質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三四号

内閣参質一九二第三四号
  平成二十八年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問に対する答弁書

一の1について

 核軍縮に関する我が国の基本的立場は、核兵器のない世界の実現のためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識及び厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき、核兵器国と非核兵器国との間の協力による現実的かつ実践的な措置を積み重ねていくことが不可欠であるというものである。御指摘の本決議案は、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発が我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている中で、このような我が国の基本的立場に合致せず、また、核兵器国と非核兵器国との間の対立を一層助長し亀裂を深めるものであるとの理由から、慎重な検討を重ねた結果、反対したものである。我が国の投票理由説明においても、この趣旨を述べている。

一の2について

 御指摘の本決議案に反対した理由は、一の1についてで述べたとおりである。その上で申し上げれば、御指摘の本決議案は、二千十七年にいわゆる核兵器禁止条約の交渉を開始することを決定するものであり、一般的な形で核兵器の法的禁止を目指すことに言及したこれまでの決議とは異なるものである。

一の3について

 御指摘の本決議案は、今後、国際連合総会本会議において採決が行われるものと承知するが、国際連合総会第一委員会における我が国の投票態度及びその理由は一の1についてで述べたとおりであり、かかる立場を踏まえて投票を行う。

二について

 御指摘の交渉に参加するか否かについては、外務省のホームページにおいてその会見記録を公開している御指摘の記者会見において、岸田外務大臣が「交渉への参加・不参加を含め、今後の対応ぶりについては、交渉のあり方の詳細に関する今後の議論も踏まえ、また、これまで連携してきた豪、独など中道諸国の動向も見極めつつ、政府全体で検討していくことになりますが、私(大臣)としては、現段階では、交渉に積極的に参加をし、唯一の被爆国として、そして核兵器国、非核兵器国の協力を重視する立場から、主張すべきことはしっかりと主張していきたいと考えております」と述べたとおりである。

三の1の①及び②について

 政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならず、核兵器のない平和で安全な世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を重ねていくことが重要であると考えている。
 国際司法裁判所が千九百九十六年七月八日に発表した勧告的意見は、核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には反するが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における核兵器による威嚇又はその使用が合法か違法かについて最終的な結論を出すことはできない等と述べているところであり、政府としては、国際連合の主要な司法機関である国際司法裁判所が同意見の中で示した見解について、厳粛に受け止めるべきものと考えている。

三の1の③について

 御指摘の「国家の存亡そのもののかかった自衛の極端な状況」については、個別具体的に判断されるものであり、一概にお答えすることは困難である。

三の1の④及び⑤並びに2から4までについて

 御指摘の多国間核軍縮交渉の前進に関するオープン・エンド作業部会の報告書の附属文書二の内容は、同作業部会において必ずしも議論が行われたものではなく、同作業部会に参加した国際連合加盟国、国際機関及び市民社会の提案を一覧にしたものであると理解しており、また、我が国の提案ではないことから、御指摘の「核兵器の使用の威嚇」、「核戦争の計画への参加」、「核兵器の標的設定への参加」、「核兵器を搭載した艦船の寄港ならびに領海通過」、「核兵器を搭載した航空機の領空通過」、「核兵器の領土内通過」及び「援助、奨励、誘導」の意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。