質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第五一号

復興資金流用問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年三月十日

又市 征治   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   復興資金流用問題に関する質問主意書

 山本太郎参議院議員が第百九十二回国会に提出した「環境省による復興資金流用に関する質問主意書」(第百九十二回国会質問第四三号)に対する答弁(内閣参質一九二第四三号。以下「答弁書」という。)等について、以下の通り質問する。

一 復興財源の未使用予算額と使用予定

 答弁書の一についてに示された、東日本大震災復旧・復興関係経費の平成二十二年度から平成二十七年度までの歳出予算額及び予備費使用額の合計額の累計は約三十三兆三千八百二十六億円、同じく支出済歳出額の累計は約二十七兆六千六百六十九億円となり、前者から後者を控除した未使用予算額は約五兆七千百五十七億円となる。この未使用予算額の内訳と今後の使用予定を明らかにされたい。

二 災害廃棄物等処理費の未使用金額の内訳と今後の処理

 答弁書の一についてに示された、東日本大震災の被災市町村における災害廃棄物及び津波堆積物(以下「災害廃棄物等」という。)の処理に要した費用に対し支出された災害等廃棄物処理事業費補助金、災害等廃棄物処理促進費補助金及び災害等廃棄物処理事業費の平成二十三年度から平成二十七年度までの歳出予算額の合計額の累計は約一兆二千四百二億円、同じく支出済歳出額の合計額の累計は約一兆千五十六億円となり、前者から後者を控除した未使用金額は、約千三百四十六億円となる。
 災害廃棄物等の処理はすでに終了していると考えられるが、この未使用金額の内訳、今後の使用予定を明らかにされたい。

三 被災三県の災害廃棄物等処理費用

 答弁書の二についてでは、災害廃棄物等の処理に要した費用についての岩手県、宮城県及び福島県(以下「被災三県」という。)の平成二十三年度から平成二十七年度までの支出済歳出額の合計額が示され、その合算額は約一兆六百二十三億円となるが、この金額と前記二の支出済歳出額の合計額を累計した約一兆千五十六億円との差額である約四百三十三億円は、なぜ生じているのか。この差額は、被災三県以外の都道府県における災害廃棄物等の処理に要した費用であると解釈してよいのか。仮にその費用であるならばその都道府県名とその都道府県に対する支出額を明示されたい。

四 災害廃棄物等の処理に要する予算の積算根拠

 答弁書の二についてには、「災害等廃棄物処理事業費補助金及び災害等廃棄物処理促進費補助金に係る予算額については、(中略)災害廃棄物等の発生量に過去の実績等に基づく災害廃棄物等一トン当たりの処理単価を乗じることによって積算」したとある。
 会計検査院の「平成二十五年度決算検査報告」によれば、東日本大震災では、十三道県二百三十九市町村において、災害廃棄物が約二千十八万トン、津波堆積物が約千百一万トン、これらを足し合わせた災害廃棄物等が約三千百二十万トンと推計され、処理が必要とされたとある。
 平成二十三年度から平成二十七年度までの各年度において、東日本大震災の被災市町村における災害廃棄物等の処理に要した費用に対し支出された災害等廃棄物処理事業費補助金及び災害等廃棄物処理促進費補助金の歳出予算を積算するに当たって、災害廃棄物の発生量、津波堆積物の発生量をどのように推計し、またそれらの一トン当たりの処理単価を定めるに当たって過去の実績をどのように評価したのか明らかにされたい。
 また、阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震における災害廃棄物等の処理の実績は、東日本大震災における災害廃棄物等一トン当たりの処理単価の積算根拠に含まれているのか、阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震における災害廃棄物等一トン当たり処理単価はそれぞれいくらだったのか明らかにされたい。

五 宮城県及び岩手県の災害廃棄物等の処理量の推移と処理費用の関係

 宮城県及び岩手県において、処理が必要とされる災害廃棄物等の量は、実際に処理を進めるに伴って当初の推計量から下方修正されてきた。平成二十三年度から年度を経るごとにどのように減ってきたのか、政府の見解を示されたい。
 一方、宮城県及び岩手県における災害廃棄物等の処理のための予算は、答弁書の一について及び二についてを踏まえると、ほぼ使い尽くされていると言える。
 災害廃棄物等の処理に要する費用は、災害廃棄物等の処理量に処理単価を乗じて算出されるため、災害廃棄物等の処理量が減れば災害廃棄物等の処理に要する費用も減るはずであるが、なぜ宮城県及び岩手県においては、災害廃棄物等の処理のための予算をほぼ使い尽くすような事態となっているのか、政府の見解を明らかにされたい。

六 市町村間の災害廃棄物等一トン当たりの処理費用の大幅な差異

 前記質問主意書の質問四では、宮城県及び岩手県の各市町村における災害廃棄物等一トン当たりの処理費用について、最小の一万九千円から最大の六万四千円まで約三倍もの開きがある理由等を尋ねている。これに対して、答弁書では「災害廃棄物等の処理に係る事業費は、災害廃棄物等の発生状況やその状態等によって異なるため、各市町村における事業費を災害廃棄物等の処理量で単純に除した数値にはおのずと差異が生じるものである。」と答えている。
 災害廃棄物等の一トン当たりの処理費用の地域差は、通常、日本全国で数パーセントから数十パーセントであるのが一般的と考えるが、同じ時期、同じ地域で、災害廃棄物等の一トン当たりの処理費用に三倍もの開きが生じていることについて、政府は不自然であるという認識を持たないのか明らかにされたい。また、災害廃棄物等の一トン当たりの処理費用が、同じ時期、同じ地域にある市町村間において、最低額と最高額で三倍前後の開きが生じた事例は過去に存在するのか。存在するのであれば、どのような事例があり、その事例における災害廃棄物等の一トン当たりの処理費用の最低額と最高額の差額を明らかにされたい。

七 災害廃棄物等の処理の作業工程、国の補助金の支払い方法と金額

1 被災市町村ごとに処理しなければならない災害廃棄物等は、①被災市町村の中で分散している災害廃棄物等を当該被災市町村の一次集積所に集め、②それらを第二次集積所に運び、可燃ごみ、不燃ごみ、資源物などに分別し、③可燃ごみの焼却や、不燃ごみの破砕等により減容化を図り、④焼却灰や不燃ごみの埋め立て処分と資源物の再生利用を図る、という作業工程が基本であると理解してよいか、政府の見解を示されたい。
2 前記1において、基本的には、①は被災市町村が行い、②は被災市町村が県に処理を依頼し、③と④は県で処理できるところは県が行い、処理できないところは、県外市町村に広域処理委託するという流れであると理解してよいか、政府の見解を示されたい。また、この理解とは異なる流れで災害廃棄物等を処理した事例があれば明らかにされたい。
3 災害廃棄物等の処理に係る国の補助金は、被災市町村における災害廃棄物等の処理量と処理費用に応じて、すべて被災市町村に交付され、その中から被災市町村が県や県外市町村に対して災害廃棄物等の処理委託費用を支払うという流れであると理解してよいか、政府の見解を示されたい。また、広域処理に係る災害廃棄物等を受け入れたもしくは受け入れる県や県外市町村に対して、被災市町村を通さず、国から直接、処理委託費用に相当する額を補助する事例があれば明らかにされたい。
4 宮城県及び岩手県の被災市町村ごとに、前記1の①から④の作業工程の処理における「国が被災市町村に交付した補助金額」、「被災市町村が県に支払った災害廃棄物等の処理委託費用」、「被災市町村が県外市町村に支払った災害廃棄物等の処理委託費用」の金額をそれぞれ明らかにされたい。

八 十五事業主体に対する交付金と交付税

 会計検査院の「平成二十四年度決算検査報告」の「第7 東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」の表十二には、東日本大震災からの復旧・復興予算から循環型社会形成推進交付金(以下「交付金」という。)の交付を受け、広域処理に係る災害廃棄物の受入れが可能と考えられる廃棄物処理施設を整備中又は整備した十五事業主体(以下「十五事業主体」という。)が示されている。
1 十五事業主体が受け入れたもしくは受け入れる予定の災害廃棄物は、どの被災市町村から運ばれてきたものか事業主体ごとに明らかにされたい。
2 十五事業主体の各事業主体に当初運ばれる予定であった災害廃棄物の量と、その事業主体で実際に処理された災害廃棄物の量をそれぞれ明らかにされたい。
3 十五事業主体に交付された交付金と震災復興特別交付税(以下「交付税」という。)は、それぞれ環境省と総務省から支給されたのか明らかにされたい。
4 十五事業主体に対して交付された交付金と交付税を事業主体ごとに合算した額を、その事業主体が処理した広域処理に係る災害廃棄物の量で除して得た一トン当たりの処理費用を、事業主体ごとにそれぞれ明らかにされたい。

九 十五事業主体に交付された交付金と交付税の算定根拠

 十五事業主体に対する交付金と交付税は、何を基準として算定したのか明らかにされたい。災害廃棄物の処理量を基準として算定していない場合は、他の基準を用いることとした法律上の根拠を明示されたい。

十 十五事業主体に対する交付金と交付税の財源と法令上の根拠等

1 災害廃棄物の処理のため、復旧・復興予算から十五事業主体の廃棄物処理施設等の整備費に交付金及び交付税を支給することとした法律上の根拠を明示されたい。
2 交付金と交付税は、国の予算上、災害廃棄物処理費に計上されているのか、それ以外の費目として計上されているのか明らかにされたい。

十一 十五事業主体に対する交付金と交付税の効果

1 会計検査院の「平成二十四年度決算検査報告」の「第7 東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」の「本院の所見」では、復興・復旧予算から交付された交付金について「広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない状況となっていた」とされている。この会計検査院の所見に関し、政府としては、交付金の政策的効果をどのように評価しているか明らかにされたい。
2 前記1の「本院の所見」では、「環境省においては、同交付金の交付が広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのか交付方針の内容も含めて検証するとともに、その検証結果を今後の復興関連事業の実施に当たって活用する必要があると認められる」とされているが、環境省はその検証を行ったのか、またどのように行ったのか明らかにされたい。

  右質問する。