質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三九号

憲法第二十六条第二項に定められた「普通教育」の定義及び学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」の定義等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月十八日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   憲法第二十六条第二項に定められた「普通教育」の定義及び学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」の定義等に関する質問主意書

 憲法第二十六条第二項に定められた「普通教育」の定義及び学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」の定義を明らかにすることは、今後の子どもの権利の擁護及び教育行政にとって大切な観点を含むと考えている。そこで以下、お尋ねする。

一 憲法第二十六条第二項に定められた「普通教育」の定義について

1 憲法第二十六条第二項に定められた「普通教育」の定義について、政府解釈を示されたい。
2 普通教育とは「人たる者にはだれにも共通に且つ先天的に備えており、又これある故に人が人たることを得る精神的、肉体的諸機能を十分に、且つ調和的に発達させる目的の教育をいうのである」、「人たるものすべてに共通に必要な教育であり、人たるだれもが一様に享受しうるはずの教育である」という考えで正しいか、政府の見解を示されたい。

二 学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」について

 以下は、回答を纏めず、個別に回答されたい。
1 学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」について、「就学」及び「就学させる義務」の定義をそれぞれ示されたい。
2 例えば、子どもが、学校教育法第一条に定められた「学校」に在籍しながら、他の各種学校又は無認可校等(以下「各種学校等」という。)に通う場合、その子どもの意思に逆らって親がその子どもを各種学校等に通わせているときと、その子どもの意思に基づき親がその子どもを各種学校等に通わせているときは、それぞれ、その子どもの親は学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」を履行していることになるのか、政府の見解を示されたい。履行していることにならない場合は、その理由を示されたい。
3 憲法学者の西原博史氏は論文で、義務教育段階における不登校の実際について「実務上はここに就学義務の問題はない。一条校への在籍をもって就学とされ、在籍校における出席のみなし認定を通じて多くの場合に就学義務は果たされたことになっていく。」と述べている。この西原博史氏による学理解釈に対する政府の見解を示されたい。併せて、子どもが不登校の場合、その保護者は学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」に違反していることになるのか、政府の見解を示されたい。
 私が提出した質問主意書(第百九十一回国会質問第九号)の質問十一の3では、学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」の意味について、親や保護者が子どもを登校させる義務ではなく、子どもの学びを支援し、又は学びを阻害しない義務と理解してよいか質問したが、この質問主意書に対する答弁書(内閣参質一九一第九号)の「十一の3について」では、「学校教育法第十七条の規定は、保護者に対し、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を小学校等に就学させる義務を負わせるとともに、子が小学校等の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を中学校等に就学させる義務を負わせているものである。」との答弁であり、質問の趣旨に対し、いただいた答弁の意味するところが定かではなかった。学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」における「就学」とは、先に述べた西原博史氏による学理解釈のように子どもが学校教育法第一条に定められた「学校」に在籍している状態であり、「学校」に子どもが登校している状態ではないと理解してよいか、政府の見解を示されたい。
4 学校教育法第十七条に定められた「就学させる義務」とは、何らかの義務を子どもに課すことではないという認識は正しいか、政府の見解を示されたい。
5 子どもが学校教育法第一条に定められた「学校」を自らの意思で休んだ場合、保護者にはその子どもの意思に逆らって、子どもを無理に「学校」に登校させる義務はなく、憲法第二十六条第一項に定められた「教育を受ける権利」の主体である子どもが、同条第二項に定められた「普通教育」に相当する教育を受けられる環境を保護者が用意すれば学校教育法第十七条に違反しないと考えるが、この認識は正しいか、政府の見解を示されたい。あるいは、学校教育法第十八条に基づき保護者が「就学させる義務」を猶予又は免除された場合を除き、同法第十七条に定められた「就学させる義務」とは、保護者が同法第一条に定められた「学校」での授業や教育活動に子どもを出席又は参加させる義務であるのか、改めて政府の見解を示されたい。

三 不登校の高校生がIT等を使った自宅学習等を行った場合の出席扱いについて

1 「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」(平成十七年七月六日付け十七文科初第四百三十七号文部科学省初等中等教育局長通知。以下「局長通知」という。)について、私は、「第百九十回国会質問第一二二号」と「第百九十一回国会質問第九号」で質問した。
 しかし、これらの質問に対する答弁は、前者の質問に対する答弁書(内閣参質一九〇第一二二号 平成二十八年六月二日)の「四の1について」では、「全ての小学校、中学校、高等学校等において、不登校の児童生徒が自宅においてインターネットや電子メール等を活用した学習活動を行った場合には、一定の要件の下、校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる旨」を局長通知で周知しているとしており、他方、後者の質問に対する答弁書(内閣参質一九一第九号 平成二十八年八月十五日)の「四の2について」では、「局長通知により不登校の児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合に指導要録上出席扱いとすることは、義務教育段階における不登校の児童生徒を対象としたものであることから、高等学校の生徒に係る調査は行っていない」としている。このように、不登校の高等学校の生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いが両答弁で矛盾している。わずか二箇月程度で政府の見解が変わったのはいかなる理由か、解釈を変えた法的根拠及びその政策形成過程も併せて明確に示されたい。
2 前記三の1について、法的根拠がない場合、なぜ、どのような正当性をもって判断を変えたのか説明されたい。
3 局長通知を読む限り「義務教育段階」の生徒とは書かれていない。その意味からも、「内閣参質一九〇第一二二号」の「四の1について」にあるように、不登校の高等学校の生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合には、指導要録上出席扱いとし、その成果を評価に反映させることができると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。