質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四五号

内閣参質一九二第四五号
  平成二十八年十二月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員山本太郎君提出体罰や懲戒の定義と体罰等を行う悪質な各種教育団体等への対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出体罰や懲戒の定義と体罰等を行う悪質な各種教育団体等への対応に関する質問に対する答弁書

一の1について

 民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十二条の「監護」とは、親権者が子を監督保護することをいい、同条の「懲戒」とは、親権者が非行や過誤があった子を指導するために懲らしめ戒めることをいうと解されている。

一の2について

 民法第八百二十二条は、子の監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる旨規定しているところ、児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号。以下「児童虐待防止法」という。)第二条に規定する児童虐待は、子の利益のため子の監護及び教育に必要な範囲内で行われる行為ではないため、民法第八百二十二条の規定による懲戒には含まれない。
 また、お尋ねの「児童虐待の定義と現状」の「児童虐待の定義」に掲げられた行為は、児童虐待防止法第二条に規定する「児童虐待」に該当し得る行為を例示したものであるところ、当該行為が、子の利益のため子の監護及び教育に必要な範囲内で行われたものでない場合は、当該行為は、民法第八百二十二条の規定による懲戒には含まれないと考えられる。

一の3について

 御指摘の児童の権利に関する委員会の一般的意見において、体罰に当たる行為が例示されていることは承知している。
 しかしながら、ある行為が民法第八百二十二条の規定による懲戒に含まれるかは、それが子の利益のため子の監護及び教育に必要な範囲内で行われたか否かによって判断すべきものであり、その範囲内で行われたか否かについては、様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する必要がある。また、ある行為が児童虐待防止法第二条に規定する児童虐待に当たるか否かについては、児童及び保護者の状況、生活環境等を総合的に考慮して個別具体的に判断する必要がある。
 したがって、お尋ねの「例示されている事項」が「民法第八百二十二条の「懲戒」には該当せず、児童虐待防止法第二条で定義された「児童虐待」に当たり、我が国でも法律により禁止されている」かについて一概にお答えすることは困難である。

一の4について

 お尋ねの「体罰」及び「心理的虐待」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、ある行為が民法第八百二十二条の規定による懲戒に含まれるかは、それが子の利益のため子の監護及び教育に必要な範囲内で行われたか否かによって判断すべきものであるため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

一の5について

 文部科学省においては、「養護教諭のための児童虐待対応の手引」(平成十九年十月文部科学省作成)等において、児童虐待の例示として、児童虐待防止法第二条第四号に掲げる「児童に対する著しい暴言」等の「著しい心理的外傷を与える言動」を記載しているところである。
 お尋ねの「当然学校でも禁止されている」の意味するところが必ずしも明らかではないため、「「心理的虐待」は当然学校でも禁止されていると理解してよいか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。

一の6について

 お尋ねの「学校の手続き」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「同聴取又は聴聞においては・・・児童生徒の意見が考慮される」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、例えば、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十五条第二項は、市町村の教育委員会は、児童の出席停止を命ずる場合には、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない旨規定しており、各教育委員会において適切に対応しているものと考えている。

一の7について

 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条の暴行罪の「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいうと解されているが、犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であるため、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。

一の8について

 児童虐待防止法第三条は、本来保護すべき児童に対して何人も虐待行為をすることは許されないという基本理念を規定したものであり、全ての自然人を対象としている。
 また、お尋ねの「児童虐待の定義と現状」の「児童虐待の定義」に掲げられた行為は、児童虐待防止法第二条に規定する「児童虐待」に該当し得る行為を例示したものであるが、児童虐待防止法第三条の「虐待」とは、児童虐待防止法第二条で定義されている保護者による児童虐待のみならず、幅広く児童の福祉を害する行為や不作為を含むものであり、児童虐待防止法第三条の「虐待」に該当するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断すべきものであることから、「「児童虐待の定義と現状」に掲げられた虐待は当然すべて禁止される」かとのお尋ねについては、一概にお答えすることは困難である。

一の9について

 不登校児童生徒に対する支援として学級替えや転校を柔軟に認める場合は、児童生徒と保護者双方の意向を尊重することが当該支援を効果的なものとするために必要不可欠であり、児童生徒と保護者のどちらの意向を優先するのかを一概に判断することは困難である。
 また、御指摘の「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成二十八年九月十四日付け二十八文科初第七百七十号文部科学省初等中等教育局長通知。以下「支援通知」という。)は、お尋ねの「体罰をした者に教育的指導や異動、懲戒などを行うよりも、まずは被害を受けた子どもが第一にクラスを替えたり、転校したりしなければならないという意味も含む通知」ではない。

一の10について

 御指摘の支援通知は、教員による体罰や暴言等、不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合の学級替えや転校については、「保護者等の意向を踏まえ、十分な教育的配慮の上で・・・認めていくことが望まれる」と明記しており、児童生徒や保護者の意思に反して「クラス替えや転校を強いる」ものではないことは明らかであることから、「同通知の趣旨は言葉足らずで、真意が伝わりにくい」との御指摘は当たらず、支援通知の内容を「平易な言葉に改める」ことは考えていない。
 お尋ねの「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の「いじめの定義」は、いじめの防止等の対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とするいじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)第二条第一項に規定する「いじめ」の定義、すなわち「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」という定義をほぼそのまま用いており、明確であると考えている。
 同調査の結果において、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校における児童生徒千人当たりのいじめの認知件数は各都道府県間のみならず各学校間においても大きな差異があるところ、この差異の原因については、各教員においていじめの認知に向けた取組状況が異なること等の様々な要因が考えられることから、お尋ねの各都道府県間の「数値」の「極端な格差」の原因について一概にお答えすることは困難である。
 文部科学省においては、各都道府県教育委員会等に対して発出する通知について、各都道府県教育委員会等において正しく理解することができる内容となるよう努めているところであり、今後、御指摘のような「今後の体罰に関する通知等」を発出する場合にも、そのようなものになるよう努めてまいりたい。

二について

 お尋ねの「保護者」及び「懲戒権を委任する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、親権者が民法第八百二十二条の規定による懲戒を第三者に委任することの可否及び「どのような手続きで、どのような懲戒の委任が許されるのか」は、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであることから、一概にお答えすることは困難である。

三について

 お尋ねの「子どもへの虐待や懲戒権の乱用を防ぐ法律や条文」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

四の1について

 お尋ねの「権利侵害」及び「法律を根拠とした救済措置」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、例えば、学校教育法第十一条ただし書において、「体罰を加えることはできない」と規定されており、文部科学省としては、各都道府県教育委員会等に対して発出した「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成二十五年三月十三日付け二十四文科初第千二百六十九号文部科学省初等中等教育局長及びスポーツ・青少年局長連名通知。以下「体罰禁止通知」という。)において、「体罰を把握した場合、校長は直ちに体罰を行った教員等を指導し、再発防止策を講じるとともに、教育委員会へ報告することが必要である」としているところである。

四の2及び五の2について

 お尋ねの「団体」の形態にかかわらず、都道府県知事又は指定都市の長若しくは中核市の長若しくは児童相談所設置市の長は、障害児通所支援事業等(障害児通所支援事業又は障害児相談支援事業をいう。)、児童自立生活援助事業若しくは小規模住居型児童養育事業又は病児保育事業を行う者が、その事業に係る児童の処遇につき不当な行為をしたときは、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十四条の六又は第三十四条の十八の二第三項の規定により、一時預かり事業を行う者が、その事業に係る乳児又は幼児の処遇につき不当な行為をしたときは、同法第三十四条の十四第四項の規定により、その者に対し、その事業の制限又は停止を命ずることができるとされている。また、市町村長は、放課後児童健全育成事業を行う者が、その事業に係る児童の処遇につき不当な行為をしたときは、同法第三十四条の八の三第四項の規定により、その者に対し、その事業の制限又は停止を命ずることができるとされており、家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業をいう。)が、同法第三十四条の十六第一項の基準に適合せず、かつ、児童福祉に著しく有害であると認められるときは、同法第三十四条の十七第四項の規定により、その事業を行う者に対し、その事業の制限又は停止を命ずることができるとされている。さらに、都道府県知事又は指定都市の長若しくは中核市の長若しくは児童相談所設置市の長は、児童福祉施設の運営が同法第四十五条第一項の基準に達せず、かつ、児童福祉に著しく有害であると認められるときは、同法第四十六条第四項の規定により、その施設の設置者に対し、その事業の停止を命ずることができるとされている。加えて、都道府県知事又は指定都市の長若しくは中核市の長若しくは児童相談所設置市の長は、同法第五十九条第一項に規定する施設について、児童の福祉のため必要があると認めるときは、同条第五項の規定により、その事業の停止又は施設の閉鎖を命ずることができるとされている。
 また、お尋ねの「社団法人」、「財団法人」、「特定非営利活動法人等」及び「団体の種別を問わず、団体が命に関わる等著しく有害な業務を行っている場合は、当該団体を早急に解散させる仕組み」の意味するところが必ずしも明らかではないが、右に述べた事業の制限や停止等の措置以外にも、宗教法人、一般社団法人若しくは一般財団法人(以下「一般社団法人等」という。)、公益社団法人若しくは公益財団法人(以下「公益法人」という。)、社会福祉法人、株式会社等の会社又は特定非営利活動法人が御指摘のような「子どもに体罰や虐待等の違法行為」又は「常習的に体罰」を行った場合において、所轄省庁等が当該法人に対して講じ得ると考えられる「業務の改善や勧告、業務の停止、法人の解散などを命じる」といった措置や「行政指導をしたり、改善勧告や業務停止命令を出したりする」といった措置は、それぞれ次のとおりである。

1 当該法人が宗教法人の場合
 裁判所は、宗教法人について法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたことがあると認めたときは、宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第八十一条第一項の規定により、所轄庁(同法第五条に規定する所轄庁をいう。)、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができるとされている。
2 当該法人が一般社団法人等の場合
 裁判所は、一般社団法人等の設立が不法な目的に基づいてされた場合において、公益を確保するため一般社団法人等の存立を許すことができないと認めるときは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第二百六十一条第一項の規定により、法務大臣又は利害関係人の申立てにより、一般社団法人等の解散を命ずることができるとされている。また、裁判所は、業務執行理事(代表理事、代表理事以外の理事であって理事会の決議によって一般社団法人等の業務を執行する理事として選定されたもの及び当該一般社団法人等の業務を執行したその他の理事をいう。)が、法令若しくは定款で定める一般社団法人等の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反復して当該行為をしたときであって、公益を確保するため一般社団法人等の存立を許すことができないと認めるときは、同項の規定により、法務大臣又は利害関係人の申立てにより、一般社団法人等の解散を命ずることができるとされている。
3 当該法人が公益法人の場合
 行政庁(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第三条に規定する行政庁をいう。以下3において同じ。)は、公益法人について、法令等に違反したと疑うに足りる相当な理由がある場合には、同法第二十八条第一項の規定により、当該公益法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができるとされている。また、行政庁は、同項の勧告を受けた公益法人が、正当な理由がなく、その勧告に係る措置をとらなかったときは、同条第三項の規定により、当該公益法人に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができるとされている。さらに、行政庁は、公益法人が正当な理由がなく、同項の規定による命令に従わないときは、同法第二十九条第一項の規定により、その公益認定(同法第五条に規定する公益認定をいう。以下同じ。)を取り消さなければならないとされている。加えて、行政庁は、公益法人が法令等に違反したときは、同法第二十九条第二項の規定により、その公益認定を取り消すことができるとされている。
4 当該法人が社会福祉法人の場合
 所轄庁(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第三十条に規定する所轄庁をいう。以下4において同じ。)は、社会福祉法人が、法令等に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、同法第五十六条第四項の規定により、当該社会福祉法人に対し、期限を定めて、その改善のために必要な措置(役員の解職を除く。)をとるべき旨を勧告することができるとされている。また、所轄庁は、同項の規定による勧告を受けた社会福祉法人が、正当な理由がないのに当該勧告に係る措置をとらなかったときは、同条第六項の規定により、当該社会福祉法人に対し、期限を定めて、当該勧告に係る措置をとるべき旨を命ずることができるとされている。さらに、社会福祉法人が同項の命令に従わないときは、所轄庁は、同条第七項の規定により、当該社会福祉法人に対し、期限を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は役員の解職を勧告することができるとされている。加えて、所轄庁は、社会福祉法人が、法令等に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達することができないときは、同条第八項の規定により、解散を命ずることができるとされている。
5 当該法人が株式会社等の会社の場合
 裁判所は、会社の設立が不法な目的に基づいてされた場合において、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百二十四条第一項の規定により、法務大臣又は利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができるとされている。また、裁判所は、業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反復して当該行為をしたときであって、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、同項の規定により、法務大臣又は利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができるとされている。
 お尋ねの株式会社として設立された教育団体又は福祉団体が子供に対する著しい有害行為等を行う目的で設立された場合や設立目的を逸脱して体罰や虐待を行っていた場合に裁判所が解散を命ずることができるか否かについては、裁判所の実務運用に関わるものであり、政府としてお答えする立場にないが、一般に、裁判所は、個別具体的な事案において、法の趣旨にのっとり適切に審理、判断等を行っているものと承知している。
6 当該法人が特定非営利活動法人の場合
 所轄庁(特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第九条に規定する所轄庁をいう。以下6において同じ。)は、特定非営利活動法人が法令等に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、同法第四十二条の規定により、当該特定非営利活動法人に対し、期限を定めて、その改善のために必要な措置を採るべきことを命ずることができるとされている。また、所轄庁は、特定非営利活動法人が、同条の規定による命令に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達することができないときは、同法第四十三条第一項の規定により、当該特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができるとされている。さらに、所轄庁は、特定非営利活動法人が法令に違反した場合において、同法第四十二条の規定による命令によってはその改善を期待することができないことが明らかであり、かつ、他の方法により監督の目的を達することができないときは、同法第四十三条第二項の規定により、同法第四十二条の規定による命令を経ないでも、当該特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができるとされている。
 特定非営利活動法人が認定特定非営利活動法人又は仮認定特定非営利活動法人(以下「認定特定非営利活動法人等」という。)である場合については、所轄庁は、認定特定非営利活動法人等について、法令等に違反したと疑うに足りる相当な理由がある場合には、同法第六十五条第一項の規定により、当該認定特定非営利活動法人等に対し、期限を定めて、その改善のために必要な措置を採るべき旨の勧告をすることができるとされている。また、所轄庁以外の関係知事は、認定特定非営利活動法人等について、法令等に違反したと疑うに足りる相当な理由がある場合には、同条第二項の規定により、当該認定特定非営利活動法人等に対し、期限を定めて、当該都道府県の区域内における事業活動について、その改善のために必要な措置を採るべき旨の勧告をすることができるとされている。さらに、所轄庁又は所轄庁以外の関係知事は、同条第一項又は第二項の規定による勧告を受けた認定特定非営利活動法人等が、正当な理由がなく、その勧告に係る措置を採らなかったときは、同条第四項の規定により、当該認定特定非営利活動法人等に対し、その勧告に係る措置を採るべきことを命ずることができるとされている。加えて、所轄庁は、認定特定非営利活動法人等が正当な理由がなく、同項の規定による命令に従わないときは、同法第六十七条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により、同法第四十四条第一項の認定又は同法第五十八条第一項の仮認定を取り消さなければならないとされており、また、所轄庁は、認定特定非営利活動法人等が法令等に違反したときは、同法第六十七条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により、同法第四十四条第一項の認定又は同法第五十八条第一項の仮認定を取り消すことができるとされている。
 右に述べた各措置のほか、行政機関は、その任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言等を行うことがある。

五の1について

 お尋ねの「同スクールにおける人権侵害の事実」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、御指摘の「本年九月二十八日の放送」において「映像が放送されている」とされている「同スクールで嫌がる幼児を海に投げ込んだり、叩いたりしている」ことについては、「地元の地方自治体」に確認していない。
 また、お尋ねの「非科学的根拠を基に死者を複数出し、体罰を行うなど人権侵害に改善が見られない民間団体」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、人権侵害を行っている民間団体に対する「政府の見解と対策」については、個々の事案により異なるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

五の3について

 お尋ねについては、仮定の御質問であり、お答えすることは差し控えたい。

五の4について

 御指摘の「そのような違法行為について相談したり救済を求めたりすることのできる政府統一の相談窓口や救済機関」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、法務省の人権擁護機関は体罰等の子供をめぐる様々な人権問題について、都道府県等の児童相談所は児童虐待をはじめとする児童とその家庭の様々な問題について、学校及びその設置者は学校における体罰について、それぞれ相談に応じている。
 また、お尋ねの「違法行為を犯した団体の職員に対して再発防止教育やケアをするシステム」については、その意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

六の1について

 御指摘の報道については承知しているが、お尋ねの「事実関係」については、都道府県等の児童相談所の個別の事案への対応状況に関することであり、お答えすることは差し控えたい。
 お尋ねの「教育委員会等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、先の答弁書(平成二十八年八月十五日内閣参質一九一第九号。以下「先の答弁書」という。)九の2についてでは、教育委員会の職員が不登校の児童生徒を受け入れている民間の団体等を訪れその実態を知ること等の取組を通じて、こうした民間の団体等の質の向上が図られるものと期待している旨お答えしており、お尋ねの教育委員会の職員が訪問する対象は、御指摘の「教育や福祉にかかわるすべての種類の団体」ではなく、こうした民間の団体等であると考えている。
 お尋ねの「「子どもの自発的意思の尊重」を第一に重視して」の具体的に意味するところが明らかではないが、文部科学省としては、現時点において、こうした民間の団体等による不登校児童生徒への支援については、各団体等の自主性及び主体性の下、多様な形で行われることが望ましいと考えていることから、学校等によるお尋ねの「民間施設を評価する制度の設計」に取り組むことは考えていない。

六の2について

 平成二十八年七月に文部科学省の「フリースクール等に関する検討会議」が取りまとめた「不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について~長期に不登校となっている児童生徒への支援の充実~(審議経過報告)」において、民間団体等による自主的な取組として、相互の評価を実施すること等が示され、今後、同会議において最終的な提言がなされると承知しており、文部科学省としては、同提言を踏まえ、こうした評価を実施する際の留意事項等について検討する予定であることから、お尋ねの「協働が「子どもの最善の利益」となるよう、民間団体等による相互評価にかかるバイアスを排除し、公平な評価が行われるようにするための政府の方策」について、現時点において、お答えすることはできない。

七の1について

 文部科学省としては、学校の教員等における学校教育法第十一条の規定の理解が不十分であることが、御指摘の体罰が今なお発生している原因の一つであると考えていることから、学校における体罰の状況について実態把握を行うとともに、体罰禁止通知において各都道府県教育委員会等に対し懲戒と体罰の区別を具体の事例を示して明確にした上で体罰を禁止するよう通知する等の対策を講ずるなどしており、学校の教員等に対して同条の趣旨の周知徹底を図っているところである。

七の2について

 お尋ねの「教育委員会や文部科学省に属さない独立した第三者的機関」の意味するところが必ずしも明らかではないが、教育委員会や文部科学省に属さない機関の一例を申し上げれば、法務省の人権擁護機関において、体罰等の子供をめぐる様々な人権問題について相談に応じており、人権侵犯の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査し、その結果に基づき、事案に応じた適切な措置等を講じている。こうした相談については、法務局・地方法務局及びその支局等において面談により応じているほか、子供の人権問題専用のフリーダイヤルである「子どもの人権一一〇番」、パソコンや携帯電話からインターネットを通じて利用できる「子どもの人権SOS―eメール」及び便箋と料金受取人払の封筒が一体となっている「子どもの人権SOSミニレター」によっても応じており、相談内容については秘密を厳守することとしている。
 また、御指摘の「子どもの権利条約に基づく子どもの権利等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、右に述べた相談の利用方法や相談内容の秘密が守られること等を学校において周知することは重要であると考えている。例えば、法務省及び文部科学省から各都道府県教育委員会等に対して文書により「子どもの人権SOSミニレター」の学校での配布についての協力を依頼して、これを全国の小学生及び中学生に配布しているところである。「子どもの人権SOSミニレター」においては、相談内容について秘密を厳守する旨を記載し、さらに、「子どもの人権一一〇番」及び「子どもの人権SOS―eメール」についても紹介しており、「子どもの人権SOSミニレター」が学校で配布されることによって、相談の利用方法や相談内容の秘密が厳守されることが学校において周知されているものと考えている。

七の3について

 先の答弁書十についてでお答えしたとおり、政府としては現時点で御指摘の「オンブズパーソン」を設置する予定はない。また、御指摘の「子どもの権利条約に基づく第三者機関」及び「包括的機能を備えた人権救済機関」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法務省は、人権擁護施策推進法(平成八年法律第百二十号)第三条の規定に基づき設置された人権擁護推進審議会で平成十三年五月二十五日に取りまとめられた「人権救済制度の在り方について(答申)」、これまでになされてきた議論の状況等を踏まえ、人権救済制度の在り方について、引き続き適切に検討しているところである。
 体罰の発生件数を減少させるための施策については、七の1についてで述べた対策を講じたことにより、体罰の発生件数は近年減少傾向にあるところ、文部科学省としては、引き続き、これらの対策を長期にわたり、適切かつ確実に実施することにより、体罰の発生件数を減少させることができると考えていることから、現時点において、お尋ねの「施策の年次ごとの工程表」の作成や「実現できなかったときの対策」の検討を行う必要はないものと考えており、それらをお示しすることは差し控えたい。
 また、財務省としても、体罰防止は学校現場における重要な課題の一つと認識しており、どのような対応が効果的であるか、これまでなされてきた議論の状況も踏まえつつ、文部科学省と連携しながら検討しているところである。
 学校での体罰の防止のためには、各学校及びその設置者において教員等による懲戒と体罰の区別に関する正しい理解の徹底、体罰が行われた場合の体罰を行った教員等への指導、児童生徒等が体罰の訴えや教員等との関係の悩みを相談できる体制の整備等の取組がなされることが必要であると考えており、文部科学省としては、今後とも、こうした取組が適切に行われるよう、各都道府県教育委員会等に対し指導していくこととしている。

七の4について

 御指摘の「試算」は、財政制度等審議会財政制度分科会(平成二十八年十一月四日)において、財務省から説明資料として提出した「子供の数・クラス数の減少に伴う教職員定数の変化」(以下「本資料」という。)における今後十年間の教職員定数の試算を指しているものと考えられる。
 本資料は「平成二十九年度予算の編成等に関する建議」(平成二十八年十一月十七日財政制度等審議会建議)に向けた議論に資するためにお示ししたものであり、当該試算は、文部科学省における平成二十九年度予算の概算要求時の見積りに示された平成二十八年度から平成三十八年度までの公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和三十三年法律第百十六号。以下「義務標準法」という。)第七条第一項、第十一条第一項等の規定により算定した教職員定数並びに公立の小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)及び特別支援学校ごとに、平成二十八年度における義務標準法第三条に規定されている学級編制の標準に基づき学級編制した場合の学級の一学級当たりの義務標準法第十五条等の規定により加算した教職員定数(以下「加配定数」という。)の割合を平成二十八年度から平成三十八年度まで同一に維持するよう計算した加配定数を基に計算した結果である。
 教職員定数の在り方については、「経済・財政再生アクション・プログラム」(平成二十七年十二月二十五日閣議報告)において、「少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向、学校の課題に関する客観的データ等の学校・教育環境に関するデータ収集及び教育政策に関する実証研究の進展、地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し」を策定することとしており、当該中期見通し等を踏まえて検討してまいりたい。