質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一九二第三三号
  平成二十八年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出ブラック求人の監視と取り締まり強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出ブラック求人の監視と取り締まり強化に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「求人を掲載しない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公共職業安定所(以下「安定所」という。)が受理した求人申込みの内容において月平均の時間外労働の時間数が三十時間を超えている場合等には、安定所は、求人者に対して労働基準監督署に届け出られた労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十六条第一項に規定する協定の内容の提示を求めて確認の上、求人票の内容について必要な是正指導を行うほか、同法違反が疑われる場合には、職業紹介の保留等を行っているところである。なお、お尋ねの「求人を掲載しない」ことが求人の申込みを受理しないこと(以下「求人不受理」という。)を意味するのであれば、安定所が求人不受理をできるのは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第五条の五ただし書又は青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)第十一条の規定に該当する場合に限られるため、御指摘の「労働基準監督署による受理印の有無そして三六協定に記載されている労働時間及び対象職種と実際の求人票に書かれている内容の相違についての確認ができるまで」の場合及び「月平均三十時間を超える時間外労働時間が記載されている」場合において、安定所が一律に求人不受理とすることは困難であると考えている。

三について

 安定所で受理する求人票に関する様式やその記載方法を改めることは現時点では困難であるが、御指摘の「残業代支払いにおけるトラブル」を減らすため、求人票への固定残業代の明示を徹底することとしており、求人者に対し、安定所に提出する求人申込書への固定残業代等の表示について注意喚起を図るためのリーフレットを平成二十八年四月に作成し、配布したところである。

四について

 お尋ねの「固定残業代の記載のある求人を出している事業所における残業代未払いの実態調査」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、固定残業代については、実際の時間外労働時間に応じた額以上の割増賃金が支払われている限りにおいて労働基準法に違反するものではないため、御指摘のように「固定残業代の記載のある求人のほとんどが違法または違法の疑いがある」とは考えていないが、労働基準監督機関においては、労働基準関係法令違反の疑いがあると認められる事業場に対し監督指導を実施した際に、固定残業代が支払われているかどうか確認の上、固定残業代も含め同法第三十七条第一項に規定する割増賃金の不払が認められた場合には、使用者に対して、割増賃金を支払うよう指導しており、今後とも、事業場に対する監督指導を通じ、労働基準関係法令の遵守徹底に努めてまいりたい。

五について

 お尋ねの「労働基準監督署などから告発を受けている会社など」及び「求人票は掲載しない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、安定所においては、求人申込みの内容が労働関係法令に違反する場合等は、職業安定法第五条の五ただし書の規定に基づき求人不受理としているところである。一方、一及び二についてで述べたとおり、安定所が求人不受理をできるのは同条ただし書等の規定に該当する場合に限られていることから、事業主又は事業所が告発を受けたことのみをもって、当該事業主が申し込む全ての求人を受理しないこととすることは困難と考えている。
 なお、青少年の雇用の促進等に関する法律第十一条の規定に基づき、学校卒業見込者等であることを条件とした求人の申込みについては、その求人者がした労働基準法等の法令違反に関し、法律に基づく処分、公表その他の措置が講じられたときは、安定所は、一定期間、受理しないことができる。

六及び八について

 一般的に、求人票で示された労働条件と採用後の労働条件が相違ないことが期待されるが、求人者と求職者が求人票で示された労働条件と異なる労働契約を締結すること自体は可能であるため、お尋ねの「意思表示ができる欄」を作成することには慎重な検討が必要と考えている。なお、従来から、求人者に対して、面接等を行った求職者の採否等の選考結果を安定所に通知することを求めているところであるが、求人票で示された労働条件と採用後の労働条件との相違を把握するため、平成二十七年十二月から、当該通知の際に併せて、求人票の労働条件と採用条件との相違の有無並びに相違がある場合には具体的変更点及び変更理由の報告を求めているところであり、賃金等の労働条件が大きく引き下げられた、雇用形態が変更された等の労働者にとって大きな変更があったと判断される場合は事実確認を行い、必要に応じて是正指導を行っている。また、安定所が職業紹介を行う求人に関する求職者等からの申出等を全国一元的に受け付けるため、平成二十六年三月には「ハローワーク求人ホットライン」を設置し、求職者等に対してリーフレット等によって周知する等、申出等の機会の拡充を図っているところであり、実際に申出等があった場合には、必要に応じ事実確認や是正指導等を行っている。

七について

 御指摘の「労働条件明示書」とは、労働基準法第十五条第一項及び労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第五条第三項の規定に基づき、労働契約の締結に際し労働者に対して交付される書面を指すものと考えるが、安定所においては、求人者に対して、労働契約の締結に際し、労働者に対して同法第十五条第一項に規定する労働条件を書面の交付により適切に明示しなければならないこと等を指導している。また、労働基準監督機関においては、事業場に対し監督指導を実施した際に、同法第十五条第一項に規定する労働条件が書面の交付により適切に明示されていない事実が認められた場合には、使用者に対して、労働条件を書面で明示するよう指導しており、今後とも、事業場に対する監督指導を通じ、労働基準関係法令の遵守徹底に努めてまいりたい。

九について

 安定所における求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数は既に公表しているとともに、産業分類別の内訳については平成二十八年度の申出等の件数の内訳として公表を予定している。一方、「求人票と実際の就労時の労働条件が異なる旨の就労者からの苦情」があることをもって企業名を公表することについては、これを公にすることにより、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、必要に応じ事実確認や是正指導を行うとともに、是正指導により改善されない場合には職業紹介の保留等の措置を講ずることとしている。

十について

 お尋ねの「違法な虚偽の求人の取り締まりを強化する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、職業安定法第六十五条において「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」に該当する者は、「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」こととされており、厚生労働省としては、同条違反を確認した場合には、告発等の所要の措置を講ずることとしている。

十一について

 お尋ねの「ペナルティー」の意味するところが必ずしも明らかではないが、求職者等からの申出等により求人票で示された労働条件と採用後の労働条件に相違が判明した場合は、安定所において求人者への必要な是正指導等を行っているほか、労働関係法令違反が疑われる場合には、職業紹介の保留等の措置を講ずることとしている。