第192回国会(臨時会)
答弁書第四三号 内閣参質一九二第四三号 平成二十八年十二月六日 内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 伊達 忠一 殿 参議院議員山本太郎君提出環境省による復興資金流用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山本太郎君提出環境省による復興資金流用に関する質問に対する答弁書 一について 政府としては、「平成二十八年度以降五年間を含む復興期間の復旧・復興事業の規模と財源について」(平成二十七年六月三十日閣議決定)において、平成三十二年度までの復興財源として三十二兆円程度を確保することとしている。御指摘の「実際に予算化された」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十七年度までの各年度の東日本大震災復旧・復興関係経費の①歳出予算額及び予備費使用額の合計額、②支出済歳出額をお示しすると、それぞれ以下のとおりである。 平成二十二年度 ①約六百七十八億円 ②約三百八十二億円 平成二十三年度 ①約十四兆八千二百四十三億円 ②約八兆九千五百七十一億円 平成二十四年度 ①約四兆九千七百六億円 ②約六兆三千百三十一億円 平成二十五年度 ①約五兆三千二十三億円 ②約四兆八千五百六十六億円 平成二十六年度 ①約四兆千二百億円 ②約三兆七千九百二十一億円 平成二十七年度 ①約四兆九百七十六億円 ②約三兆七千九十八億円 また、お尋ねの「検査対象とされた環境省の災害廃棄物等の処理費」の意味するところが必ずしも明らかではないが、東日本大震災の被災市町村における災害廃棄物及び津波堆積物(以下「災害廃棄物等」という。)の分別、保管、収集、運搬、再生、処分等(以下「処理」という。)に要した費用に対し支出された災害等廃棄物処理事業費補助金、災害等廃棄物処理促進費補助金及び災害等廃棄物処理事業費(以下「事業費補助金等」という。)についての平成二十七年度までの各年度の①歳出予算額の合計額、②支出済歳出額の合計額をお示しすると、それぞれ以下のとおりである。 平成二十三年度 ①約七千三百七十六億円 ②約三千百八十五億円 平成二十四年度 ①約三千四百四十億円 ②約三千四百八十六億円 平成二十五年度 ①約千二百四十六億円 ②約三千七百三十八億円 平成二十六年度 ①約二百三十五億円 ②約五百億円 平成二十七年度 ①約百五億円 ②約百四十七億円 二について 環境省においては、災害廃棄物等の発生量を、損壊した家屋棟数に過去の被害実績に基づく家屋一棟当たりの災害廃棄物の発生量を乗じるほか、津波の浸水面積に外部の研究者による現地調査等に基づく面積当たりの津波堆積物の発生量を乗じることなどによって推計した。 また、災害等廃棄物処理事業費補助金及び災害等廃棄物処理促進費補助金に係る予算額については、同省において、災害廃棄物等の発生量に過去の実績等に基づく災害廃棄物等一トン当たりの処理単価を乗じることによって積算し、災害等廃棄物処理事業費に係る予算額については、同省において、業者見積りや過去の実績に基づき積算された処理施設の設置費等に、災害廃棄物の発生量に業者見積りや過去の実績に基づく災害廃棄物一トン当たりの処理単価を乗じて得られた処理費を加えて積算した。なお、これらの積算を行うに際して、災害廃棄物の広域的な処理(以下「広域処理」という。)に要する費用を区分して積算しているものではない。 災害廃棄物等の処理に要した費用についての岩手県、宮城県及び福島県の平成二十三年度から平成二十七年度までの支出済歳出額の合計額は、それぞれ、岩手県が約二千六百八十七億円、宮城県が約六千七百九十億円、福島県が約千三百八十九億円である。 三について 一についてでお答えしたとおり、事業費補助金等についての平成二十七年度までの各年度の歳出予算額の合計額は毎年度減少してきているが、事業費補助金等の毎年度の予算額については、事業の進捗に応じて毎年度必要と見込まれたものを計上したものである。 四について 災害廃棄物等の処理に係る事業費は、災害廃棄物等の発生状況やその状態等によって異なるため、各市町村における事業費を災害廃棄物等の処理量で単純に除した数値にはおのずと差異が生じるものである。したがって、お尋ねの「原因を調査し、必要に応じて是正する必要はないのか」については、その必要がないものと考えている。 五について 発生した災害廃棄物等の分別、保管、収集、運搬等を行う段階で、各市町村が処理するもの、各市町村が県に委託して処理するもの及び広域処理を行うものに区分してはいないため、お尋ねの「市町村で処理したものの処理コスト」、「県に委託したものの処理コスト」及び「広域処理を行ったものの処理コスト」をお示しすることは困難である。 六について 岩手県で発生した災害廃棄物のうち広域処理が行われたものの量は約三十三万トン、宮城県で発生した災害廃棄物のうち広域処理が行われたものの量は約二十九万トンであるが、これらには、御指摘の「下請け業者が県外に持ち出したもの」は含まれていない。 七について 二についてでお答えしたとおり、事業費補助金等の積算を行うに際して、災害廃棄物の広域処理に要する費用を区分して積算しているものではないため、お尋ねの「がれきの広域処理を行う名目で計上された予算額」をお示しすることは困難である。また、五についてでお答えしたとおり、発生した災害廃棄物等の分別、保管、収集、運搬等を行う段階で、各市町村が処理するもの、各市町村が県に委託して処理するもの及び広域処理を行うものに区分してはいないため、お尋ねの「実際に広域処理のため使用された金額」をお示しすることは困難である。 八について 「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(平成二十四年三月十五日付け環廃対発第一二○三一五○○一号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長通知。以下「交付方針」という。)においては、災害廃棄物の広域処理を促進するため、復旧・復興枠で交付を行う対象として、特定被災地方公共団体(東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成二十三年法律第四十号)第二条第二項に規定する特定被災地方公共団体をいう。)である市町村等が実施する廃棄物処理施設整備事業(浄化槽事業を除く。以下「特定被災地方公共団体実施事業」という。)並びに市町村等が実施する廃棄物処理施設整備事業(特定被災地方公共団体実施事業を除く。)のうち、諸条件等が整えば災害廃棄物の受入れが可能と考えられる処理施設の整備事業及び竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業(災害廃棄物の広域処理とは関係のない事業を除く。)を示しているものである。 九の1から3までについて 循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠は、予算に基づくものであり、交付方針にのっとって交付を行っているものである。御指摘の静岡県静岡市の事業については、八についてでお答えした「諸条件等が整えば災害廃棄物の受入れが可能と考えられる処理施設の整備事業」に該当するものであるが、他の既存施設と共に災害廃棄物を受け入れる計画で新たな処理施設の整備を進めていたところ、当該処理施設の整備が完了する前に、災害廃棄物の受入れが計画より早く終了し、結果として当該処理施設での受入れが行われなかったものである。 御指摘の富山県高岡地区広域圏事務組合の事業については、八についてでお答えした「竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業」に該当するものであるが、同事務組合においては、同県高岡市のごみ処理事業を引き継ぐことになっていたことから、同市の施設が交付方針にいう「他の既存施設」に当たるものとして災害廃棄物を受け入れたものである。あわせて、岩手県下閉伊郡山田町及び上閉伊郡大槌町で発生した災害廃棄物の広域処理については、静岡県による受入れが終了した後も富山県による受入れの調整が継続して行われていたものと承知している。 御指摘の福岡県北九州市の事業については、八についてでお答えした「竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業」に該当するものである。 したがって、「広域処理する必要がないがれきを受け入れた」、「地方公共団体の一般廃棄物処理施設整備事業への復興資金の流用ではないか」、「静岡市や北九州市ががれきを受け入れたことへの「お礼」として復興資金から一般廃棄物処理施設整備費を支給した」等の御指摘は当たらない。 また、御指摘の「十五事業主体」ごとに循環型社会形成推進交付金及び震災復興特別交付税の交付額の合計額をお示しすると、それぞれ以下のとおりである。ただし、同交付金の交付額については、平成二十三年度から平成二十七年度までに復旧・復興枠として事業主体へ交付された額であるが、震災復興特別交付税の交付額については、復旧・復興枠として計上された同交付金に係る地方負担額として総務大臣が調査した時点における額に基づき同年度末までに決定し、市町村へ交付された額(ただし、広域連合又は一部事務組合にあっては、当該広域連合又は一部事務組合の構成市町村へ交付された額の合計額)である。なお、震災復興特別交付税については、算定した額が実際に要した経費を上回り、又は下回る等の場合、後年度分の震災復興特別交付税の額を減額し、又は加算することとしている。 北海道中・北空知廃棄物処理広域連合 二十八億三千二百九十三万九千円 秋田県秋田市 五億二十万二千円 秋田県鹿角広域行政組合 一億二千二百六十四万円 秋田県潟上市 二億八千七百二万八千円 山形県酒田地区広域行政組合 一億四千六百九十三万三千円 群馬県佐波郡玉村町 十一億三千七十六万三千円 群馬県甘楽西部環境衛生施設組合 三億七千五百六十八万四千円 埼玉県川口市 三十六億三千九百六十八万円 東京都ふじみ衛生組合 五十一億三千五十三万千円 東京都西秋川衛生組合 十八億二千五百四万九千円 富山県高岡地区広域圏事務組合 六十二億六千六百七十四万八千円 静岡県静岡市 一億千二百六十九万六千円 京都府綾部市 二億九千三十七万千円 大阪府堺市 八十五億九千三百九十万九千円 福岡県北九州市 十八億九百二十三万千円 九の4について 九の1から3までについてでお答えしたとおり、循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠は、予算に基づくものであり、交付方針にのっとって交付を行っているものである。御指摘の十事業については、いずれも、八についてでお答えした「諸条件等が整えば災害廃棄物の受入れが可能と考えられる処理施設の整備事業」又は「竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業」のいずれかに該当するものであったため、同交付金の復旧・復興枠での交付を行ったものである。なお、交付方針においては、受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、同交付金の返還が生じるものではない旨を示していたところである。 九の5について 御指摘の「質問書」は、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査について」(平成二十三年十月七日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課事務連絡)を指すものと解されるが、これについては、環境省が、東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況の調査として、都道府県を通じて、市町村に対して、受入れが可能となった場合に想定される処理能力等について回答を求めたものであり、これに回答していることをもって、御指摘のように同省として「がれきの受け入れの検討に入った」と判断した事実はない。 九の6について 御指摘の大阪府堺市の事業については、八についてでお答えした「竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業」に該当するものである。平成二十四年一月から二月にかけての循環型社会形成推進交付金に係る追加調査において、同市が通常枠での交付を要望していたのは承知しているが、その後、同年三月の内閣総理大臣及び環境大臣による広域処理の協力要請や大阪府との調整を経て、同市から復旧・復興枠での交付申請を受け、それに基づき復旧・復興枠での交付を行ったものである。したがって、「市町村の自治権を侵す違法行為である」、「復興資金の使途に反する違法行為」である、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にも違反する」等の御指摘は当たらない。 九の7について 九の1から3までについてでお答えしたとおり、循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠は、予算に基づくものであり、交付方針にのっとって交付を行っているものである。環境省においては、災害廃棄物の広域処理を促進するため、平成二十四年三月の内閣総理大臣及び環境大臣による広域処理の協力要請や関係地方公共団体との調整を経て、地方公共団体から復旧・復興枠による交付申請を受け、それに基づき復旧・復興枠での交付を行ったものであり、また、同交付金の予算額については、毎年度必要と見込まれたものを計上したものである。したがって、「環境省が過大に予算立てした災害廃棄物等処理費により復興資金をいわば無理やり使うための処置として、地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備費などに復興資金を流用していた」等の御指摘は当たらない。 九の8について 御指摘の「環境省が発表した広域処理計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法第六条第一項に基づく広域的な協力の要請について」(平成二十四年三月十六日付け環廃対発第一二〇三一六〇〇一号環境大臣通知)で示された宮城県石巻市、東松島市及び牡鹿郡女川町(以下「石巻ブロック」という。)で発生した災害廃棄物のうち広域処理が必要な量は、平成二十四年三月十一日時点における宮城県の広域処理希望量である。当該量には、宮城県と鹿島建設株式会社を筆頭とする鹿島・清水・西松・佐藤・飛島・竹中土木・若築・橋本・遠藤特定共同企業体(以下「鹿島等特定共同企業体」という。)との間での当初の委託契約において処理が委託された災害廃棄物の量も含まれていたものであるが、これは、大規模な津波により発生した膨大な災害廃棄物の迅速な処理が喫緊の課題となっていた中で、災害廃棄物に係る最終処分場の早急な確保及び適切な利用等を図るため、各地方公共団体に対しても災害廃棄物の一部の広域処理への協力を要請し、検討を依頼したことによるものであって、実際の処理に当たっては、鹿島等特定共同企業体に委託するものと広域処理を行うものとを区分することとしていたところである。したがって、御指摘のような「架空計上」や「二重計上」を行ったものではない。 九の9及び10について 宮城県牡鹿郡女川町で発生した災害廃棄物について東京都で行われた広域処理は、宮城県と東京都が締結した「災害廃棄物の処理基本協定」に基づき、同町からの要請を受けて行われたものであり、御指摘のように「女川町が独自に処理するつもりのがれきを、わざわざお願いして供給してもらった」との事実はない。 宮城県で発生した災害廃棄物のうち福岡県北九州市で行われた広域処理については、平成二十四年三月の内閣総理大臣及び環境大臣による広域処理の協力要請を受けて行われることとなったものであり、災害廃棄物の迅速な処理を進める上で必要なものであったと考えている。また、当該広域処理に係る事業費は約十四億円であり、処理量は約二万三千トンであったため、単純に事業費を処理量で除した数値は一トン当たり約六万円となる。 なお、石巻ブロックで発生した災害廃棄物の処理に関して、宮城県と鹿島等特定共同企業体の間では、事業の進捗に応じて、再契約を含めて適切に委託契約が結ばれていたと承知している。 十について 御指摘の会計検査院の平成二十四年度決算検査報告においては、「本院の所見」として、「事業主体において広域処理に係る検討が十分に行われていなかった」、「同交付金の交付対象施設において災害廃棄物を受け入れていなかった」、「復旧・復興予算からの交付を自ら要望していない事業主体が含まれていた」等の記述がなされているが、御指摘の「これまでの質問、とりわけ前記八と九において述べた詳細な事実」に当たると思われるものが事実であるとして記載されているとは認識していない。 環境省としては、同院からの指摘を踏まえ、引き続き、循環型社会形成推進交付金をはじめとした予算の執行の適正化に努めていく考えである。 |