質問主意書

第191回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一九一第一〇号
  平成二十八年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出臨床研究法案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出臨床研究法案に関する質問に対する答弁書

一の1について

 第百九十回国会に提出した臨床研究法案(以下「法案」という。)においては、研究対象者の人権の尊重等の重要性を踏まえ、第一条において、国民の臨床研究(法案第二条第一項に規定する臨床研究をいう。以下同じ。)に対する信頼の確保を図ることを通じてその実施を推進し、もって保健衛生の向上に寄与することを目的としている。
 なお、前回答弁書(平成二十八年六月七日内閣参質一九〇第一四二号をいう。以下同じ。)二についてでお答えしたとおり、臨床研究実施基準(法案第三条第一項に規定する臨床研究実施基準をいう。以下同じ。)の内容については、今後定めることとしているが、特定臨床研究(法案第二条第二項に規定する特定臨床研究をいう。以下同じ。)の実施に当たり、臨床研究の対象者の保護が必要である旨を明示することを、臨床研究実施基準において規定することを検討してまいりたい。

一の2について

 前回答弁書二についてで「御指摘の「被験者の人間の尊厳、人権の尊重」の意味するところが必ずしも明らかではない」としたのは、御質問における「被験者の人間の尊厳、人権の尊重」の意味するところが必ずしも明らかでない旨を述べたものである。なお、臨床研究の対象者の人権の保護の重要性に鑑み、法案においては、臨床研究の対象者の人権の保護に資する臨床研究の実施の手続等を定めているところである。

一の3について

 いわゆる臨床研究についての法規制については、高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会において、高血圧症治療薬の臨床研究に係る事案の状況把握及び必要な対応等の検討が行われ、平成二十六年四月に取りまとめた高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)において、「法制度についての検討に当たっては・・・様々な影響等を十分考慮の上、本年秋を目処に検討を進めるべきである」とされたことから、厚生労働省に設置した臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会において検討を行ったものであり、御指摘の疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会合同委員会においていわゆる臨床研究についての法規制について議論されなかったことについて、問題があったとは考えていない。

二について

 臨床研究実施基準の内容については、今後定めることとしているが、御指摘の「特定臨床研究における未承認医薬品を初めて人に投与する際の安全性を確認する非臨床試験に対してGLP(Good Laboratory Practice)への準拠を求めること」については、臨床研究実施基準の策定の際に検討してまいりたい。

三の1について

 御指摘の「マイクロドーズ臨床試験」が、仮に、マイクロドーズ臨床試験の実施に関するガイダンス(平成二十年六月三日付け薬食審査発第〇六〇三〇〇一号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)における「マイクロドーズ臨床試験」を意味するものであるとすれば、法案第二条第一項に規定する「医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」に含まれると考えられる。また、御指摘の「PET医薬品、MRI用の造影剤を用いるが、これらの薬物の性能を明らかにすることが目的ではなく、人体の病態生理メカニズムを観察することを目的とする研究」及び「体外診断機器であるCTや造影剤を用いないMRIにより人体の構造等の観察を目的とし・・・これら機器の有効性安全性評価は目的に含んでいない研究」については、同項に規定する「医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」に含まれないと考えられる。

三の2について

 法案においては、特定臨床研究を除く臨床研究を実施する者に対しては、法案第四条第一項に基づき、特定臨床研究を実施する者が従うことを義務付けられるものと同一の臨床研究実施基準に従って臨床研究を実施するよう努めなければならないことと規定している。

三の3について

 臨床研究実施基準の内容については、今後定めることとしている。なお、いわゆる監査については、必要に応じて実施することを臨床研究実施基準において規定することを検討している。

三の4について

 医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究でないものについては、臨床研究には該当せず、法案においては規制していない。

三の5について

 御指摘の塩崎厚生労働大臣の答弁は、欧州連合(以下「EU」という。)においては、EUとして医療技術に係るいわゆる臨床研究に対する規制を行っているものではない旨を述べたものであり、EU加盟各国において医療技術の研究に対する規制が行われていない旨を述べたものではない。

四の1について

 再生医療等製品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第二条第九項に規定する再生医療等製品をいう。以下同じ。)については、臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について(平成二十二年三月三十一日付け薬食発〇三三一第七号厚生労働省医薬食品局長通知)及び「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」に関する質疑応答集(Q&A)について(平成二十三年三月三十一日付け薬食監麻発〇三三一第七号厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)の考え方により取り扱っているところである。

四の2について

 再生医療等製品の治験製品(再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成二十六年厚生労働省令第八十九号)第二条第七項に規定する治験製品をいう。)については、治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について(平成二十年七月九日付け薬食発第〇七〇九〇〇二号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「治験薬GMP通知」という。)は適用されないが、治験(医薬品医療機器等法第二条第十七項に規定する治験をいう。以下同じ。)の依頼をした者又は自ら治験を実施する者が、治験薬GMP通知及び再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成二十六年厚生労働省令第九十三号)等を参考に適切な製造管理及び品質管理等を行うよう、指導を行っている。
 御指摘の「未承認再生医療製品とみなすべき製造物について承認申請を目的とせずに、臨床研究を行う場合」については、仮に、御指摘が、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)第二条第一項に規定する再生医療等の提供に該当する場合であるとすれば、その場合には、同法が適用される。

四の3について

 衆議院議員郡和子君提出臨床研究に関する質問に対する答弁書(平成二十八年六月七日内閣衆質一九〇第三二一号)三の4についてでお答えしたとおり、医薬品医療機器等法は医薬品の品質、有効性及び安全性の確保等の観点から規制を行うものであるが、法案は臨床研究の対象者の保護の観点から規制を行うことが必要であり、また国民の臨床研究に対する信頼の確保を図る観点からも適当と判断し、特定臨床研究の対象者からの同意を得なければならないこととする等、医薬品医療機器等法とは別の枠組みで規制することとしたものである。

四の4について

 臨床研究実施基準の内容については、今後定めることとしているが、特定臨床研究の実施に当たり、特定臨床研究を実施する者がどのような手続を経る必要があるかについては、臨床研究実施基準の策定の際に検討してまいりたい。

五の1及び2について

 法案第二条第二項第一号に規定する特定臨床研究は、医薬品等製造販売業者(同条第四項に規定する医薬品等製造販売業者をいう。)又はその特殊関係者(同条第二項第一号に規定する特殊関係者をいう。)から研究資金等(同号に規定する研究資金等をいう。)の提供を受けて実施する臨床研究であり、これに該当しないとすれば、同号に規定する特定臨床研究ではない。