質問主意書

第191回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

国際人道法違反の宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年八月三日

伊波 洋一   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国際人道法違反の宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書

 平成十五年六月成立の武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律において、国際人道法の的確な国内実施を確保しなければならなくなった日本政府は、平成十六年六月、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下「国民保護法」という。)などの有事法制関連七法案を成立させ、主要な国際人道法であるジュネーヴ諸条約第一追加議定書および第二追加議定書を含む関連三条約締結の国会承認を得た。同年八月、日本はジュネーヴ諸条約両追加議定書に加入した。
 その後、国民保護法に基づいて沖縄県国民保護計画(平成十八年)と宮古島市国民保護計画(平成二十年)が策定され法体系が整備された。ところが、日本政府はじめ沖縄県、宮古島市は、国民保護計画を実施せず、今現在計画の実効性は担保されていない。つまり、国、県、市が計画実施を放置したまま、なんと十年を経ようとしている。この現状は国民保護法成立前の状態と何らかわりはなく、国際人道法の的確な国内実施は全くと言って良いほどに確保されておらず、明白な国際人道法違反状態となっている。
 このような住民保護の空白地帯である島嶼部を軍備で埋めようとする日本政府の国防策は、国際人道法を軽視した軍民混戦を招く非人道的な行為である。宮古島のような島嶼部に軍事目標となりうる施設を設置する場合は、予め住民を島外避難させる国民保護計画の実効性が担保されていなければならない。有事の際に大半の住民が取り残された宮古島を敵国の主たる軍事目標とし、軍民混戦の被侵略かつ奪回を想定する日本政府は、明白な国際人道法違反国家であることを自覚しなければならない。
 国民保護計画の実施に関し、糸数慶子参議院議員が「石垣島への自衛隊配備の問題に関する第三回質問主意書」(第百九十回国会質問第七〇号)で、石垣島における具体的な避難計画の策定について質問したところ、「お尋ねの「具体的な避難計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、沖縄県国民保護計画、沖縄県地域防災計画、石垣市国民保護計画及び石垣市地域防災計画には、避難に関する計画が含まれているものと承知している。」との答弁であった。
 この答弁の姿勢は、国民保護法第十条(国の実施する国民の保護のための措置)および同三条(国、地方公共団体等の責務)に違反していると思われる。国民保護計画の実効性を担保させるのは、国際法を的確に国内実施させる国の責務であることは言うまでもないにもかかわらず、政府は、はぐらかしつつ、具体的な避難計画内容に触れぬまま、他人事のような不誠実な答弁に終始した。
 以上を踏まえ、以下質問する。なお、答弁なきものはすべて未実施と解釈する。

一 避難実施要領のパターンの作成

 宮古島市国民保護計画三十二頁によると、市は、関係機関(教育委員会など市の各執行機関、消防機関、県、県警察、宮古島海上保安署、自衛隊等)と緊密な意見交換を行いつつ、消防庁が作成するマニュアルを参考に、季節の別、観光客や昼間人口の存在、混雑や交通渋滞の発生状況等について配慮し、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成するとあるが、市は避難実施要領のパターンを作成しているのか、政府の把握しているところを示されたい。作成している場合は、避難実施要領のパターンの内容を政府として把握し、具体的な避難計画が実効的に担保され、国際人道法の的確な国内実施が確実となっているものを精査した上で詳細に示すとともに、政府の評価を示されたい。もし作成していない場合は、作成の促進に向けた今後の政府の方針を示されたい。

二 島外避難における備え

 宮古島市国民保護計画三十三頁によると、市は、住民の島外避難について、国(内閣官房、国土交通省)から示された「離島の住民の避難に係る運送事業者の航空機や船舶の使用等についての基本的な考え方」(平成十七年十二月十九日閣副安危第四百九十八号内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付内閣参事官(事態法制企画担当)通知、国政調第百六十九号国土交通省政策統括官付政策調整官(危機管理担当)通知)を踏まえ、可能な限り全住民の避難を視野に入れた体制を整備するものとする。この場合において、市は、県及び指定地方公共機関との連携協力に努めるとともに、以下に掲げる情報を把握するものとする。①島の全住民を避難させた場合に必要となる輸送手段②想定される避難先までの輸送経路③島外からの輸送手段を受け入れる場合の受入体制④島内にある港湾、空港等までの輸送体制など、とあるが、全住民の避難を視野に入れた体制の整備及び情報の把握について、市は具体的にどのような措置をとっているのか政府として把握し、具体的な避難計画が実効的に担保され、国際人道法の的確な国内実施が確実となっているものを精査した上で詳細に示すとともに、政府の評価を示されたい。もし措置をとっていない場合は、島外避難への備えを進めるための今後の政府の方針を示されたい。

三 避難実施要領の策定

 宮古島市国民保護計画六十八頁によると、①避難の指示の内容の確認(地域毎の避難の時期、優先度、避難の形態)②事態の状況の把握(警報の内容や被災情報の分析。特に、避難の指示以前に自主的な避難が行われる状況も勘案)③避難住民の概数把握④誘導の手段の把握(屋内避難、徒歩による移動避難、長距離避難・運送事業者である指定地方公共機関等による運送)⑤輸送手段の確保の調整(輸送手段が必要な場合、県との役割分担、運送事業者との連絡網、一時避難場所の選定)⑥要援護者の避難方法の決定(避難支援プラン、災害時要援護者支援班の設置)⑦避難経路や交通規制の調整(具体的な避難経路、県警察との避難経路の選定・自家用車等の使用に係る調整、道路の状況に係る道路管理者との調整)⑧職員の配置(各地域への職員の割り当て、現地派遣職員の選定)⑨関係機関との調整(現地調整所の設置、連絡手段の確保)⑩自衛隊及び米軍の行動と避難経路や避難手段の調整(県対策本部との調整、国の対策本部長による利用指針を踏まえた対応)を考慮した避難実施要領を策定することとされているが、市の避難実施要領の策定状況を政府として把握し、具体的な避難計画が実効的に担保され、国際人道法の的確な国内実施が確実となっているものを精査した上でそれぞれ詳細に示すとともに、政府の評価を示されたい。もし策定していない場合は、策定の促進に向けた今後の政府の方針を示されたい。

  右質問する。