質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四七号

トランス脂肪酸の規制等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月一日

伊藤 孝恵   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   トランス脂肪酸の規制等に関する質問主意書

 農林水産省のホームページにあるように、植物油等に水素を付加して部分水素添加油脂を製造する工程で副生する工業トランス脂肪酸は、血中の総コレステロール値/高密度リポ蛋白コレステロール値の比を上げ、血管疾患を増やすとの根拠で、WHOはトランス脂肪酸の平均摂取量を一日当たりの総エネルギー摂取量の一%未満にするよう勧告している。また、米国食品医薬品局(FDA)は、二〇一八年から部分水素添加油脂を一般に安全と認められるものを示すGRASの対象から除外し、食品への使用を規制することとした。
 一方、反芻動物の胃の中でもトランス脂肪酸は生成される。これに伴い反芻動物の肉や乳とその加工食品などにもトランス脂肪酸は含まれるが、これらは米国でも規制の対象とはなっていない。さらに、反芻動物のトランス脂肪酸は糖尿病に防御的に働くなどの有益性もカナダ・マックマスター大学より報告されている。そもそも、工業トランス脂肪酸と反芻動物のトランス脂肪酸は、不飽和結合の位置等に若干の違いはあるが本質的な違いはないと日本食品分析センターの発表にもある。
 こうした中、日本食品油脂安全性協議会では、部分水素添加油脂の有害性は工業トランス脂肪酸ではなく、部分水素添加の工程で副生したジヒドロ型ビタミンK1がビタミンK2に変換されず正常なビタミンK作用を阻害していることにあるとし、脳卒中易発症性ラットを用いた試験では、水素を添加した大豆油は、水素を含まない大豆油に比べてラットの寿命を著しく短縮させたと報告している。併せて、日本人の摂取量は安全量を超えている可能性を指摘している。
 子どもたちが多く口にする、パン、ケーキ、ドーナッツ、フライドポテト、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸については、新しい科学的知見に基づいた調査を充分かつ精緻に行い、対策を講じる必要があると考え、以下質問する。

一 食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価については、平成十五年から十九年の国民健康・栄養調査結果等に基づいているが、食生活は年々変化しており、当時の同調査も古くて稚拙なため新しい科学的知見に基づく内容の調査に基づいて、新たに食品健康影響評価を実施する必要があると考えるが、政府の見解如何。

二 部分水素添加油脂をGRASの対象から除外し、食品への使用を規制することとしている米国に倣って、日本も部分水素添加油脂を食品添加物に指定し、使用基準を設けるなどの規制をすべきだと考えるが、政府の見解如何。

三 食品にはトランス脂肪酸含有量が度を超えて高いものもある。前記二で指摘した規制ができないのであれば、トランス脂肪酸を一定量以上含む食品にその含有量を表示させる等の情報開示を食品事業者に求めないと消費者が自らトランス脂肪酸の摂取量を制限することができないが、政府の見解如何。

  右質問する。