質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇〇号

内閣参質一九〇第一〇〇号
  平成二十八年四月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員荒井広幸君提出大麻草の医療研究および使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員荒井広幸君提出大麻草の医療研究および使用に関する質問に対する答弁書

一について

 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)は第二回国会における審議を経て成立したものであり、同法第三条及び第四条の規定は、大麻は医薬品として安定した効果が期待できず、濫用のおそれがあり、かつ、幻覚等の有害作用があることを踏まえ設けられたものであると承知している。

二について

 御指摘の「大麻草由来の成分」及び「医療効果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医療に用いられる医薬品には、品質、有効性及び安全性の確保が必要であるところ、大麻の主成分であるデルタ九テトラヒドロカンナビノール(以下「THC」という。)には濫用のおそれがあり、かつ、幻覚等の有害作用があることから、大麻の医薬品としての施用については慎重な検討が必要であると考えている。なお、御指摘の「CNNの医療番組」において、てんかん患者への大麻の施用について報じられたことは承知しているが、米国てんかん学会は、その公式ホームページにおいて、てんかんへの大麻の有効性に関する報告は科学的根拠が不足しているため、専門家と相談の上、既存の治療方法をとるよう強く呼びかけているところであると承知している。

三について

 米国国立衛生研究所(以下「NIH」という。)における御指摘の「大麻草とカンナビノイドの研究」の詳細については把握していないが、NIHは米国内外の研究者に対し研究助成を行っていると承知しており、NIHの公式ホームページで確認したところ、平成二十七年においてカンナビノイドが関係する研究に対する助成として二百八十五件の実績があると承知している。

四について

 大麻取締法第四条第一項により、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のために交付することは禁じられているところであるが、大麻の研究については、同法第五条第一項の免許を受けて、大麻を研究する目的で大麻草を栽培し、又は大麻を使用することができることとされている。

五について

 大麻取締法第四条第一項により、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のために交付することは禁じられているところであるが、化学合成したTHCについては麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第三条の規定に基づき麻薬研究者の免許を受けることにより研究することが可能であり、大麻の含有する各種の成分を化学合成し一定の割合で配合することで、より安定的な品質の下で、科学的に適切な研究を行うことが可能であると考えている。

六について

 御指摘の「本宣言の観点からみて問題がある」の趣旨が明らかではないが、大麻取締法第三条及び第四条の規制については、一についてでお答えしたとおりである。

七について

 大麻取締法第四条第一項第二号の規定は、同法制定時に存在していた大麻から製造した医薬品を含め、大麻の医薬品としての施用を禁止する観点から設けられたものである。

八及び九について

 医療における大麻の有効性について、世界保健機関は現時点において科学的根拠があると認めておらず、精神毒性及び依存性がある有害なものと評価している。また、大麻は、我が国で覚醒剤に次いで濫用されている薬物となっているほか、最新の研究では、大麻使用はその他の薬物の濫用及び依存の危険性を増大させることが明らかになっている。これらを踏まえると、大麻の医薬品としての施用には慎重な検討が必要であると考えており、国家戦略特別区域での措置に係る提案については、引き続き必要な議論を行ってまいりたい。