質問主意書

第191回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一八号

ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年八月三日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書

 昨年提出した、「ワーク・ライフ・バランスの実現に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第二一七号)に対する答弁書(内閣参質一八九第二一七号)が閣議決定されてから、約一年が経過している。この間のワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する取組みを踏まえ、以下のとおり質問する。

一 総実労働時間短縮のための取組みについて

1 長時間労働の是正について
(1) 時間外労働を削減し、長時間労働を是正するために、労働基準法第三十七条第一項の「一ヵ月六十時間超の時間外労働の割増率五十パーセント」を中小企業へ早期適用すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) ワーク・ライフ・バランス実現に向けた行動計画の策定及びその認定・評価など、実効性のある措置の法制化を行うとともに、業務の効率化や働き方改革に関する意識の啓発を引き続き徹底するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 年次有給休暇の最低付与日数を少なくとも十五日以上とするとともに、希望する誰もが二週間(年休十日)以上の休暇を連続取得できるよう、使用者の責任で、職場ごとに各人の取得日程を調整させることを義務付けるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 裁量労働について
(1) 現行制度においても裁量労働が導入されており、当面柔軟な働き方についての新たな制度はこれ以上必要ないと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 現行制度においても、過重労働などの懸念がある。健康管理や創造性発揮の観点からも、柔軟な働き方が過重労働につながらないよう、実効性のある労働時間の上限規制や休息時間の確保のための法的措置について検討するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 生活との調和が可能となる柔軟な働き方の促進について

1 介護支援制度の充実について
(1) 介護休業の充実について
 電機・電子・情報関連産業で働く組合員約六十万名で構成する産業別労働組合「電機連合」で行った仕事と介護両立事例のヒアリングで、大きく二つの実態・課題が明らかになっている。
 一つ目の課題は、複数の要因発生や症状の進行によって介護体制の見直しが必要となるケースであり、現場からは「母親の介護を父親と協力して行っていたが、父親が入院し、退院までの期間およびその後はほぼ一人で、母親の介護が必要になっている」、「認知症の悪化により、常時見守りが必要になった。若年性認知症の場合はさらに深刻」等の切実な声があがっている。
 二つ目は、介護休職(休業)を多様に活用せざるを得ない実態で、現場からは「介護休業を一年間取得したが、親の認知症が進み、入所できる施設を探したが見つかるまでに時間が相当かかり、さらに、入所時に施設に慣らすためにも時間が必要となった」、「休職制度がなければ、離職も考えていた」等の過酷な介護体験が数多く寄せられている。
 これらヒアリング結果から判断すると、仕事と介護の両立支援のためには更なる制度の充実が必要なのではないかと考え、以下質問する。
① 介護休業期間は一年程度を確保するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
② 非正規労働者についても制度が取得できるよう、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児介護休業法」という。)の内容の周知を含む環境整備を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
③ 育児介護休業法に規定する介護休業申出をし、又は介護休業をした場合だけでなく、介護をしていることそのものに関する不利益取り扱いを禁止するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
④ 介護休業中の社会保険料について労使ともに免除するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 地域包括ケアシステムにおける両立支援について
① 地域包括ケアシステムの構築においては、介護者の仕事と介護の両立の観点を含め推進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
② 介護保険法によって、地域支援事業の一つとして任意事業となっている「家族介護支援事業」を必須事業とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
③ 同居家族が就労している間の、見守りサービスや生活支援等の日中独居対策の充実・強化、柔軟な対応で在宅介護を支援する「小規模多機能型居宅介護施設」の充実を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 介護ロボット機器に対する介護保険適用の促進について
① 介護ロボット機器への介護保険適用の促進を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
② 複合的機能を有する福祉用具への介護保険適用の検討を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
③ 「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」にて検討される福祉用具等の介護保険の給付対象への追加について、検討の結果、対象外とする場合はその理由を開示して事業者等にフィードバックし今後の開発促進につなげるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(4) 介護予防施策の充実・強化について
① 健康増進センターの機能強化や地域における健康診断実施率の向上等の介護予防施策の強化を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
② データヘルス計画のPDCAサイクルを着実に実施し、また好事例については共有を図るなど健康寿命の延伸に向けた取組みを推進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 育児支援の充実について
(1) 企業内託児所への助成の充実について
 安心して産み、育てることができる環境整備の観点から、企業内託児所への助成を充実させる必要があると考える。新設された企業主導型保育事業につき、既設の託児所についても申請・支給の対象とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 育児短時間勤務制度の利用期間の延長について
 育児短時間勤務制度の対象となる子の年齢を小学校低学年まで引き上げるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 育児短時間勤務の例外の交替勤務について
 育児短時間勤務の例外の交替勤務による製造業について、職場の事情に合わせて導入し、運営している例もあるため、こういった場合の短時間勤務の要件について緩和するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(4) 病児・病後児保育の充実について
 子ども・子育て支援新制度で「地域子ども・子育て支援事業」に位置づけられている病児保育事業の実効性を高め、さらなる病児・病後児保育の充実・強化を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(5) 障害児・障害者の保護者の仕事と家庭の両立支援について
① 障害児・障害者を支えながら働き続けることのできる社会支援体制や仕事と家庭を両立できるための障害福祉サービスの充実・強化を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
② 障害児福祉計画には障害児の保護者の両立支援の視点も盛り込むべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
③ 通学等の移動支援について、個別給付化に向けた検討を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。