質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五三号

生命保険関連税制等の充実に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月十二日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   生命保険関連税制等の充実に関する質問主意書

 我が国の少子高齢化社会を「安心と活力ある社会」に変革する上で、現在改革が進められている社会保障制度等の「公的保障」のみならず、それを補完する「私的保障」の役割が、今後より一層重要性を増していくと考えられる。
 このことは、例えば、平成二十四年に成立した社会保障制度改革推進法第二条において、基本的な考え方として「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと」と規定されていること、また、平成二十五年に成立した持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律第二条において、自助・自立のための環境整備等として「個人がその自助努力を喚起される仕組み及び個人が多様なサービスを選択することができる仕組みの導入(中略)に努めるものとする」と規定されていることからも明らかなように、国民的な共通認識、国家的な大命題となっている。
 特に生命保険等は、自助努力による生活保障手段として、相互扶助という独自のシステムを通じ、国民生活の安定に寄与しており、私的保障における中心的役割を担っている。実際、その支援・促進のために、これまで生命保険料控除制度等の税制支援措置が実施されているが、今後より多様化する国民の生活保障ニーズへの対応等の観点から、生命保険関連税制等の強化・充実が目下の急務と考え、以下のとおり質問する。

一 生命保険料控除制度について

1 国民の自助努力をさらに支援・促進するため、また、生命保険料控除額(新制度の一般生命保険料控除と介護医療保険料控除の合計に相当)が五万円とされた昭和四十九年から平成二十七年までの間に消費者物価指数が約二倍となっていること等も勘案すると、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除のそれぞれの所得控除限度枠は、現行の四万円から少なくとも五万円に拡充し、制度全体の所得控除限度額合計を十五万円とするべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。
2 平成二十三年十二月以前の契約と平成二十四年一月以降の契約とで適用される生命保険料控除制度が異なる中、平成二十三年十二月以前の契約がある場合、新たに保険に加入すると控除額の算出が複雑になることから、これを簡素化してほしいとの要望が国民の間で高いことが民間の実施する各種アンケートに表れている(例えば、全国生命保険労働組合連合会による平成二十八年九月実施の「生保関連税制に関するモニターアンケート調査」等)。従って、生命保険料控除制度を国民にとって、よりわかりやすい制度とするため、契約時期で区別することなく同一の控除制度が適用されるべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。

二 企業年金制度及び確定拠出年金制度等の積立金に係る特別法人税について

 確定給付企業年金制度や厚生年金基金制度等の企業年金制度及び確定拠出年金制度等の積立金に対して、約一・二パーセントの特別法人税が課され、また、確定拠出年金の場合、企業型年金のみならず、個人型年金の積立金に対しても特別法人税が課されることとなっている。実際には、当該税制は平成二十九年三月末まで適用が凍結されているが、そもそもこれら積立金に特別法人税を課すことは不合理で、現在の厳しい運用環境の下、仮に課税が復活した場合、その負担や影響は極めて大きく、企業年金制度の持続性、受給権の保全に支障をきたす懸念がある。企業年金制度の健全な発展により、勤労者のゆとりある老後生活を実現するためにも、適用の凍結ではなく、企業年金制度及び確定拠出年金制度等の積立金に係る特別法人税を廃止するべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。

三 死亡保険金の相続税非課税限度額について

 働き手を失った遺族の収入状況は非常に厳しく、生活意識についても苦しいと感じる割合は一般世帯に比べて極めて高い。加えて、相続財産の約五割は、土地・家屋等、換金性の低い資産となっており、遺族の生活費を賄うものとはなり得ない実情もある。また、公的遺族補償については、例えば、子ども一人の世帯の遺族基礎年金は、一か月あたり約八万四千円であり、生活資金必要額を賄う上で十分とは言えない状況にある。従って、遺族の生活資金を確保するため、死亡保険金の相続税非課税限度額について、引き上げ、例えば、現行限度額に「配偶者分五百万円+未成年の被扶養法定相続人数×五百万円」の加算等を行うべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。

四 財形非課税限度額について

 財形制度は、勤労者の資産形成や自助努力による老後生活資金の準備促進を趣旨としており、とりわけ、住宅取得や年金受給を目的とする財形制度については、その社会的意義から、発生する利子相当額が非課税となっている。この制度趣旨を一層促進するためには、財形住宅貯蓄及び財形年金貯蓄の非課税限度額の拡充、例えば、一千万円への引き上げを行うとともに、公的年金の支給開始年齢が六十五歳になることに対応し、契約締結時五十九歳以下の勤労者を対象とするべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。

五 企業型確定拠出年金について

 確定給付企業年金制度や厚生年金基金制度等では、中途脱退給付の支給が認められているが、企業型確定拠出年金制度においては、退職しても原則として六十歳に達するまで給付が認められておらず、このことが制度普及の大きな障害となっている。従って、企業型確定拠出年金制度における退職時脱退一時金について、年齢及び資産額に関わらず支給可能とすべく、支給要件を緩和するべきと考えるが、政府の見解、今後検討している政策の方向性及びその判断根拠を具体的に示されたい。

  右質問する。