か、また、明確に峻別することは可能であるとするなら、いかなる定義あるいは基準によって峻別するのか、明確に示されたい。
2 前記1に関連して、捜査当局等により「テロリズム集団」に該当しない「その他の組織的犯罪集団」であると判断されていた「団体」が、捜査の進捗等に伴い「テロリズム集団」に該当する「団体」に変化したと判断される可能性はあるのか、また、判断される可能性があるとするなら、捜査当局等はいかなる定義あるいは基準を根拠として当該判断を変えることになるのか、明確に示されたい。

二 前回答弁書の四についてで、平成二十九年二月三日の衆議院予算委員会における安倍首相の、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「二〇二〇東京五輪」という。)を開催するにあたり、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の成立は必要条件であるかとの質疑に対する「もし、テロリストに襲撃をされるということ、法的な制度の中においてそれを防ぎ得ないという穴があるのであれば、それはおもてなしとして不十分であろう。」との答弁(以下「首相答弁」という。)にある「テロリスト」の定義について、「一般的な意味の「テロリズム」に当たる行為を行う者」との答弁を得た。改正後組織的犯罪処罰法はあくまで「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」を対象とした法律であると解されるところ、改正後組織的犯罪処罰法は、この「テロリスト」が組織的犯罪集団に属さない個人であってその個人が単独で計画し実行しようとする犯罪、すなわち組織的犯罪集団に属さない個人による「一般的な意味の「テロリズム」に当たる行為」(以下「テロ単独犯」という。)を処罰するものではないとの理解でよいか。

三 前記二に関して、改正後組織的犯罪処罰法がテロ単独犯を処罰するものではないのであれば、テロ単独犯に対しては何ら法的効力を有しないのであるから、首相答弁の「もし、テロリストに襲撃をされるということ、法的な制度の中においてそれを防ぎ得ないという穴」における「テロリスト」が組織的犯罪集団に属さない個人である場合は、改正後組織的犯罪処罰法が成立し施行されたとしても、二〇二〇東京五輪開催期間中に「テロリストに襲撃をされるということ」を未然に「防ぎ得ない」との理解で相違ないか、政府の認識を明確に示されたい。

四 前記二及び三に関して、改正後組織的犯罪処罰法は二〇二〇東京五輪を開催するにあたって「テロリスト」による犯罪を未然に防ぐために必要不可欠なものである、すなわち、改正後組織的犯罪処罰法が成立し施行されなければ「二〇二〇東京五輪が開催できないと言っても過言ではない」との認識か。国民が納得し得る理由とともに、政府の認識を改めて明確に示されたい。

五 ある個人が「別表第三に掲げる罪を実行」した場合、かつ、その個人が勤務している会社等あるいは参加している市民団体等といった所属している「団体」(以下「当該団体」という。)が、「その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにある」団体すなわち組織的犯罪集団であるか否かが明らかでない場合、当該団体が組織的犯罪集団であるか否かを明らかにする目的で、当該団体に所属する他の構成員が捜査当局等による捜査、監視あるいは事情聴取の対象となる可能性は否定し得るか、政府の認識を明確に示されたい。

六 前回答弁書の五から七までについてで「「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と関わりがない方が同条の規定による処罰の対象となるものではないことは明確であり、また、これらの行為を行った者であるとの具体的な嫌疑が存する場合でなければ、同条の罪について捜査の対象となることがないことは当然である。」との答弁があった。では、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の全ての構成員が捜査当局等によって明確かつ完全に特定されておらず、捜査当局等によって「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と以下の関係にある者(以下「テロリストとの関係が疑われる者」という。)が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であるか否か明確に特定されていない場合、テロリストとの関係が疑われる者が、捜査当局等による捜査、監視あるいは事情聴取の対象となる可能性(以下「当該可能性」という。)はあるか、以下に示した関係ごと個別に当該可能性の有無につき説明されたい。その答弁において「刑事事件の捜査及び公判は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)等に定める適正な手続に従って行われるもの」あるいは「個別具体的な事実関係の下で判断されることとなる」等とする場合は、当該可能性を否定しないとの認識を示すものとなることに留意されたい。

1 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と婚姻関係にある者
2 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と親子関係にある者
3 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と婚姻関係及び親子関係以外の親族関係にある者
4 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と職場あるいは学校等において知己関係にある者
5 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と名刺を相互に交換している関係にある者
6 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と電子メールアドレスを相互に交換している関係にある者
7 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の構成員であると明確に特定された個人と、ツイッターにおける「フォロー」あるいは「フォロワー」関係、フェイスブックにおける「友達」関係、ラインにおける「友だち」関係等、ソーシャルネットワーキングサービスを通じて相互に情報を共有あるいは交換可能な状態にある関係にある者

  右質問する。