質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第四〇号

「テロ等準備罪」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年二月二十四日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「テロ等準備罪」に関する質問主意書

 「共謀罪」と同じ趣旨で、政府が創設を検討しているとされる「テロ等準備罪」について、以下の通り質問する。

一 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「TOC条約」という。)を締結するには、「テロ等準備罪」の法制化が必要であると政府は説明している。国際連合はTOC条約を締結するための「立法ガイド」(Legislative Guide for the United Nations Convention against Transnational Organized Crime and the Protocols thereto)を公表し、「重大な犯罪」について未遂より前の段階で処罰できるようにすればよい旨記述している。政府は「立法ガイド」のこの記述についてどのような所見をもっているか。

二 TOC条約を締約するにあたって共謀罪を設けた国家は二箇国のみとされている。政府は、包括的な「共謀罪」又は「テロ等準備罪」を法制化することがTOC条約を締結するための唯一の選択肢であると解釈しているのか、明らかにされたい。
 また、前記一の「立法ガイド」に照らすと、TOC条約により対策が必要とされる「重大な犯罪」のうち、現行の国内法には予備罪・準備罪が規定されていないものについて、個別に法改正する等の対応を行えば、TOC条約を締結するための要件を満たすことができるのではないか、政府の見解を問う。

三 政府はTOC条約を締結するためには「長期四年以上の自由を剥奪する刑を科すことができる犯罪」全てを対象とすることが必要であり、対象犯罪を更に限定することはできない旨説明してきた。今回、政府は「テロ等準備罪」の対象を組織的犯罪と関連の深い二百七十七の犯罪に限定した法案を提出することを検討している旨の報道がされているが、対象犯罪を更に限定することはできないとしてきた今までの政府の説明とどのように整合性を取るのか、明らかにされたい。

四 既遂行為を処罰するのが日本の刑罰法体系の基本原則であり、「未遂」は特に法律で定められた場合のみ処罰される例外的なものとされ、「未遂」より前の段階である「予備」、「共謀」、「陰謀」は、「未遂」よりさらに例外的に、重大な犯罪に限って処罰する規定が設けられているのが現状である。
 このような現状の刑罰法体系において、包括的な「テロ等準備罪」を法制化した場合、「テロ等準備罪」の対象となる犯罪について、実行着手前の「共謀」(計画)は罰するのに、実行着手後の「未遂」は罰しないという不均衡が生じる場合もあるのではないか。そのような不均衡が生じる場合があることをどのように考えているか。

五 「テロ等準備罪」の対象を二百七十七の犯罪に限定したとしても、直接テロの手段となり得るとされる百六十七の犯罪以外の犯罪も「テロ等準備罪」の対象となることについて、政府は「テロ対策のための立法」という説明と矛盾しないと考えているのか、明らかにされたい。

  右質問する。