質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第九三号

内閣参質一九〇第九三号
  平成二十八年四月五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉川沙織君提出通勤手当の非課税限度額の引上げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉川沙織君提出通勤手当の非課税限度額の引上げに関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十八年度税制改正において、新幹線を利用した地方から大都市圏への通勤など、近年における通勤手当の実態等を踏まえ、給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関等の利用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第五号に規定する通勤手当に係る非課税限度額を一月当たり十万円から十五万円に引き上げたものである。

二について

 お尋ねの「通勤手当が支給される企業と支給されない企業の数」については把握していないが、平成二十七年就労条件総合調査によると、通勤手当(定期乗車券、回数券等による現物支給を含む。)を支給する制度がある企業の割合については、常用労働者が三十人以上の企業において八十五・六パーセントである。

三、七及び八について

 健康保険及び厚生年金保険(以下「社会保険」という。)における報酬については、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第五項及び厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第三条第一項第三号において、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいうこととされているところ、通勤に要する費用を支弁するために支給される手当については、実費弁償の形で事業主が負担するものとは異なるものであり、使用者が支給することは法律上義務付けられておらず、また、現実にも通勤に要する費用を支弁するために支給される手当の支給がない事業所も存在することから、社会保険の保険料の算定の基礎となる報酬に含まれるものと考えている。したがって、御指摘の調査及び検討についても、これを行う考えはない。

四について

 お尋ねの「報酬の月額」は、健康保険法第四十条第一項及び厚生年金保険法第二十条第一項の報酬月額を指すものと解されるところ、厚生年金保険については、その報酬月額が十万円、二十五万円、四十万円、五十五万円のときは、それぞれ同法第二十条第一項に規定する標準報酬月額の等級が第一級、第十六級、第二十三級、第二十八級である場合に該当し、それぞれについて平成二十七年度における厚生年金保険の被保険者に係る保険料の十二箇月分の合計額を機械的に算定すると、それぞれ、二十万七千九百十七円、五十五万千六百二十四円、八十六万九千八百七十三円、百十八万八千百二十二円となる。
 また、健康保険については、保険料率が保険者ごとに異なるため、一概にお答えすることは困難であるが、その報酬月額が十万円、二十五万円、四十万円、五十五万円のときは、それぞれ健康保険法第四十条第一項に規定する標準報酬月額の等級が第五級、第二十級、第二十七級、第三十二級である場合に該当し、それぞれについて平成二十七年度における全国健康保険協会が管掌する健康保険の被保険者に係る保険料の十二箇月分の合計額を、全国健康保険協会の各都道府県単位保険料率の平均を用いて機械的に算定すると、それぞれ、十一万七千六百円、三十一万二千円、四十九万二千円、六十七万二千円となる。

五について

 三、七及び八についてでお答えしたとおり、通勤に要する費用を支弁するために支給される手当は社会保険の保険料の算定の基礎となる報酬に含まれる。

六について

 御指摘については、社会保険の給付や保険料の負担の在り方に関わる問題であり、御指摘の「都市部の事業主が地方の労働者を採用するインセンティブ」や「地方創生」といった特定の論点のみをもって検討するべき問題ではないと考えている。