質問主意書

第191回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一九一第一八号
  平成二十八年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員石上俊雄君提出ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 御指摘の労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条第一項ただし書については、平成三十一年四月一日から中小企業事業主に当該規定を適用することとする労働基準法等の一部を改正する法律案(以下「労働基準法改正法案」という。)を第百八十九回国会に提出したところであり、その早期成立に向けて努力してまいりたい。

一の1の(2)について

 御指摘の「ワーク・ライフ・バランス実現に向けた行動計画の策定及びその認定・評価など、実効性のある措置の法制化」の意味するところが必ずしも明らかではないため、これに関する政府の見解のお尋ねについてお答えすることは困難である。また、御指摘の「業務の効率化や働き方改革に関する意識の啓発」については、例えば、厚生労働省において、企業における所定外労働の削減等の自主的な働き方の見直しの推進等を行うとともに、職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備のため、次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号)第十三条又は第十五条の二の規定に基づき、所定外労働の削減のための措置を講じていること等の一定の基準を満たした事業主を認定し、税制上の優遇措置を講ずることなどを通じて、働き方の見直しを促すなどの取組を行ってきたところである。政府としては、引き続き、仕事と生活の調和推進官民トップ会議において策定された仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章及び仕事と生活の調和推進のための行動指針に基づき、必要な取組を進めてまいりたい。

一の1の(3)について

 御指摘については、政府としては、労働者の健康や生活時間の確保及び事業活動の柔軟性の確保の観点を踏まえ、労使間で十分に議論が尽くされるべき問題と考えている。また、年次有給休暇の取得促進については、使用者は、年次有給休暇の付与日数が十日以上である労働者に対し、年次有給休暇の日数のうち年五日については、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないこととする労働基準法改正法案を第百八十九回国会に提出したところであり、その早期成立に向けて努力してまいりたい。

一の2について

 政府としては、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため、「高度プロフェッショナル制度」を創設する必要性があるものと考えており、「高度プロフェッショナル制度」を創設することとする労働基準法改正法案を第百八十九回国会に提出したところであり、その早期成立に向けて努力してまいりたい。
 また、御指摘の「実効性のある労働時間の上限規制や休息時間の確保のための法的措置」については、政府としては、労働者の健康や生活時間の確保及び事業活動の柔軟性の確保の観点を踏まえ、労使間で十分に議論が尽くされるべき問題と考えているが、平成二十七年二月十三日に労働政策審議会において取りまとめられた「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」(以下「建議」という。)において「時間外労働に係る上限規制の導入や、すべての労働者を対象とした休息時間(勤務間インターバル)規制の導入については、結論を得るに至らなかった」とされたところである。また、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成二十八年六月二日閣議決定)において「労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」とされたところである。これらを踏まえ、引き続き検討が必要であると考えている。さらに、建議において、労働時間等設定改善指針(平成二十年厚生労働省告示第百八号)に「労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、具体策として、深夜業の回数の制限のほか、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」・・・を追加すること」とされたことを踏まえ、同指針に労使が自主的に取り組むことが望ましい措置を規定することを予定しており、今後、こうした取組を推進してまいりたい。

二の1の(1)の①について

 介護休業制度は、介護休業が労働者自らが休業して家族の介護に専念するためのものではなく、介護保険サービス等を利用しながら仕事と介護を両立させるための準備を行うものであることから、介護休業の期間は九十三日を最低限の基準としているものである。なお、独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成二十七年に行った調査によると、家族介護のために仕事を休んだ労働者のうち、七十五パーセントが二週間以内の期間の休業であった。政府としては、引き続き、制度内容の周知や都道府県労働局における適切な指導等を通じ、労働者が仕事と介護を両立しつつ、就業継続できる環境整備を進めてまいりたい。

二の1の(1)の②について

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号。以下「育児・介護休業法」という。)においては、期間を定めて雇用される者であっても、一定の要件を満たした場合は、介護休業等の制度が適用されているところである。また、第百九十回国会において成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十七号)第八条の規定による改正後の育児・介護休業法においては、平成二十九年一月一日から、期間を定めて雇用される者の介護休業の取得要件が緩和されることとなっている。政府としては、引き続き、制度内容の周知や都道府県労働局における適切な指導等を通じ、より多くの労働者が仕事と介護を両立しつつ、就業継続できる環境整備を進めてまいりたい。

二の1の(1)の③について

 御指摘の「介護をしていることそのものに関する不利益取り扱い」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の1の(1)の④について

 社会保険においては、保険料の納付に応じて給付を行うことが原則である。介護休業中の社会保険料の免除については、免除する期間に係る給付の財源を被用者保険全体で負担することについて他の被保険者及び事業主並びに医療保険者の理解を得られるかどうかといった観点や年金財政及び医療保険財政への影響も踏まえて、慎重に検討すべきものと考えている。

二の1の(2)について

 御指摘の地域包括ケアシステムの構築については、政府としては、これまでも、通所介護、短期入所生活介護等の在宅サービスの充実や、小規模多機能型居宅介護及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護の強化を図ってきているほか、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤の確保や、介護する家族の不安や悩みに答える相談機能の強化・支援体制の充実等に取り組むこととしており、これらは、仕事と介護の両立に資するものと考えている。
 また、御指摘の家族介護支援事業については、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十五条の四十五第三項の規定に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の判断により、それぞれの地域の実情に応じて実施されるものとされており、必須事業とすることは考えていない。

二の1の(3)の①について

 御指摘の「介護ロボット機器」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十七年度からは、これまで三年に一度となっていた介護保険の給付対象となる福祉用具の種目の追加等に係る検討を随時行うこととするなど弾力化を図ることとしたところである。

二の1の(3)の②について

 御指摘の「複合的機能を有する福祉用具」の意味するところが必ずしも明らかではないが、二つ以上の機能を有する福祉用具については、それぞれの機能を有する部分を区分できる場合は、それぞれの機能に着目して部分ごとに一つの福祉用具として判断する等の取扱いをしている。

二の1の(3)の③について

 「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」は、介護保険の給付対象となる福祉用具又は住宅改修について、新たな種目・種類の追加等を行おうとする場合にその是非及び内容等について検討を行うことを目的としたものであり、それぞれの製品の開発促進を目的としたものでない。
 なお、当該検討会は、関係者の参考に資するため、原則として公開で開催してきているところである。

二の1の(4)の①について

 「健康増進センター」は、運動面を含めた適切な生活プログラムを提供すること等を設置の目的としており、その機能強化のため、目的を同じくする健康増進のための運動施設を健康増進施設として厚生労働大臣が認定することにより、当該健康増進施設の設置を促進しているところである。
 また、健康診査の受診率向上を図ることは重要であり、政府としては、「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本二十一(第二次))」を推進するものとして策定した国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(平成二十四年厚生労働省告示第四百三十号)において、特定健康診査の実施率の向上等を目標とし、この目標を達成するため、普及啓発等の取組を実施しているところである。
 政府としては、こうした取組等を通じて、国民の健康の増進と介護予防施策の強化に取り組んでまいりたい。

二の1の(4)の②について

 医療保険者は、健康・医療情報を活用してPDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画(以下「データヘルス計画」という。)を策定した上で、保健事業の実施及び評価を行うこととされている。政府としては、これまでも「データヘルス計画作成の手引き」の作成、ホームページへの先進的な取組事例の公表、医療保険者向けの説明会の開催等の取組により、データヘルス計画が着実に実施されるよう取り組んでおり、今後とも、医療保険者による保健事業がより効果的に実施されるよう取り組んでいくこととしている。
 政府としては、こうした取組等を通じて、健康寿命の延伸を図ることに取り組んでまいりたい。

二の2の(1)について

 事業所内保育施設は仕事と子育ての両立支援に資すると考えており、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条の二第一項に規定する仕事・子育て両立支援事業においては、既存の事業所内保育施設の利用定員を増やすとき及び利用定員が満たされていない場合に当該施設の設置主体である事業主以外の事業主が当該利用定員に満たない部分の定員部分を活用するときを、助成の対象としている。

二の2の(2)について

 御指摘の「育児短時間勤務制度」については、育児・介護休業法第二十三条第一項の規定により、事業主は、三歳未満の子を養育する労働者に関して、原則として、当該労働者の申出に基づく所定労働時間の短縮措置を講ずることが義務付けられているところであるが、これは、労働政策審議会における公労使の議論を踏まえて設定されたものである。
 なお、育児・介護休業法第二十四条第一項第三号において、三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、所定労働時間の短縮措置等を講ずることが事業主の努力義務とされている。政府としては、引き続き、制度内容の周知や都道府県労働局における適切な指導等を通じ、労働者が仕事と育児を両立しつつ、就業継続できる環境整備を進めてまいりたい。

二の2の(3)について

 御指摘の「育児短時間勤務の例外の交替勤務による製造業について、職場の事情に合わせて導入し、運営している例もあるため、こういった場合の短時間勤務の要件について緩和するべき」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の2の(4)について

 病児保育事業(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第十三項に規定する病児保育事業をいう。以下同じ。)は、子育てしながら就労する保護者への支援として非常にニーズが高い重要なものであると認識している。当該事業は、子ども・子育て支援法第五十九条に規定する地域子ども・子育て支援事業の一つとされており、また、同法第六十八条第二項の規定に基づき、市町村に対し、国は必要な交付金を交付しているところである。政府としては、市町村が行う病児保育事業が適切かつ円滑に行われるよう、平成二十八年度から、市町村が行う病児保育事業の施設整備に対する財政支援を行うことができるよう予算措置を講じており、引き続き、御指摘の病児・病後児保育の充実・強化のために必要な支援策を講じていく考えである。

二の2の(5)の①について

 障害児及び障害者(以下「障害児等」という。)とその保護者を支援していくことは重要であると考えており、これまでも居宅訪問型保育事業や放課後等デイサービスの創設等を行ってきたところである。
 これらの取組により、障害児等とその保護者のニーズに応じた支援は着実に進んでいるものと考えており、今後とも、個々人の特性に応じたサービスの提供体制を確保し、障害児等とその保護者を支援してまいりたい。

二の2の(5)の②について

 市町村及び都道府県が障害福祉計画を定めるに当たって即すべきものとされている障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制の整備並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成十八年厚生労働省告示第三百九十五号。以下「基本指針」という。)では、「障害児支援の体制整備に当たっては、子ども・子育て支援法等に基づく子育て支援施策との緊密な連携を図る必要がある」旨を記載し、障害児の保護者の両立支援についての視点も盛り込んでいるところである。今後、基本指針の見直しに当たっても、同様の視点の下、市町村及び都道府県が障害児福祉計画を定めることができるようにしてまいりたい。

二の2の(5)の③について

 障害児に対して個別に通学等の移動支援を給付することについては、障害児の通学等に関する訓練を児童福祉法第六条の二の二第一項に規定する障害児通所支援において実施することも含め検討することとしている。