第192回国会(臨時会)
質問第五四号 ミツバチ等の花粉媒介生物(送粉者)の保護に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十八年十二月十三日 小川 勝也
参議院議長 伊達 忠一 殿 ミツバチ等の花粉媒介生物(送粉者)の保護に関する質問主意書 本年、農林水産省はミツバチの大量死などの被害について、平成二十五年度から平成二十七年度にかけて実施した「蜜蜂被害事例調査」(平成二十八年七月)により、農薬への暴露が原因である可能性が高いと結論付けた。 ミツバチなど花粉を媒介する生物が農業生産にもたらす経済的利益は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)が約六十六兆円というグローバルな試算を出したほか、国立研究開発法人農業環境技術研究所が国内試算として約四千七百億円と算出するなど、その重要性が再認識されている。さらに最近では、英国レディング大学などの研究チームが送粉者保護への対応次第で食料確保と農業部門の十四億人の雇用に影響を及ぼすとする研究結果を発表したほか、我が国の国立研究開発法人森林総合研究所は本年十一月、花粉を運ぶ動物を守るための十の提言(以下「十の提言」という。)を発表し、十二月四日から開催されている生物多様性条約第十三回締約国会議でも活用するとしている。 以上に鑑み、以下を質問する。 一 十の提言は環境省環境研究総合推進費による研究に基づくものである。環境省としても、こうした研究結果及び提言を受け、我が国の農業における送粉サービスをめぐる状況について改善をする責務があるはずである。十の提言の提言一では「農薬の使用基準の向上」として、「送粉者に対する農薬のリスク評価を行い、その結果に基づいて農薬の使用基準を制定すること、すでに制定されている場合には規制を強化すること」が必要としている。同じく提言六では「農業における送粉サービスの重要性の認識」として、「多くの農作物の種子や果実の生産は、送粉サービスに依存していることを認識することが必要」とある。これらを踏まえ、我が国の農業における送粉サービスの重要性について、農林水産省及び環境省はどのように認識しているか。 二 送粉者を守るための農薬の使用規制の強化について、我が国では現在どのような検討及び実施過程にあるのか、具体的に示されたい。 三 ネオニコチノイド系の農薬として日本でも登録のプロセスにあるスルホキサフロルについて質問する。同農薬は、アメリカで一旦登録された後、ミツバチ等への悪影響を充分考慮していないこと等から、昨年登録が取り消されていた。そして今年十月になってミツバチ等に影響の大きい用途を除いて申請・再登録がなされたところである。同農薬について農林水産省及び厚生労働省で現在審査中ときいている。前記のとおり国内のミツバチの大量死などの被害は農薬への暴露が原因である可能性が高いと結論付けられている現在、同農薬の登録の審査において、ミツバチ等への影響をどのように考慮して対応をする考えか。 四 環境省では水産動植物の被害防止と、水質汚濁に関してそれぞれ農薬の登録保留基準を設けているが、送粉者保護についても対応が急がれるはずである。送粉者保護に関する現在の対応状況と今後の具体的な方針について説明されたい。 右質問する。 |