質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五〇号

内閣参質一九二第五〇号
  平成二十八年十二月十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員石上俊雄君提出航空関連産業に係る政府予算と税制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出航空関連産業に係る政府予算と税制に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)及び(2)について

 御指摘の「中期的」及び「最終的」の意味するところが必ずしも明らかでないが、航空機燃料税は、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)附則第二百五十九条の五第一項の規定に基づき、空港の緊急な整備等に資するため、自動車安全特別会計空港整備勘定(以下「空整勘定」という。)へ繰り入れられており、現時点において、直ちに廃止等を行う状況にないと考えている。
 また、平成二十三年度から、航空機燃料税の税率を、航空機燃料一キロリットルにつき二万六千円から一万八千円へ軽減する等の租税特別措置を講じているところであり、当該措置の平成二十九年度以降の取扱いについては、現在政府内で検討中である。

一の1の(3)について

 滑走路の運営に関する事業等の航空系事業と空港ターミナルビルの運営に関する事業等の非航空系事業を民間企業に一体的に経営させる空港経営改革(以下「経営改革」という。)を推進することは、空整勘定の歳出のうち、経営改革を行った空港に係る運営費に充てるものの削減に資するものと考えている。政府としては、国管理空港(民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律(平成二十五年法律第六十七号。以下「民活空港法」という。)第二条第一項に規定する国管理空港をいう。以下同じ。)について、経営改革を進めているところである。

一の2について

 御指摘の「航空機騒音対策等」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、お尋ねの「航空機燃料譲与税」については、航空機燃料譲与税法(昭和四十七年法律第十三号)第一条第二項に規定する空港関係市町村及び空港関係都道府県(以下「空港関係市町村等」という。)が、航空機の騒音により生ずる障害の防止、空港及びその周辺の整備等(以下「騒音障害の防止等」という。)を行うために必要な財源であり、各空港関係市町村等に対し、着陸料の収入額又は航空機騒音が特に著しい地区内の世帯数に按分して譲与しているところである。引き続き、空港関係市町村等における騒音障害の防止等の措置は必要であり、現時点において、航空機燃料譲与税の総額を減らし、又は譲与の基準を見直す状況にないと考えている。
 また、お尋ねの「空港経営改革等により捻出される空港毎の収益と併せて、航空機騒音対策等に係る財源の在り方を抜本的に見直す」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、国は、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和四十二年法律第百十号)第二条に規定する特定飛行場において、同法に基づく航空機騒音対策事業(以下「航空機騒音対策事業」という。)を、空整勘定の歳出により、実施しているところ、国管理空港運営権者(民活空港法第四条第二項に規定する国管理空港運営権者をいう。)は、着陸料等を自らの収入として収受して、航空機騒音対策を空港運営と一体的に実施することを基本としており、民活空港法第二条第五項に規定する国管理空港特定運営事業(以下「運営事業」という。)が実施される空港のうち、当該運営事業に航空機騒音対策事業が含まれる空港については、空整勘定の歳出のうち、航空機騒音対策事業に要する費用に充てるものの削減に資するものと考えている。

二について

 御指摘の「航空事業者任せの対応」、「航空保安に係る費用は、航空事業者の経営状態に影響を受ける可能性がある費用とは切り離して確保されるべき」及び「航空保安に係る政府の責任と旅客・荷主の責任を法律上明確化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、空港の保安検査については、従来から旅客や貨物を安全に輸送する責務を有する航空運送事業者が一義的な責任を持って実施しており、政府としても、航空保安の重要性に鑑み、国際情勢を踏まえつつ、航空運送事業者が事業計画に記載すべき航空機強取等防止措置の内容に関する基準を不断に見直すとともに、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)に基づき、航空運送事業者に対し、当該基準に基づいて作成された事業計画に従って空港の保安検査を適切に実施するよう指導等を行っている。
 また、航空機を利用する旅客及び荷主に関しては、ハイジャック防止を目的として、航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)が定められているとともに、ハイジャック以外の民間航空の安全に対する不法な行為の防止を目的として、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和四十九年法律第八十七号)が定められており、ハイジャックや航空機に対する破壊行為等が禁止されている。
 定期便が就航する空港においては、検査機器の整備費及び検査員の人件費の二分の一について、空港管理者等が予算の範囲内で航空運送事業者に対し、毎年補助等を行っている。また、国際テロの脅威が高まる中で、航空保安対策の強化を速やかに進めることが喫緊の課題となっていることから、先進的な保安検査機器の導入を促進することとしており、平成二十八年度当初予算においては、ボディスキャナーの整備費用について、従来の空港管理者等による航空運送事業者への二分の一の補助に加え、国が新たに航空運送事業者に二分の一の補助を行うこととしている。一方で、ボディスキャナーを含めた検査機器の維持費用については、現時点で、国による補助の対象とする必要があるとは認識しておらず、また、御指摘の「航空保安に係る費用」について、国が一般財源から全額支出すべきとは考えていない。

三の1について

 政府としては、「明日の日本を支える観光ビジョン」(平成二十八年三月三十日明日の日本を支える観光ビジョン構想会議決定)における、訪日外国人旅行者数について平成三十二年に四千万人、平成四十二年に六千万人を目指すという目標を達成するという観点のほか、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会、更にはその先を見据え、我が国の国際競争力の強化、地域活性化等の観点から、首都圏空港(成田国際空港及び東京国際空港(以下「羽田空港」という。)をいう。以下同じ。)の容量の拡大を含む機能強化が必要不可欠であると考えており、同大会の開催までに、羽田空港における飛行経路の見直し等により首都圏空港の容量を約八万回拡大することを目指しているところである。

三の2について

 政府としては、首都圏空港の機能強化のため、羽田空港における飛行経路を見直すこと等が必要であり、当該見直しに当たっては、新たな飛行経路案(以下「新経路案」という。)について、関係地域の地方公共団体及び住民の方々の幅広い理解を得ることが重要であると認識している。そのため、新経路案について、平成二十七年七月から平成二十八年一月にかけて延べ九十五日間、関係地域の延べ三十四会場で住民説明会を開催し、約一万千名の方に参加いただくなど、丁寧な情報提供を行ってきたところである。また、同年七月二十八日に開催された国土交通省、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県等により構成される首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会において、羽田空港の機能強化に必要となる施設整備に係る工事費及び環境対策費についての予算措置を国が行うことについて関係地方公共団体の理解を得たところである。今後、羽田空港における飛行経路の見直しに必要となる施設整備及び環境対策を着実に進めていくとともに、引き続き、新経路案について関係地域で住民説明会を開催するなど、関係地域の住民の方々に丁寧な情報提供を行い、幅広い理解を深めていくことに努め、関係地方公共団体とも協力しながら、首都圏空港の機能強化に向けた取組を着実に進めてまいりたい。

三の3について

 観光先進国の実現や地方創生のためには、首都圏空港以外の空港も重要であると認識しており、地方路線の維持のために地域の協議会が行うモデル的な取組の効果を普及させるための実証調査や、国際線の誘致を行う地方公共団体の取組を支援するための国管理空港等における着陸料の軽減措置を講じている。

三の4について

 政府としては、空港における訪日外国人旅行者の受入体制を強化することが重要であると認識している。このため、出入国手続に必要な人的体制の充実、新しい技術を活用した機器の導入、必要な空港施設の拡充等の取組を行っているところであり、今後とも、各空港において、関係省庁が連携して適切に対応してまいりたい。

三の5について

 政府としては、空港利用者の利便を向上させることが重要であると認識している。このため、羽田空港と都心部の駅等とを結ぶ深夜早朝時間帯のアクセスバスの運行を推進するなど空港アクセスの改善に向けた取組を行うとともに、空港ターミナルビルにおける多言語対応等を推進しているところであり、今後とも、必要な取組を進めてまいりたい。

四の1について

 「国際連帯税」については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第七条第七号において「国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること」とされていることも踏まえ、御指摘の点を含め、国内外の議論の動向を踏まえつつ、関係者の理解を得ながら検討を進めてまいりたい。

四の2について

 御指摘の「国際連帯」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世界の開発需要に対応するため、国際連帯税の検討については、今後とも、国内外の議論の動向を踏まえつつ、関係者の理解を得ながら進めてまいりたい。

四の3及び4について

 国際連帯税の課税の方法については、必ずしも航空券連帯税に特定しているわけではなく、今後とも、国内外の議論の動向も踏まえつつ、関係者の理解を得ながら検討を進めてまいりたい。

五の1について

 平成二十八年五月十三日に閣議決定した「地球温暖化対策計画」を踏まえ、航空部門においては、エネルギー効率の良い航空機材の導入や航空機燃料の使用を抑制するための空港設備の導入等、航空関連事業者により必要な取組が行われているほか、政府においては、当該設備の利用の促進や導入の支援、航空交通システムの高度化、代替航空燃料の普及等の施策を着実に推進している。

五の2について

 航空機燃料を国内定期航空運送事業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置については、平成二十八年度末に適用期限が到来することを踏まえ、その取扱いについて、今後、政府内において、政策の合理性、政策手段としての有効性等について総合的に検討した上で、結論を得ることとしている。