質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第二六号

内閣参質一九〇第二六号
  平成二十八年二月二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員藤末健三君提出独立行政法人日本学生支援機構の奨学金の返還救済制度の利用促進と債権回収強化策の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出独立行政法人日本学生支援機構の奨学金の返還救済制度の利用促進と債権回収強化策の見直しに関する質問に対する答弁書

一について

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)においては、御指摘の返還期限猶予制度等について、ホームページのほか、奨学金の貸与期間の終了時に貸与を受けた者全員に配布する「返還のてびき」や、返還の開始日の直前に奨学金の返還を要する者に配布する文書等に掲載するなどして、奨学金の貸与を受けた者に対し周知を図っていると承知しているが、返還期限猶予制度等を認知していない者がいることについては御指摘のとおりであり、文部科学省としては、今後とも、機構において、返還期限猶予制度等が奨学金の貸与を受けた者に対して適切に周知されるよう促してまいりたい。なお、お尋ねの「奨学金の延滞者に関する属性調査」については、平成二十五年度の調査結果が最新である。

二について

 お尋ねの奨学金に係る債権回収については、次の世代に対する学資金の原資を確保するためにも重要であると認識している。そのため、機構においては、奨学金返還に係る延滞者が長期間延滞しないよう電話や訪問による督促を行ったり、多重債務化を防止するために奨学金返還に係る延滞者の情報を個人信用情報機関に登録したりするなどの対応を行っている。一方で、平成二十六年度から、機構が実施する奨学金事業における延滞金の賦課率を十パーセントから五パーセントへ引き下げたり、経済的な理由により奨学金の返還が困難な者に対する返還猶予の期間を五年から十年へ延長したりするなどの措置を講じている。さらに、文部科学省としては、奨学金の返還月額が卒業後の所得に連動する、より柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」が平成二十九年度から新規の奨学金貸与者に対して適用されることを目指し、検討を進めている。

三について

 文部科学省としては、機構においては、学校単位の返還金の延滞率や奨学金貸与者数等を公表することにより、大学等が学生等に返還意識を持たせるための指導を強化し、延滞率の改善が図られるとともに、大学等が学生等に対して返還期限猶予制度等を適切に周知することが促されると考えているものと承知している。文部科学省としては、今後とも、各大学等により行われている貸与基準を満たす者の推薦や奨学生が次年度に継続して奨学金を受けようとする場合の資格の確認等が機構の定める奨学規程等に基づいて適切に実施されるために必要な周知を含め、機構において適切な対応が行われるよう促してまいりたい。
 お尋ねのうち、「G7諸国における公的奨学金」に関する事例については、例えば、アメリカ合衆国政府が出資する連邦パーキンズローンにおいては、学校単位の返還金の延滞率等を公表していると承知している。なお、お尋ねの「我が国における機構以外の奨学金」については、文部科学省において把握している限りでは、学校単位の返還金の延滞率等を公表している事例があるとは承知していない。