第192回国会(臨時会)
質問第二四号 千代田カントリークラブへの自衛隊配備に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十八年十一月二日 伊波 洋一
参議院議長 伊達 忠一 殿 千代田カントリークラブへの自衛隊配備に関する質問主意書 本年九月二日の宮古島市役所における若宮防衛副大臣の市長面談および記者会見報道映像(以下「報道映像」という。)、九月六日の稲田防衛大臣の会見概要(以下「大臣会見概要」という。)、九月二十日の千代田住民説明会(以下「千代田説明会」という。)に関して、以下、質問する。 一 千代田カントリークラブ(沖縄県宮古島市上野野原)ついて、本年八月二十九日の琉球新報によると、市は市長名の文書で「私は議会の判断や配備計画の関係法令との適合性、地権者の意向や幅広い市民の意見を参考に、総合的に判断したい」と回答したとあるが、本年十一月一日現在、沖縄防衛局は関係法令との適合性確認ができる建設計画等を未提出であり、よって、市も関係法令との適合性確認は不可能である。つまり、千代田カントリークラブ陸自配備計画の関係法令との適合性は未確認であり、法律的には「決定地」ではありえないと考えるが、陸自駐屯地としての「候補地」なのか「決定地」なのか、政府見解を明らかにされたい。 二 前記一に対する政府見解が「決定地」であるとする場合、千代田カントリークラブに隣接する千代田部落、野原部落の反対決議(民意)を無視した決定ということになるが、それでよいか。この決定は、いつ、誰によってなされたものか、その判断の根拠を示されたい。 三 前記一に対する政府見解が「決定地」であるとする場合、本年六月十二日の第一回宮古島市住民説明会において、千代田カントリークラブ案に関しては白紙のまま未説明、旧大福牧場案に関しても説明不十分および計画不備のため市民の強い反発にあい撤回、同説明会で沖縄防衛局ホームページ上で答えるとしていた事前質問に対する回答も未掲載であるが、宮古島全市民に対する説明責任の履行状況を、説明会や広報等の具体的な実績を挙げて詳細に示されたい。 四 前記一に対する政府見解が「候補地」であるとする場合、前記一の市長文書の「私は議会の判断や配備計画の関係法令との適合性、地権者の意向や幅広い市民の意見を参考に、総合的に判断したい」に基づく市長の総合的判断および承認が「決定地」となる必要条件であるが、沖縄防衛局は土地取得業務を、「決定地」になるまで実施しないということでよいか、政府の見解を示されたい。 五 報道映像において、若宮防衛副大臣は「ミサイル配備については昨今の安全保障環境が厳しい状況なので配備させて頂く形になる」とし、記者からの「(大福牧場には当初誘導弾を保管する火薬庫の配備が予定されていたが)大福の代替地は断念したのか、探しているのか」との質問に対して、「市側と相談させていただく」と回答している。市民は、この回答を、「千代田カントリークラブ以外の市内の駐屯地に弾薬庫(火薬庫)を配備する」という意味であると受け取ると思われるが、それでよいか。 六 大臣会見概要では「Q:関連しまして、中期防に南西地域への陸上自衛隊配備というのが明記されていると思うのですけれども、この陸上自衛隊、宮古島への配備というのは、今の中期防の中で終えられるということには変わりないのでしょうか。A:安全保障上、また、中期防に書かれていることについては、しっかり取組んでまいりたいと思います。」とある。市民は、この稲田防衛大臣の回答を、「中期防推進のため千代田カントリークラブを含む市内の駐屯地に弾薬庫(火薬庫)を配備する」という意味であると受け取ると思われるが、それでよいか。 七 報道映像における若宮防衛副大臣の「火薬庫についてはもともと旧大福牧場で検討していたので、現段階では特に千代田の方の中では作る予定はない。」という発言に宮古島市民は大変戸惑っている。同副大臣が「現段階では、ない」といくら強く断言されても、将来は分からないという不安を市民は払拭できないでいる。そこで質問する。市民は、この発言を、「将来、千代田に火薬庫を配備する可能性がある」との政府見解であると受け取ると思われるが、それでよいか。 八 前記七のとおり、現段階では、千代田カントリークラブに予定される駐屯地には火薬庫を設置しないということである。周辺住民が危惧しているのは爆発現象を伴う火薬物質や毒物汚染リスクのある化合物質である。小さい銃弾も多数保存すれば爆発の際の影響は無視できない。特に、毒物薬品類は些細な事故でも地下水や大気を汚染しかねないので、民家にほぼ隣接する千代田カントリークラブでの保管に関しては、全住民が反対している。そこで、千代田カントリークラブに予定される駐屯地に保管しない予定の火薬類、保管する予定の火薬類のリストを示されたい。 九 当初、千代田カントリークラブには、沖縄本島から、沿岸監視部隊が配備されている与那国島などへの空輸機能を拡充するため、中継地点、展開拠点としてヘリポートを設置する予定だった。しかし、報道映像において、記者からの「ヘリパッドを造ることはないか」との質問に対して、若宮防衛副大臣は「ないです」と回答している。市民は、この回答を、前記七と同じく、「将来、千代田カントリークラブに予定される駐屯地にヘリパッドを設置する可能性がある」との政府見解であると受け取ると思われるが、それでよいか。 十 報道映像において、記者からの「オスプレイの配備は防衛白書に出てましたけど、予定はないか」との質問に対して、若宮防衛副大臣は「ないです」と回答している。市民は、この回答を、前記七及び九と同じく、「将来、オスプレイを千代田カントリークラブに予定される駐屯地に飛来させる可能性がある」との政府見解であると受け取ると思われるが、それでよいか。 十一 本年九月三日の琉球新報の報道では、「緊急時は航空自衛隊宮古島分屯基地にあるヘリポートの使用を検討」するとあるが、このヘリポートにオスプレイが発着することはあるか。 十二 オスプレイ離発着のための耐荷重を航空自衛隊宮古島分屯基地のヘリポートは満たしているのか。 十三 オスプレイ離発着のためのヘリポート耐荷重(設計強度)をトン単位で示されたい。 十四 水陸機動団などの自衛隊が宮古島および周辺海域において訓練する場合、オスプレイは必要か否か、政府の見解を示されたい。 十五 前記十四に対する政府見解が「必要」である場合、千代田カントリークラブに予定される駐屯地のみならず航空自衛隊宮古島分屯基地において、現段階では一時的なオスプレイ訓練配備の予定がなくても、市民は、オスプレイの配備について「将来は可能性がある」と受け取ると思われるが、それでよいか。 十六 千代田説明会では、若宮防衛副大臣と同様、沖縄防衛局企画部の池田次長も千代田カントリークラブへのヘリポートの設置は「現段階では予定はない」という回答に終始した。これにより、千代田部落住民はじめ宮古島市民に「将来は可能性がある」という不安を強く与えることになった。そこで、この不安を払拭する手段として「覚書」のような書面での確約を得ることを検討すると池田次長は回答した。ついては、政府として池田次長に事実確認したうえ「千代田カントリークラブ駐屯地には、弾薬庫、ヘリポートは一切設置しない」という主旨の覚書を宮古島市および千代田部落、野原部落と締結をする意思があるのか否か政府の見解を示されたい。また、覚書を締結する場合、その効力は最低でも半世紀程度は必要と思うが、この効力期限に対する政府見解も示されたい。 十七 「宮古島市国民保護計画」十三頁には「市国民保護計画が対象とする事態」として「弾道ミサイル攻撃」が明記されている。市民は、千代田カントリークラブを自衛隊駐屯地とした場合、国際法上の軍事目標となり、弾道ミサイルが着弾する可能性があると受け取ると思われるが、それでよいか。 十八 「宮古島市国民保護計画」三十二頁では、千代田カントリークラブに予定される駐屯地に弾道ミサイルが着弾した場合を想定して、「市は、関係機関(教育委員会など市の各執行機関、消防機関、県、県警察、宮古島海上保安署、自衛隊等)と緊密な意見交換を行いつつ、消防庁が作成するマニュアルを参考に、季節の別、観光客や昼間人口の存在、混雑や交通渋滞の発生状況等について配慮し、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成する。」と記されている。ところが、宮古島市はこの作成義務を放置したままであることを政府も確認している。自衛隊を駐屯させることで軍事目標となる千代田カントリークラブに関して、宮古島市長は、自衛隊駐屯地の建設は「関係法令との適合性を確認した後承認する」としている。市長のいう「関係法令」には、国民保護法が含まれていることから、市民は、自衛隊配備決定前に政府は必ず同法及び同法に基づき作成された同計画との適合性を宮古島市に確認させ、同市と協働してでも同計画に基づく避難実施要領のパターンを同市に事前に作成させるものと受け取ると思われるが、それでよいか。 十九 「宮古島市国民保護計画」十三頁の「市国民保護計画が対象とする事態」に記されている、「着上陸侵攻」、「ゲリラや特殊部隊による攻撃」、「航空攻撃」についても、前記十八の弾道ミサイルが着弾した場合と同様、市民は、自衛隊配備決定前に政府は必ず同法及び同法に基づき作成された同計画との適合性を宮古島市に確認させ、同市と協働してでも同計画に基づく避難実施要領のパターンを同市に事前に作成させるものと受け取ると思われるが、それでよいか。 二十 「宮古島市国民保護計画」十三頁の「市国民保護計画が対象とする事態」により民間に被害が生じた場合、例えば、弾道ミサイル攻撃や航空攻撃等により、千代田カントリークラブに予定される駐屯地周辺の民家が物的被害を受けた場合、これらの民家損害について、平時における公正な査定金額という意味で、全額を即時一括補償できるか。できるとすれば、その法的根拠を示されたい。 二十一 「宮古島市国民保護計画」十三頁の「市国民保護計画が対象とする事態」により民間に死傷者が生じた場合、例えば、弾道ミサイル攻撃や航空攻撃等により、千代田カントリークラブに予定される駐屯地周辺の住民が死亡あるいは負傷した場合、これらの人身被害について、平時における公正な査定金額という意味で、全額を即時一括補償できるか。できるとすれば、その法的根拠を示されたい。 二十二 前記二十および二十一において法的根拠が示せない場合、千代田カントリークラブに予定される駐屯地周辺の千代田部落や野原部落の家屋土地などの財産消失および両部落に住む老若男女の生命損害に対して補償制度もないままに国際法上の軍事目標を設置するということになるが、「宮古島市国民保護計画」の対象となっている弾道ミサイルが千代田カントリークラブに予定される駐屯地周辺に着弾する可能性は無いと言い切れるのか。言い切れるとすればその根拠を示されたい。言い切れないのであれば、市民は、千代田カントリークラブに予定される駐屯地周辺も弾道ミサイル攻撃を受ける可能性があるものと受け取ると思われるが、それでよいか。 二十三 本年六月二十三日の宮古毎日新聞によると、千代田カントリークラブへの配備について、沖縄防衛局の井上局長は「千代田については使っていくことになるので用地取得に係る手続きになる。場所については決まっているがその中身については今後になる」との見解を示したとある。那覇地方裁判所平良支部平成二十六年(ケ)第七号にかかる競売物件情報(入札期間平成二十七年六月二十四日から平成二十七年七月一日)によれば、陸自駐屯地候補地である千代田カントリークラブの土地の売却基準額は一億六千三百三万円であるが、この千代田カントリークラブの土地取得費用は、平成二十八年度の宮古島の用地取得のための予算額(百八億円)のうち、およそ何億円を予定しているのか示されたい。 右質問する。 |