質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四九号

災害発生時における保健師の役割に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月五日

石井 苗子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   災害発生時における保健師の役割に関する質問主意書

 各地方公共団体に所属する保健師(以下「自治体保健師」という。)は、平時においても保健指導等を通じて地域住民の健康を守る大きな職責を有しているが、ひとたび災害が発生した際には最優先で避難所に駆けつけて被災者の生活環境の整備を行い、被災者が仮設住宅に移転してからもその心の安寧を保てるようにするなど、長期にわたり被災者の身体及び精神の健康状態を管理するというきわめて重要な役割を果たす。このことは、東日本大震災や熊本地震など、近年発生した大規模災害の経験を通じて被災地においては認識されつつあるものの、一般的には未だ知られていない。
 自治体保健師が災害発生時に避難所等においてその役割を発揮できる体制を構築するためには、災害という非常事態に直面した際に速やかに地域住民の生活・衛生環境を整えることができる訓練を受けた自治体保健師の人材育成が必要である。加えて、平時から自治体保健師の役割に対する国民の理解を得て、その認知度を上げることが必要であると感じている。
 その意味で、近年になって、全国保健師長会等による「大規模災害における保健師の活動マニュアル」が東日本大震災を踏まえて改訂されたり、厚生労働省が開催している保健師中央会議において実際に災害対応に当たった保健師による事例発表がしばしば行われたりするなど、災害発生時における自治体保健師による健康危機管理体制の在り方とそれぞれの経験を基にした情報の共有が進められていることは望ましいものと考える。さらに、平成二十八年度から、厚生労働省が保健師、公衆衛生医師等により構成される災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)の養成を開始したことは、災害対応に特化した保健師の役割を明確にし、災害発生時における保健師の活動を体系化する新たな試みとして大いに期待できると考える。
 そこで、前述のような自治体保健師の体制強化の取組を加速させ、よりよい制度を構築する観点から、以下質問する。

一 現状の災害時健康危機管理支援チーム養成研修は、必ずしも多数の保健師等は受講できない。今後、より多くの自治体保健師に災害発生時の緊急対応とその役割を習得してもらうために、研修の質と受講者の量の確保が課題になると思われるが、この点についての政府の方針はいかがか。

二 災害対応に関する研修や訓練に参加して必要な知識及び技術を習得した自治体保健師が増加すれば、当該地方公共団体において災害が発生した場合の活動はもちろんのこと、当該地方公共団体の周辺地域で災害が発生した場合の応援等の際にも有効な活動が期待できる。一方で、自治体保健師がこうした研修等に参加するためには、本務から一定期間離れざるを得ないことから、各地方公共団体の首長や所属長を始めとする周囲の理解が欠かせない。災害発生時における自治体保健師の役割についての理解を広げ、自治体保健師がこうした研修等に積極的に参加できるような環境を整えるために、政府として取り組んでいる内容を示されたい。

三 将来的には、保健師として就業した後の研修等だけでなく、大学や養成所等の保健師養成課程の中に、災害発生時における保健活動を学ぶ機会を設けることも検討すべきであると考えるが、この点についての政府の認識はいかがか。

  右質問する。