質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇四号

内閣参質一九〇第一〇四号
  平成二十八年四月二十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出福島原発事故後の除染に伴う汚染土等の処理問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出福島原発事故後の除染に伴う汚染土等の処理問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 環境省が本年四月に策定した中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略(以下「本戦略」という。)において減容化及び再生利用の対象とするものは、福島県内において生じた除去土壌等(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第三十一条第一項に規定する除去土壌等をいう。以下同じ。)並びに福島県内において生じた放射性物質汚染対処特措法第二十条に規定する特定廃棄物であって事故由来放射性物質(放射性物質汚染対処特措法第一条に規定する事故由来放射性物質をいう。)であるセシウム一三四についての放射能濃度及び事故由来放射性物質であるセシウム一三七についての放射能濃度の合計(以下「放射性セシウムの放射能濃度」という。)が十万ベクレル毎キログラムを超えるもの(以下「福島県内除去土壌等」と総称する。)であり、その総発生量は最大で約二千二百万立方メートルと推計している。

一の2について

 福島県内除去土壌等のうち、放射性セシウムの放射能濃度が八千ベクレル毎キログラム以下の除去土壌等(除染等の措置に伴い生じた廃棄物の焼却灰を除く。以下同じ。)は約千六万立方メートル、放射性セシウムの放射能濃度が八千ベクレル毎キログラムを超え、十万ベクレル毎キログラム以下の除去土壌等は約千三十五万立方メートル、放射性セシウムの放射能濃度が十万ベクレル毎キログラムを超える除去土壌等は約一万立方メートルと推計している。また、放射性セシウムの放射能濃度が十万ベクレル毎キログラムを超える特定廃棄物は約二万立方メートルと推計している。さらに、除染等の措置に伴い生じた又は生じる可能性のある廃棄物の焼却灰は、その放射能濃度は現時点では明らかになっていないが、約百五十五万立方メートルと推計している。
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所から放出されたストロンチウム及びプルトニウムによる被ばくの影響は、放射性セシウムに比べれば非常に小さいとされていることから、福島県内除去土壌等におけるストロンチウム及びプルトニウムの放射能濃度と量については把握していない。

一の3及び4について

 平成二十三年度から平成二十六年度まで内閣府及び環境省において実施された除染技術実証事業、平成二十七年度に環境省において実施された除染・減容等技術実証事業等において、除去土壌(放射性物質汚染対処特措法第二条第四項に規定する除去土壌をいう。以下同じ。)の分級処理、化学処理及び熱処理並びに焼却灰の洗浄処理及び熱処理について、それぞれ減容の効果があることを確認している。また、除去土壌の分級処理については除去土壌をその粒の大小により分別することにより、それ以外の処理方法については吸着剤等により放射性セシウムの一部を取り除いて回収することにより、いずれの処理方法によっても除去土壌又は焼却灰を放射性セシウムによる汚染の程度が高いものと低いものとに分別できることを確認している。

一の5について

 実際の減容処理に当たって必要となる具体的なコストは、放射性セシウムにより汚染された土壌を大量に減容処理した実績が少なく、コストを算定するために必要な情報が不足しているため、現時点で明らかではない。

一の6、7、9及び10について

 具体的な再生利用の方法については、今後検討してまいりたい。

一の8について

 本戦略において、福島県内除去土壌等の再生利用については、「管理主体や責任体制が明確となっている一定の公共事業等における盛土材等の構造基盤の部材に限定し、追加被ばく線量評価に基づき、追加被ばく線量を制限するための放射能濃度の設定や覆土等の遮へい措置を講じた上で、適切な管理の下で使用することを目指す」こととしている。

二の1について

 お尋ねの「汚染土等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号。以下「電離則」という。)第二条第三項に規定する放射線業務又は東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(平成二十三年厚生労働省令第百五十二号。以下「除染則」という。)第二条第七項に規定する除染等業務を行う事業の事業者に対しては、これらの業務に従事する労働者について、電離放射線による健康障害を防止するため、電離則及び除染則に基づき、労働者の受ける実効線量が電離則第四条第一項又は除染則第三条第一項に定める被ばく限度を超えないようにすること等とされている。
 これらの規定が遵守されるよう、労働基準監督機関等においては、引き続き、事業者に対して、電離則及び除染則の規定に基づく事業者の責務の内容等を周知するとともに、必要な指導を行ってまいりたい。

二の2について

 具体的な再生利用の基準については、現在検討しているところである。

二の3について

 お尋ねの「公衆に関わる放射線防護の専門家」及び「市民の代表」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会(以下「本検討会」という。)の委員は、福島県内除去土壌等の減容化及び再生利用に係る技術開発の戦略、再生利用の促進に係る事項等に関し、専門的、技術的知見等を有する学識経験者の中から選任しているものであり、本検討会の委員には、放射線疫学、放射線工学等を専門とする大学教授等が含まれているところである。なお、御指摘の「この問題は「全国民的な理解が必要不可欠」とあるが一般市民の生活に関わる施策」であるという点については、地方公共団体、学術・研究機関、NPO等との情報共有や相互理解を進めつつ、国民に対する情報発信、普及啓発等の取組を進めることとしている。また、本検討会は公開で開催してきているところである。

二の4について

 お尋ねについては、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により、当該原子力発電所から放出された放射性物質による環境の汚染が最も深刻な福島県においては、住民が既に過重な負担を負っていること等を踏まえ、総合的に判断した結果、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成十五年法律第四十四号)第三条第二項等において、中間貯蔵施設に貯蔵する福島県内除去土壌等について、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」とされており、政府としては、この方針に沿って取り組んでいくこととしている。

二の5について

 御指摘の「省令で済ますやり方」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、福島県内除去土壌等の減容化及び再生利用に当たっては、放射性物質汚染対処特措法その他の関係法令に基づき適切に対応しているところである。