質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五六号

内閣参質一九二第五六号
  平成二十八年十二月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員吉川沙織君提出女性の就労を妨げる壁に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉川沙織君提出女性の就労を妨げる壁に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「被扶養配偶者数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、健康保険法(大正十一年法律第七十号)若しくは船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)の被保険者、私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の加入者又は国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)若しくは地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)の組合員(以下「医療保険の被保険者等」という。)の被扶養者であって、医療保険の被保険者等の配偶者であるものについて、①直近、②直近から十年前、③直近から二十年前、④直近から三十年前の人数を全国健康保険協会管掌健康保険(平成二十年九月三十日以前においては政府管掌健康保険。以下同じ。)、組合管掌健康保険、船員保険及び私立学校教職員共済制度の別にお示しすると次のとおりである。なお、国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合についての当該人数は把握していない。
 全国健康保険協会管掌健康保険 ①平成二十七年十月一日現在 約五百七万人 ②平成十七年十月一日現在 約五百三十五万人 ③平成七年十月一日現在 約五百六十四万人 ④昭和六十年十月一日現在 約五百五万人
 組合管掌健康保険 ①平成二十七年十月一日現在 約四百八十万人 ②平成十七年十月一日現在 約五百四十九万人 ③平成七年十月一日現在 約六百五万人 ④昭和六十年十月一日現在 約五百六十万人
 船員保険 ①平成二十七年十月一日現在 約三万人 ②平成十七年九月末現在 約四万人 ③平成七年九月末現在 約七万人 ④昭和六十年九月末現在 約十二万人
 私立学校教職員共済制度 ①平成二十七年度末現在 約十二万人 ②平成十七年度末現在 約十三万人 ③平成七年度末現在 約十三万人 ④昭和六十年度末現在 約十一万人
 お尋ねの「年金保険における被扶養者制度」について、国民年金の第三号被保険者の人数は、直近の平成二十六年度末現在で約九百三十二万人、直近から十年前の平成十六年度末現在で約千九十九万人、直近から二十年前の平成六年度末現在で約千二百十九万人となっている。なお、国民年金の第三号被保険者の制度は昭和六十一年度に施行されているため、直近から三十年前の当該人数をお示しすることはできない。

二について

 御指摘の「保険料分の負担」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国民年金の第三号被保険者については、保険料を徴収していないが、その基礎年金の給付に要する費用を被用者年金制度全体で負担することとしている。

三について

 配偶者控除の適用者の人数及び所得税の減収見込額は平成二十八年度予算ベースで、それぞれ千五百万人程度、〇・六兆円程度である。
 十年前の平成十八年、二十年前の平成八年、三十年前の昭和六十一年の配偶者控除の適用者の人数については、市町村税課税状況等の調等に基づき、一定の前提を置いて試算すると、それぞれ千七百万人程度、千六百万人程度、千六百万人程度と見込まれる。また、所得税の減収見込額については、それぞれ〇・七兆円程度、〇・七兆円程度、〇・六兆円程度と見込まれる。

四について

 お尋ねの試算の前提が明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、「平成二十九年度税制改正の大綱」(平成二十八年十二月二十二日閣議決定)において、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しを行うこととしており、この見直しにより負担減となる対象者の人数は三百万人程度、負担増となる対象者の人数は百万人程度と見込んでいる。また、この見直しによる増減収見込額の計算においては、平年度において、所得税は三百九十億円程度の増収、個人住民税は四百二十三億円程度の減収と見込んでおり、国・地方を通じておおむね税収中立となっている。

五について

 お尋ねの女性の雇用形態別の数値目標は定めていない。なお、パートタイム労働等の非正規雇用は、多様な就業ニーズに応えるという積極的な意義もある一方、男性に比べ女性の方が雇用者に占める非正規雇用の割合が高いことが女性が貧困に陥りやすい背景の一つとなっているほか、正社員と非正規雇用労働者の間の格差が男女間の格差の一因になっているとの指摘もあることから、政府としては、「第四次男女共同参画基本計画」(平成二十七年十二月二十五日閣議決定)等に基づき、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員への転換に向けた取組を実施し、全ての女性労働者の活躍の推進を図ってまいりたい。

六について

 労働者の中には、社会保険料負担を回避するために、医療保険の被保険者等の被扶養者及び厚生年金保険の被扶養配偶者となることを選択する者もいることは承知している。

七について

 政府税制調査会が平成二十八年十一月に取りまとめた「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告」においては、お尋ねのような配偶者控除と就業調整との関連について、「配偶者特別控除の導入により、配偶者の給与収入が百三万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みとなっており、税制上、いわゆる「百三万円の壁」は解消している。他方で、配偶者特別控除の導入後も、配偶者が就業時間を調整することにより、納税者本人に配偶者控除が適用される百三万円以内にパート収入を抑える傾向があるとの指摘がある。こうした傾向の要因として、配偶者控除に係る「百三万円」という水準が企業の配偶者手当の支給基準として援用されているためではないか、また、いわゆる「百三万円の壁」が引き続き心理的な壁として作用しているためではないか、といった指摘もなされている」とされているところである。

八について

 社会保障制度については、政府としても働きたい人が働きやすい社会保障制度としていくこととしている。社会保障審議会年金部会においても、被用者保険の適用拡大を進め、被用者として働く人については被用者保険を適用していくことを進めつつ、国民年金の第三号被保険者制度の見直しに向けた検討を段階的に進めていくことが必要と整理されており、これを踏まえ、政府としても検討してまいりたい。
 税制については、七についてでお答えした内容も踏まえ、「平成二十九年度税制改正の大綱」において、現在、納税者本人に所得控除額三十八万円の配偶者控除が適用されることとなる配偶者の所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第三十号ロに規定する合計所得金額(以下「合計所得金額」という。)は三十八万円(当該配偶者の収入の全額が給与収入である場合には、給与収入金額が百三万円)以下とされているところ、所得控除額三十八万円の配偶者控除又は配偶者特別控除が適用されることとなる配偶者の合計所得金額を八十五万円(当該配偶者の収入の全額が給与収入である場合には、給与収入金額が百五十万円)以下に引き上げる等の見直しを行うこととしたものである。