質問主意書

第191回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一九一第九号
  平成二十八年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員山本太郎君提出不登校施策の現状に関する質問主意書に対する答弁書の不明確な部分等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出不登校施策の現状に関する質問主意書に対する答弁書の不明確な部分等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの「政令指定都市が行う配慮」については、文部科学省から各政令指定都市教育委員会に確認したところ、基本的に、当該政令指定都市が存する都道府県が実施する高等学校入学者選抜に準じた取扱いを行っている旨の回答を得たところであり、現時点においては、学校現場の負担軽減の観点も踏まえ、都道府県と同様の調査を実施する必要はないものと考えている。

一の2について

 お尋ねの埼玉県における「不登校の生徒などを対象とした特別な選抜」については、先の答弁書(平成二十八年六月二日内閣参質一九〇第一二二号。以下「先の答弁書」という。)一の1についてで述べた「不登校の生徒が在籍する中学校が作成した調査書における出欠及び各教科の学習の記録については受験する高等学校において入学者選抜の資料としないことなどの配慮」に該当する。
 また、埼玉県の事例については、不登校の生徒の高等学校入学者選抜における調査書の取扱いについて配慮がなされているものであり、調査書そのものを入学者選抜に用いない静岡県及び京都府の事例とは分けて集計している。

一の3について

 文部科学省としては、高等学校入学者選抜においては、不登校の生徒について一定の配慮を行うことが望ましいと考えているため、都道府県教育委員会等に対し、全国の対応状況を示しつつ、改善を促しているところである。
 また、お尋ねの「その細やかな実情を確認」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同省において毎年度実施している各都道府県の高等学校入学者選抜の改善等に関する状況の調査(以下「状況調査」という。)により、引き続き各都道府県の状況の把握に努めてまいりたい。

一の4について

 お尋ねの「分析等研究」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、文部科学省が各都道府県教育委員会等を対象として毎年度開催している「全国高等学校入学者選抜改善協議会」において、状況調査の結果を踏まえた研究協議を実施しているところである。
 また、「通知等を発出することを考えてはどうか」とのお尋ねについては、既に多くの都道府県において一定の配慮が行われているところであり、現時点において新たな通知を発出することは考えていないが、引き続き、各都道府県教育委員会等に対し、各種会議において全国の対応状況を示しつつ、改善を促してまいりたい。

二の1について

 お尋ねの「高校生を受け入れている都道府県設置以外の教育支援センター」については、文部科学省において実施した「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」によると、平成二十六年度においては、北海道に一か所、青森県に二か所、山形県に三か所、茨城県に六か所、栃木県に一か所、千葉県に一か所、東京都に三か所、神奈川県に一か所、新潟県に三か所、長野県に二か所、岐阜県に一か所、愛知県に一か所、滋賀県に二か所、京都府に一か所、兵庫県に三か所、奈良県に三か所、和歌山県に一か所、鳥取県に一か所、島根県に三か所、岡山県に一か所、広島県に四か所、愛媛県に一か所、高知県に四か所、佐賀県に一か所、沖縄県に二か所設置されているが、お尋ねの「区市町村別」の数については、同省としては把握していない。

二の2について

 文部科学省においては、地方公共団体における教育支援センターの設置の促進や、IT等を活用した学習を可能とする等教育支援センターの機能強化を図るためのモデル事業を実施しているところである。

二の3について

 文部科学省としては、東京都及び北海道は教育支援センターを設置していないと承知している。なお、東京都及び北海道内の市区町村が設置している教育支援センターの運営が民間に委託されているかどうかについては、同省としては把握していない。

二の4について

 学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第五十六条(同規則第七十九条、第七十九条の六及び第百八条第一項において読み替えて準用する場合を含む。)及び第八十六条(同規則第百八条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により不登校の児童生徒又は療養等による長期欠席生徒等を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校のうち、その前身が教育支援センターであったものとして文部科学省が把握しているものは、御指摘の学科指導教室「ASU」のみである。また、お尋ねの「特例校への申請をしていないが同等のカリキュラム等を持つ教育支援センター」については、「同等のカリキュラム等を持つ教育支援センター」の意味するところが必ずしも明らかではないことから、お答えすることは困難である。

二の5について

 お尋ねの「学校への復帰」については、不登校の児童生徒が自らの意思に基づき在籍する学校に通学するようになることという意味で用いたものである。

二の6について

 御指摘の「当事者である不登校児童生徒等の意見や不登校を支援する当事者団体等の声を、特定の団体やグループに偏らないようにしつつ、本人に負担をかけない形で取り入れる仕組み」の意味するところが必ずしも明らかではないが、教育支援センターの運営は、不登校の児童生徒やその保護者のニーズを踏まえて行われるべきであると考えており、お尋ねの「再度試案を作る」ことは考えていないが、今後とも、様々な機会を捉え、このような教育支援センターの在り方について周知に努めてまいりたい。

三について

 平成二十八年七月に文部科学省の「フリースクール等に関する検討会議」が取りまとめた「不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について~長期に不登校となっている児童生徒への支援の充実~(審議経過報告)」(以下「フリースクール等に関する検討会議の審議経過報告」という。)においては、経済的支援は個々の不登校の児童生徒の家庭に対するものとして示されているところであり、同省としては、お尋ねの調査を行う予定はない。

四の1について

 不登校の児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等については、複数の教育委員会からヒアリング等を実施し、その意見を求めているところである。また、御指摘の「児童生徒を学ぶ権利を持つ主体であるという視点を備えた」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」(平成十七年七月六日付け十七文科初第四百三十七号文部科学省初等中等教育局長通知。以下「局長通知」という。)においては、指導要録上出席扱いとするための要件を詳細に定めているため、これに加えて御指摘の「ガイドライン」を改めて示す必要はないと考える。

四の2について

 局長通知により不登校の児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合に指導要録上出席扱いとすることは、義務教育段階における不登校の児童生徒を対象としたものであることから、高等学校の生徒に係る調査は行っていない。

四の3について

 御指摘の「子どもにとって強制や負担にならない形での、自発的な学習を支援する形で周知」の意味するところが必ずしも明らかではないが、不登校の児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行うに際しては、自らの意思で学習に取り組むことが重要であると考えており、今後の局長通知の周知に際しては、その点についても併せて周知するよう努めてまいりたい。

五の1から4までについて

 文部科学省が平成二十六年度に実施した中学校夜間学級等に関する実態調査において、中学校夜間学級において学習する生徒の年齢別生徒数を調査したところ、学齢生徒の数は零であったが、いじめ等の理由により在籍する中学校へ通学することが困難な状況にあるなどの事情から学齢生徒が希望した場合に中学校夜間学級において学習することは現行法令上差し支えなく、平成二十八年七月に同省の「不登校に関する調査研究協力者会議」が取りまとめた「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」において、その旨を示しているところである。

五の5について

 お尋ねの「通信での学習やIT等による通信教育について、夜間中学でも認めていく」の趣旨が必ずしも明らかではないが、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)附則第八条に規定する通信による教育については、昭和二十二年四月に義務教育の年限が中学校段階まで延長されたことに伴い、昭和二十一年三月三十一日以前の尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者を対象として設けられた特例的な制度であり、同条の規定を受けて定められた中学校通信教育規程(昭和二十二年文部省令第二十五号)の改正は予定していない。なお、現在でも、中学校夜間学級に在籍し、不登校となった生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合に、指導要録上出席扱いとすることは可能である。また、中学校夜間学級において、同条第一項に規定する者に対して同規程に基づき通信による教育を行うことも可能である。

五の6について

 文部科学省としては、現在、中学校夜間学級が設置されていない道県の教育委員会に対し、中学校夜間学級の設置に向けた取組を促すとともに、その設置に向けた検討を支援する「中学校夜間学級の設置促進事業」を実施しているところである。

五の7について

 御指摘の「夜間中学に転入の強制をさせ、それが本人の意思という形にならないよう、設計をすべき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、学齢生徒の中学校夜間学級への転学に当たっては、本人の意思を尊重する必要があると考えている。また、御指摘の「通信制中学の募集をしている自治体に指導などせず」については、その意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。

六の1について

 厚生労働省においては、医療、福祉、心理、教育など様々な職種の支援者の育成を図るため、「発達障害の人たちの支援に関わる専門家のための研修テキスト」を公表しており、この中で、発達障害者に対する適切な診断や投薬等について周知している。また、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターにおいて各都道府県や政令指定都市の中で発達障害に関して指導的な立場にある医師等に診断や治療等についての研修を行うとともに、都道府県や政令指定都市が当該研修の内容を踏まえて開催する「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」に要する費用の一部を同省において補助している。これらの取組により、発達障害に対する適正な診断等について、医師等に必要な情報が提供されていると考えている。

六の2について

 御指摘の附帯決議と「子どもの権利委員会の総括所見」との矛盾の有無については、政府としてお答えする立場にない。

六の3について

 お尋ねについては、厚生労働省において、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十八条の十の規定に基づき医薬品の製造販売業者等からの副作用等の報告等を受けて、医薬品の製造販売業者に対し、必要な使用上の注意の改訂を指示するなど、医薬品の適正な使用に資する情報が提供されるよう適切に対処しているところである。

七の1について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第十六条第一項又は第二十三条第一項の規定により、個人情報取扱事業者があらかじめ本人の同意を得ないで行う個人情報の目的外利用又は個人データの第三者提供は原則として禁止されている。ただし、同法第十六条第三項第三号又は第二十三条第一項第三号に規定する「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」等一定の場合についてはその例外とされているところであり、御指摘のガイドラインにおける記述は、その事例についての説明をしたものである。

七の2について

 御指摘のガイドラインにおいて、お尋ねの「問題行動」についての定義は定めていないが、先の答弁書八についてでお答えしたとおり、不適切な行動という意味で用いたものではなく、一般的に不登校などの行動が関係機関等の間で児童の情報を交換して対処することが必要な課題であるという認識を示したものである。

七の3について

 御指摘のガイドラインにおける「児童相談所、学校、医療行為等の関係機関」については、事案に応じて児童生徒の情報を交換するにふさわしい適切な機関を想定しているものであり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

八について

 お尋ねの「フリースクール、フリースペース、居場所等」については、確立した定義はないが、フリースクール等に関する検討会議の審議経過報告においては、「民間の団体等」という用語が用いられており、これについては、「不登校児童生徒を受け入れ、相談や学習機会の提供等を行っている民間の団体、施設のことであり、例えば、フリースクールやフリースペースなどの名称で運営されている。」と説明されているところである。

九の1について

 不登校の児童生徒を受け入れている民間の団体等で、暴行等の問題が生じたものがあったことは承知している。

九の2について

 フリースクール等に関する検討会議の審議経過報告においては、教育委員会及び学校と不登校の児童生徒を受け入れている民間の団体等との連携を推進する上で教育委員会の職員が民間の団体等を訪れその実態を知ることや、民間の団体等による自主的な取組として相互の評価を実施すること等が示されており、こうした取組を通じて、民間の団体等の質の向上が図られるものと期待している。また、「不登校への対応の在り方について」(平成十五年五月十六日付け十五文科初第二百五十五号文部科学省初等中等教育局長通知)において、不登校の児童生徒が民間施設において相談・指導を受ける際に、保護者や学校、教育委員会として留意すべき点を目安として示した「民間施設についてのガイドライン(試案)」を示しているところである。

十について

 政府としては、現時点で御指摘の「子どもオンブズパーソン」を設置する予定はないが、御指摘の「悪質な自称「フリースクール」等の悪意を持つ主宰者」や「学校で起きる権利侵害」に関する問題については、個別の事案に応じ、関係機関が連携し、適切に対応してまいりたい。

十一の1について

 お尋ねの「登校の義務」の意味するところが必ずしも明らかでないが、日本国憲法第二十六条第二項及び教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第一項に定める保護者のその保護する子に対する普通教育を受けさせる義務を踏まえ、学校教育法第十七条の規定は、児童生徒が普通教育を受けることができるよう、保護者に対してその保護する子を学校に就学させる義務を負わせているものである。

十一の2について

 御指摘の「親や保護者が、子どもの意思と学習権を尊重して、教育権の行使として家庭教育を行う状態」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)第二十条に規定する正当な事由については、個別の事案に応じて判断されるものであるが、文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」においては、不登校について、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く。)をいう。なお、欠席状態が長期に継続している理由が、学校生活上の影響、あそび・非行、無気力、不安など情緒的混乱、意図的な拒否及びこれらの複合であるものとする。」と定義しており、一般論として申し上げれば、そのような不登校に該当する場合については、同条に規定する正当な事由に該当するものと認識している。ただし、保護者が単にその保護する子に対する教育上の方針に基づき児童生徒を就学させない場合については、同条に規定する正当な事由には該当しないものと認識している。

十一の3について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、学校教育法第十七条の規定は、保護者に対し、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を小学校等に就学させる義務を負わせるとともに、子が小学校等の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を中学校等に就学させる義務を負わせているものである。

十一の4について

 十一の2についてで述べたとおり、文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」においては、不登校について、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く。)をいう。なお、欠席状態が長期に継続している理由が、学校生活上の影響、あそび・非行、無気力、不安など情緒的混乱、意図的な拒否及びこれらの複合であるものとする。」と定義しており、そのような不登校については、基本的には学校教育法第十八条に定める「その他やむを得ない事由」には含まれないが、一般論として申し上げれば、学校教育法施行令第二十条に規定する正当な事由に該当するものと認識している。また、不登校の児童生徒に対しては、教育支援センターの設置の促進等を通じて、学習等の支援を行っているところである。

十一の5について

 御指摘の「「適切な措置をとる」ことを認めている」の趣旨が必ずしも明らかではないが、いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)は、いじめの防止等(いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。以下同じ。)のための対策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とするものであり、同法第二十三条第一項においては、学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとる義務を課しているところであり、お尋ねの「不登校児童生徒に対して親等が児童の求めに応じて行う家庭での学習」についての義務までを課しているものではないと考えている。
 なお、「不登校への対応の在り方について」(平成十五年五月十六日付け十五文科初第二百五十五号文部科学省初等中等教育局長通知)において、学級担任等の教職員が不登校の児童生徒の状況に応じて家庭への訪問を行うこと等を通じてその生活や学習の状況を把握し、児童生徒本人やその保護者が必要としている支援をすることは大切である旨周知しており、ここにいう「保護者が必要としている支援」には、いじめにより不登校となった児童生徒に対して、その保護者が当該児童生徒の求めに応じて行う学習指導について学校が行う支援も含まれるものと考えている。

十一の6及び7について

 御指摘の「親の教育義務の一環」、「教育義務の行使」及び「憲法、条約及びその他の法に基づく親や保護者の教育権」の意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難であるが、日本国憲法第二十六条第二項及び教育基本法第五条第一項に定める保護者のその保護する子に対する普通教育を受けさせる義務を踏まえ、学校教育法第十七条の規定は、保護者に対し、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を小学校等に就学させる義務を負わせるとともに、子が小学校等の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、子を中学校等に就学させる義務を負わせているものである。