質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九九号

内閣参質一九二第九九号
  平成二十八年十二月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員小西洋之君提出横畠内閣法制局長官の平成二十六年五月三十日の時点における昭和四十七年政府見解の理解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出横畠内閣法制局長官の平成二十六年五月三十日の時点における昭和四十七年政府見解の理解に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 憲法第九条の下において「武力の行使」の三要件を満たす場合の限定的な集団的自衛権の行使が許されるという考え方は、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定。以下「平成二十六年七月一日閣議決定」という。)でお示ししたものであり、それ以前の御指摘の平成二十六年五月三十日の衆議院外務委員会における横畠内閣法制局長官の答弁は、その当時の政府の憲法の解釈について述べたものである。

三について

 御指摘の「昭和四十七年政府見解」(以下「昭和四十七年政府見解」という。)は、「基本的な論理」、すなわち、①「憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであつて、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」の部分及び②「しかしながら、だからといつて、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであつて、それは、あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである。」の部分と、これに当てはまる場合は我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという当時の事実認識の下での「結論」、すなわち、③「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行なうことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであつて、したがつて、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」の部分から構成されているものであるが、この「基本的な論理」については、平成二十六年七月一日閣議決定において「この基本的な論理は、憲法第九条の下では今後とも維持されなければならない。」と明記されているとおり、現に維持しており、その上で、その「結論」については、平成二十六年七月一日閣議決定において、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみがこの「基本的な論理」に当てはまるとしてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとし、「武力の行使」の三要件を満たす場合の限定的な集団的自衛権の行使が許されるとして、その一部を変更したものである。

四について

 お尋ねの「気付いた」及び「気付きに至った」の意味するところが必ずしも明らかではないが、三についてで述べた昭和四十七年政府見解の構成についての横畠内閣法制局長官の認識は、従前からのものである。