質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五七号

内閣参質一九〇第一五七号
  平成二十八年六月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員前川清成君提出難民申請者の強制送還に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出難民申請者の強制送還に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十六年十二月十八日に行われたチャーター機による送還(以下「本件送還」という。)により送還された者は、三十二人である。

二の1について

 お尋ねの「経歴」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件送還により送還された者のうち、本件送還前の在留中に本邦において難民認定申請を行ったことのある者は、二十九人である。

二の2について

 お尋ねの「却下」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件送還により送還された者のうち、異議申立て(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十九号)による改正前の出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てをいう。以下同じ。)が不適法であるとして却下した旨の告知を受けた者は、零人であり、異議申立てに理由がないとして棄却した旨の告知を受けた者は、平成二十六年十二月十六日が零人、同月十七日が二十六人である。

二の3について

 本件送還により送還された者のうち、平成二十六年十二月十八日時点でお尋ねのように「難民不認定処分の取消訴訟を提起できる六ヶ月の期限内」にあった者は、二十七人である。

二の4について

 お尋ねの「弁護士」が「難民申請に係る代理人」となること、「異議申立が棄却された場合でも不認定取消訴訟を提起することが合理的に推認される場合」及び「異議棄却の告知の翌日ないし翌々日に、難民申請する者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件送還により送還された者のうち、異議申立てに理由がないとして棄却した旨の告知を本件送還の前日に受けた者であって、本件送還の保安上の必要から外部との交通が遮断されたまま送還され、その結果として、当該異議申立てに代理人として関与していた弁護士に対して連絡する機会がなかった者はいる。

三について

 お尋ねの「本人の同意なく強制送還したこと」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、本件送還以前に行われたチャーター機による送還において、当該送還前の在留中に本邦において難民認定申請を行ったことのある者を送還した例はある。

四について

 難民不認定処分の取消訴訟が提起された場合においては、当該訴訟が終結するまでの間、当該訴訟を提起した者の送還を見合わせることとして裁判を受ける権利への配慮を行っているところである。

五について

 御指摘の最終見解においては、「完全に独立した不服申立機関を設立すべきであり、」との記述の後に、「拒否された申請者が、庇護申請への否定的な決定につき不服申立てを行う前であって・・・すべきである」との記述があることを踏まえると、この「不服申立て」は「司法審査」のみを指しているものではないとも考え得ることから、お尋ねにある「不服申立てを行う、すなわち司法審査を受けられる機会を保証すること」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの同最終見解に「反する」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、本件送還は、関係法令に基づき適切に行ったものである。

六の1について

 本件送還に要した費用は、三千八百五十七万七千百円である。

六の2について

 チャーター機による送還については、平成二十六年度の概算要求の段階においては、フィリピン及び中国への送還を想定していたが、その後の様々な事情を総合的に考慮して、スリランカ及びベトナムへの送還を実施したものである。