質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一三号

日EU経済連携協定およびRCEPに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月十六日

舟山 康江   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   日EU経済連携協定およびRCEPに関する質問主意書

一 日EU経済連携協定の内容および交渉進捗状況について

 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は署名後もアメリカ大統領選の影響を受けて、日本とニュージーランドを除いては各国で議会承認が進まず、アメリカの次期政権の通商政策を見極めてから行動しようとの慎重な姿勢にある。一方トランプ次期アメリカ大統領はTPP協定離脱に関する声明を出し、「TPP協定は死んだ」との認識が各国で広まっている。
 その影響で、これまで停滞していた日EU経済連携協定がにわかに動き出し、交渉の進展が急であるが、TPP協定交渉の陰に隠れて、国民にはまったくその内容が知らされてこなかった。
 最近、日EU経済連携協定の締結が近いとの報道が相次ぎ、本年十二月には欧州連合のマルムストロム通商担当委員が積極発言で一連の報道を肯定した。
 日本とEUの間には、農業・知的財産・交通関係など多くの懸案があり、状況によっては、その影響はTPP協定をしのぐものと理解されている。
 そこで次の点を質問する。
1 日EU経済連携協定の年内の大枠合意を目指すと安倍内閣総理大臣も参議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会において述べているが、「大枠合意」とは何か見解を示されたい。
2 日EU経済連携協定の交渉はどこまで進んでいるのか、すでに合意している分野とその内容は何か、明らかにされたい。
3 日EU経済連携協定の交渉での懸案・対立点は何か明らかにするとともに、その懸案・対立点をどのように解決するのか見解を示されたい。
4 日EU経済連携協定の締結により、日本の産業および社会にどのような影響が生じるのか、その試算を明らかにされたい。
5 日EU経済連携協定にはISDS条項が含まれるか明らかにされたい。また、EUは近年の通商交渉でICS(投資裁判所システム)を新たに提言しているが、日EU経済連携協定の交渉においては、投資紛争解決システムについてどのような議論が行われているのか明らかにされたい。
6 TPP協定は最悪と言われるほど極端な秘密協定であったが、それでも定期的に国民向けの説明会が開かれてきた。ところが日EU経済連携協定については一切国民にその内容が知らされていない。同協定の交渉妥結が近いといわれる現在、同協定の交渉過程をどのように情報開示するか、その具体的方針(ステークホルダー会合、全国での説明会など)を示されたい。
 なお、TPP協定は、交渉参加に当たって秘密保持義務を課せられていたため情報開示ができない、とこれまで説明されてきたが、日EU経済連携協定にはそのような義務はないと聞いている。よって、以上の質問に対し、詳細な回答を求める。

二 RCEPの内容および交渉進捗状況について

 TPP協定の発効が困難になりつつある状況を受けて、アジア・太平洋諸国はTPP協定の代替協定となりうる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に一挙に注力しはじめ、その進展が急である。先日インドネシアでの会合が終了したばかりだが、次回は来年二月に神戸で開催されると報道されている。TPP協定の交渉が続けられている間、RCEPは漠然とした遠い目標であったが、急速に具体化しつつあることから、以下質問する。
1 次回交渉の具体的期日および開催場所はどこか明らかにされたい。
2 RCEP交渉の内容を開示されたい。極端な秘密主義であったTPP協定とは異なり、RCEPはその性格上、アジア太平洋地域の国民に広く内容が伝えられなければならない。これまでの交渉内容、懸案事項などを明らかにされたい。
3 TPP協定は三十章もの協定に、貿易だけでなく、投資・知的財産・制度などさまざまな内容が含まれていた。すでにリークされた情報をもとにすると、RCEPはTPP協定が基本テキストあるいはテンプレートとなっているように考えられるが、実際にはどのようなテーマについてどのような目標が掲げられているのか、詳細を開示されたい。
4 TPP協定の場合、政府はその影響調査に五年を費やしたにもかかわらず、同協定が日本にもたらす影響の費用便益分析には専門家から疑義が提示されている。参加国とテーマが拡大するなかで、RCEPの実現により日本の産業および社会にどのような影響が生じるのか、その試算を明らかにされたい。

  右質問する。