質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二二号

内閣参質一九〇第一二二号
  平成二十八年六月二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出不登校施策の現状に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出不登校施策の現状に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの高等学校入学者選抜において「特別な配慮を行っている状況」については、文部科学省において、各都道府県の高等学校入学者選抜の改善等に関する状況の調査(以下「状況調査」という。)を実施しているところであるが、政令指定都市については実施しておらず、また、その調査項目については、その時々の課題等に応じて変更していることなどから、お尋ねの「都道府県ごとの経年変化」及び「政令指定都市が行う配慮」についてお答えすることは困難である。
 平成二十七年度における都道府県の配慮の状況については、同年度の状況調査によれば、不登校の生徒については三十九都府県、障害のある生徒については全都道府県、帰国生徒については三十五都道府県、外国人生徒については三十三都道府県でそれぞれ一定の配慮がなされているところであり、不登校の生徒については、例えば、本人の希望により長期欠席の理由等を記載した自己申告書を受験する高等学校に提出することや、不登校の生徒が在籍する中学校が作成した調査書における出欠及び各教科の学習の記録については受験する高等学校において入学者選抜の資料としないことなどの配慮がなされている。また、障害のある生徒については、別室における受験、試験時間の延長、拡大した問題用紙及び解答用紙の使用など、障害の程度等に応じた必要な配慮がなされている。さらに、帰国生徒及び外国人生徒については、一定の教科に係る試験の免除や、特別定員枠の設定等の配慮がなされているものと承知している。

一の2について

 お尋ねについては、政令指定都市については把握しておらず、都道府県については、平成二十七年度の状況調査によれば、静岡県及び京都府が「調査書を用いず、学力検査のみで選抜を行う等特別な入学者選抜の実施を認めている」と回答しているが、平成十七年度については把握していない。

一の3について

 お尋ねについては、文部科学省において毎年開催している「全国高等学校入学者選抜改善協議会」等を通じて、高等学校入学者選抜の実施者である都道府県教育委員会等に対し、不登校の生徒、障害のある生徒、帰国生徒及び外国人生徒に対する配慮について、全国の対応状況を示しつつ、改善を促しているところであり、現時点において新たな通知を発出することは考えていないが、引き続き、各種会議において改善を促してまいりたい。

二の1について

 文部科学省としては、平成二十七年三月三十一日時点で、青森県、秋田県、石川県、山梨県、岐阜県、大阪府、鳥取県、愛媛県、佐賀県、長崎県、大分県及び沖縄県が設置する二十三の教育支援センターが、高校生を受け入れることとしているものと承知している。

二の2について

 教育支援センターを設置しているいずれの府県も、平成二十七年三月三十一日時点で、その運営を民間に委託していないものと承知している。

二の3について

 御指摘の「調査書を独自で出すタイプの教育支援センター」の意味するところが必ずしも明らかではないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の4について

 教育支援センターは、不登校の児童生徒の集団生活への適応、情緒の安定、基礎学力の補充及び基本的生活習慣の改善等のための相談及び適応指導を行うことにより、学校への復帰を支援し、不登校の児童生徒の社会的自立に資することを基本的な目的とするものである。

三について

 お尋ねの「フリースクールに財政支援を行う等の文言を持つ要綱や条例等を備える自治体」については、文部科学省としては把握していない。

四の1について

 文部科学省としては、「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」(平成十七年七月六日付け十七文科初第四百三十七号文部科学省初等中等教育局長通知。以下「局長通知」という。)を発出し、全ての小学校、中学校、高等学校等において、不登校の児童生徒が自宅においてインターネットや電子メール等を活用した学習活動を行った場合には、一定の要件の下、校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる旨を周知しており、そのような学習活動を行い指導要録上出席扱いとなった小中学校に在籍する児童生徒の数は、平成二十七年三月三十一日時点で二百四十九人であり、その都道府県別の数は、北海道が八人、宮城県が五人、秋田県が十六人、福島県が一人、茨城県が十三人、栃木県が二人、千葉県が八人、東京都が十八人、神奈川県が九十六人、新潟県が五人、山梨県が二人、岐阜県が十二人、愛知県が一人、大阪府が四人、兵庫県が二人、奈良県が五人、島根県が三人、香川県が一人、愛媛県が十五人、佐賀県が六人、沖縄県が二十六人である。

四の2について

 お尋ねの「理由」について網羅的にお答えすることは困難であるが、局長通知においては、不登校の児童生徒が自宅においてインターネットや電子メール等を活用した学習活動を行った場合において、学習活動が当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的なものであること等の一定の要件を満たすときには、校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができることとしているところ、例えば、児童生徒が行った学習活動の内容がそのようなものではなかった等の理由があるものと承知している。
 また、お尋ねの「子どもの権利擁護を趣旨として」の意味するところが必ずしも明らかではないが、局長通知の内容については、都道府県教育委員会等に対する周知を図ってきており、今後とも、様々な機会を捉え、その周知に努めてまいりたい。

五について

 現行制度上、例えば、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第百五十条第七号又は第百五十五条第八号に規定する個別の入学資格審査により、高等学校又は大学を卒業した者と同等以上の学力があると大学又は大学院において認めた者で、これらの各号に定める年齢に達したものが当該大学又は大学院への入学資格を得た場合など、高等学校卒業程度認定試験に合格していない場合又は高等学校を卒業していない場合であっても、大学又は大学院へ入学することが可能となる場合がある。

六の1について

 お尋ねの「不登校等で夜間中学に転籍を希望する者に対して転籍を認める措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、中学校に在籍する学齢生徒が希望した場合に、中学校夜間学級において学習する事例については、文部科学省としては把握していない。

六の2について

 お尋ねの各中学校における生徒の受入れ実績については、文部科学省としては把握していない。また、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)附則第八条に規定する通信による教育については、昭和二十二年四月に義務教育の年限が中学校段階まで延長されたことに伴い、昭和二十一年三月三十一日以前の尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者を対象として設けられた特例的な制度であり、今後、「全国的に展開や周知」を行うことは予定していない。

七について

 文部科学省としては、お尋ねの「不登校児童生徒のうち、発達障がいと診断を受けた者の各都道府県別の実数」については調査しておらず、また、不登校児童生徒のうち「医療機関等に通院する者や、投薬を受けている者の人数」は把握していない。

八について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、御指摘のガイドラインにおける記述は、不適切な行動という意味で用いたものではなく、一般的に不登校などの行動が関係機関等の間で児童の情報を交換して対処することが必要な課題であるという認識を示したものである。

九について

 学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)第二十条に規定する正当な事由については、個別の事案に応じて判断されるものであるが、文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」においては、不登校について、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く。)をいう。なお、欠席状態が長期に継続している理由が、学校生活上の影響、あそび・非行、無気力、不安など情緒的混乱、意図的な拒否及びこれらの複合であるものとする。」と定義しており、一般論として申し上げれば、そのような不登校に該当する場合については、同条に規定する正当な事由に該当するものと認識している。