質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第五七号

薬局における薬剤師不在時の一般用医薬品の取扱いの見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年三月二十一日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   薬局における薬剤師不在時の一般用医薬品の取扱いの見直しに関する質問主意書

 平成二十八年六月二日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、「患者本位の医薬分業の推進を前提とし、薬局の調剤応需体制の確保とのバランスなどを考慮しつつ、薬局において、薬剤師不在時にも登録販売者が第二類・第三類医薬品を販売することができるよう、業界関係者の意見を幅広く聴取した上で、規制を見直す。」(以下「本規制改革」という。)とされたところである。
 この閣議決定を受けて、厚生労働省は、平成二十九年三月十三日に薬局における薬剤師不在時の一般用医薬品の取扱いの見直しに係るヒアリングを開催した。このヒアリングでは本規制改革に対して必ずしも前向きでない意見が大勢を占めたと聞くが、閣議決定にある「業界関係者の意見を幅広く聴取した上で」の意味を確認する観点から、以下政府の見解を求めるものとする。

一 前記ヒアリングでは、本規制改革について消極的な意見が大勢を占めたと聞くが、その事実関係について政府の見解如何。

二 前記ヒアリングでは、前記閣議決定にある「患者本位の医薬分業」の主体である患者団体から「薬剤師が不在の薬局というのは考えられない」という趣旨の意見があったと聞くが、その事実関係について政府の見解如何。

三 前記ヒアリングと同様に、本規制改革に関する関係団体に対するヒアリングを今後も継続して開催する予定はあるか政府の見解如何。

四 現段階において、患者団体から本規制改革の必要性に懐疑的な意見が述べられるとともに不安も示されるなど、関係団体の大勢から本規制改革への消極的な意見が述べられていると理解しているが、このように関係団体から十分な理解が得られていないにも関わらず、本規制改革を実施するのか政府の見解如何。

五 一般論として、閣議決定における「幅広く意見聴取をした上で規制を見直す」という文章は、規制の見直しに当たって幅広く意見を聴取しさえすれば、その意見聴取の結果がその見直しの内容に反映されなくても構わないとの意味であるのか政府の見解如何。

六 過去に遡り、閣議決定において実施することとされた規制改革のうち、関係団体から聴取した意見の大勢が当該規制改革に否定的であるとの理由により、当該規制改革の実施に踏み切れなかった事例があれば示されたい。

七 厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では薬局の二十四時間対応が求められており、薬剤師が薬局に二十四時間常駐することが前提となっていると理解する。また、厚生労働省が推進している健康サポート薬局制度においては、健康サポート薬局である旨を表示するためには、所定の研修を修了し、一定の実務経験を有する薬剤師が常駐する必要がある。このように、薬剤師の薬局への二十四時間常駐を推進し、また、薬剤師という専門職能の間であっても研修の修了や実務経験の有無について厳しく問うている厚生労働省が、薬局の管理者である薬剤師の常駐義務を解くかのような本規制改革を推進するのは理解に苦しむところであるが、本規制改革は、将来的に、薬局における薬剤師常駐義務をすべて撤廃することを念頭に置いたものであるのか政府の見解如何。

八 前記ヒアリングでは、店舗販売業と薬局の二重申請についても議論があったと聞くが、そもそも論として、薬局を開設したいのであれば、事業者は薬剤師を常駐させる努力をするべきである。店舗販売業と薬局が併設された店舗で、薬剤師の配置ができないことを理由に、薬局として許可を受けた区画を閉鎖して、医薬品販売を続ける場合、その店舗は、薬剤師の薬局への二十四時間常駐を前提とした「患者のための薬局ビジョン」が目指す姿とは大きくかけ離れている。このような「薬局」を存立させる「二重申請」を認めていることは、薬事行政における大きな矛盾である。「患者のための薬局ビジョン」に鑑みれば、薬局の開設には、当然に薬剤師を配置する責任を全うする覚悟が必要であり、その覚悟がなければ、薬局の二十四時間対応は可能とならない。こうした覚悟がない事業者は、店舗販売業のみの許可で十分であると考えられる。また、「患者のための薬局ビジョン」では、薬局において一般用医薬品を販売するよう求めており、健康サポート薬局においても一般用医薬品を販売することとされている。さらに、我が国における薬局数は五万軒を超え、全国の小学校数の倍以上の数の薬局が設立されている。このように、店舗販売業を担う事業者に対してあえて薬局の開設許可を与える必要性はもはや失われつつあると推測するが、前記二重申請の今後あり方について、店舗販売業の許可が必要とされた過去の経緯を踏まえながら、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。