質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二七号

南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応に関する質問主意書

 政府は平成二十八年十月二十五日、南スーダンでの国連平和維持活動(以下「南スーダンPKO」という。)に参加している自衛隊の派遣継続に関して「派遣継続に関する基本的な考え方」(以下「政府基本的見解」という。)を公表した。この政府基本的見解を踏まえて、南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応に関して政府の認識を確認すべく、以下質問する。

一 政府基本的見解には「国連の旗の下、国際社会が協力して、南スーダンの平和と安定のため力を合わせている。」、「まさに、世界のあらゆる地域から、六十二か国が部隊等を派遣し、南スーダンのために力を合わせている。」とあるが、これら南スーダンPKOにおける各国の軍事要員によって構成された部隊は国連平和維持軍(United Nations Peacekeeping Force)であるとの理解で相違ないか、政府の認識を明確に示されたい。

二 南スーダンPKOに軍事要員として派遣され活動している我が国の自衛隊は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)軍事司令官の軍事指揮下で、前記一の各国の軍事要員によって構成された部隊と一体化して軍事要員としての活動を行っているとの理解で相違ないか、政府の認識を明確に示されたい。

三 南スーダンPKOに軍事要員として派遣され活動している我が国の自衛隊は、国際法上「軍隊」であるか、また、南スーダンPKOに軍事要員として派遣され活動している自衛官は、国際法上「戦闘員」であるか、政府の認識を明確に示されたい。

四 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)第三条第五号ラでは国際平和協力業務の一つとして「国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者(以下このラ及び第二十六条第二項において「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護」(以下「駆け付け警護」という。)が規定され、第二十六条第二項では「自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で(略)武器を使用することができる。」(以下「駆け付け警護に係る武器使用」という。)とされている。駆け付け警護及び駆け付け警護に係る武器使用に関する政府の認識を、以下の項目ごとに個別具体的かつ明確に示されたい。

1 駆け付け警護に係る武器使用に際しては、活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官に武力を用いて「生命又は身体に対する侵害又は危難」を生じさせる又は生じさせるおそれがある個人又は集団(以下「当該敵等」という。)に対して、当該敵等からの発砲行為に先んじて駆け付け警護を行う自衛官が発砲行為等の武器使用をすることは可能と考えているか、また、当該武器使用は国際法上「交戦」に該当するか。
2 前記四の1の武器使用が不可能であるとする場合、当該敵等からの発砲行為を確認した後であれば、それが活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官を目標としたものでなくとも、駆け付け警護を行う自衛官が発砲行為等の武器使用をすることは可能と考えているか、また、当該武器使用は国際法上「交戦」に該当するか。
3 前記四の2の武器使用が不可能であるとする場合、当該敵等からの発砲行為が活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官を目標としたものとの確認ができれば、当該敵等からの発砲行為により活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官の生命又は身体に対する侵害が実際に生じていなくとも、駆け付け警護を行う自衛官が当該敵等を射撃目標として発砲行為等の武器使用を行うことは可能と考えているか、また、当該武器使用は国際法上「交戦」に該当するか。
4 前記四の3の武器使用が不可能であるとする場合、当該敵等からの発砲行為が活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官を目標とし、それが活動関係者又は駆け付け警護を行う自衛官の生命又は身体に対する侵害を実際に生じさせた場合であれば、駆け付け警護を行う自衛官が当該敵等を射撃目標とし、かつ当該敵等の生命又は身体に対する侵害を実際に生じさせる目的で発砲行為等の武器使用を行うことは可能と考えているか、また、当該武器使用は国際法上「交戦」に該当するか。

五 前記四に関して、自衛官が駆け付け警護に係る武器使用を行う際、当該武器使用によって、故意ではなく誤って一般市民や民間人といった非戦闘員を殺傷してしまう事態(以下「自衛官の誤射による民間人殺傷」という。)を政府は想定しているか、明確に示されたい。想定している場合は、当該事態が生じた場合にいかなる対応をいかなる手順で行うこととしているのか、具体的かつ詳らかに示されたい。

六 前記五に関して、南スーダンPKOにおいて、自衛官の誤射による民間人殺傷が発生した場合、当該事態は速やかに国会に報告及び国民に公表されるのか、あるいは当該事態は特定秘密に該当し一般には公表されないのか、政府の認識を明確に示されたい。また、当該事態に関与した自衛官は、いかなる法による裁きをいかなる手順で受けることになるのか、政府の認識を明確かつ詳らかに示されたい。

七 政府基本的見解によれば「現在も、地方を中心に、武力衝突や一般市民の殺傷行為が度々生じている。首都ジュバについても、七月に大規模な武力衝突が発生しており、現在は、比較的落ち着いているが、今後の治安情勢については、楽観できない状況である。政府としても、邦人に対して、首都ジュバを含め、南スーダン全土に「退避勧告」を出している。これは、最も厳しいレベル四の措置であり、治安情勢が厳しいことは十分認識している。」としているが、このように南スーダンの危険性を認識している中で、南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応について、政府としていかなる準備をしているのか、以下の項目ごとに個別具体的かつ明確に示されたい。

1 南スーダンPKOに派遣されている医官は何名か、その医官の医師としての診療経験年数及び主たる専門領域について網羅的かつ具体的に示されたい。また、自衛官が駆け付け警護に向かう際、その部隊には、救急救命処置を実施することの出来る医官を常に帯同するのか、明確に示されたい。
2 南スーダンPKOに派遣される部隊が活動する現場において常に携帯している救急医薬品及び救急処置に用いる器具・材料・備品等を、網羅的かつ具体的に示されたい。

八 前記四及び七に関して、南スーダンPKOに派遣されている自衛官が駆け付け警護に係る武器使用に関連して当該敵等からの武力の行使により死亡した場合、戦死者として扱われることになるのか、あるいは事故死、公務死等とするなど戦死者として扱わないことになるのか、政府の認識を厳粛に示されたい。

九 平成二十七年九月四日、第百八十九回国会参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、私は中谷元防衛大臣(当時)に「以前、元統合幕僚長、NHKの番組内でこうおっしゃった。イラク派遣では、ひつぎを、棺おけですよ、隊員に分からないように持ち込んだんだって、ばれないように、おっしゃっています。それなりの覚悟を持っている大臣にお聞きします。今後の派遣でも、ひつぎ、棺おけ、派遣先に持ち込まれるんですか。イエスかノーかでお答えください。」と質したが明確な答弁はなされなかった。過去の自衛隊海外派遣時に、その派遣先に自衛隊が棺を搬入した事実は存在するのか、その事実が存在するのであれば、網羅的かつ具体的にその詳細を示されたい。また、現在参加している南スーダンPKOにおいて、自衛隊により現地に棺が搬入されている事実はあるか、今後搬入される予定はあるのか、その事実あるいは予定がある場合は棺の数も含めて具体的かつ明確に示されたい。

十 駆け付け警護及び駆け付け警護に係る武器使用に関連して、自衛官が当該敵等による武力の行使によって受傷あるいは死亡した場合であっても、いわゆる「PKO参加五原則」が成立していると判断すれば、南スーダンPKOに派遣している自衛隊を撤収せず活動を継続させるとの政府判断を下すことはあり得るのか、政府の認識を明確に示されたい。

  右質問する。