質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一四四号

辺野古新基地建設事業の警備業務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年五月三十日

糸数 慶子   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   辺野古新基地建設事業の警備業務に関する質問主意書

 辺野古新基地建設事業で沖縄防衛局が発注した海上警備業務(以下「本件海上業務」という。)、陸上警備業務(以下「本件陸上業務」という。)について次のとおり質問する。

一 二〇一六年五月十九日の参議院外交防衛委員会において、真部朗防衛省整備計画局長は本件海上業務を受注した株式会社ライジングサンセキュリティーサービス(以下「ライジング社」という。)から業務を再委託された株式会社マリンセキュリティー(以下「マリン社」という。)の残業手当未払い問題について、労働基準監督署からの勧告対象となった八名以外に未払い分があるという情報には防衛省としては接していないと答弁した。
 しかし、この残業手当未払い問題は、午前八時の海上での警備業務開始以前の午前四時半から五時半に沖縄市の会社を出発してからの時間、また午後五時の海上警備の解除以降、会社に戻って報告書を提出して退社する午後七時から八時の時間の残業手当が未払いとなっていることが指摘されたものである。したがって、労働基準監督署に訴えた八名以外にも同様の勤務形態にあった警備員については残業手当未払いが生じることになる。
 真部整備計画局長が、八名以外の残業手当未払いを否定する根拠を説明されたい。

二 今回のような法令違反行為が明らかになった以上、沖縄防衛局はライジング社との業務委託契約を解除すべきと思うが、政府の見解を示されたい。

三 本件海上警備業務では、警備員が船やカヌーに乗って抗議する市民の氏名等を特定し、行動記録を沖縄防衛局に報告していることが複数の警備員の証言で明らかとなった(本年五月十四日沖縄タイムス)。
 報道によれば、マリン社の警備船には、約六十人分の顔写真や氏名を記したリスト(以下「本件リスト」という。)が備えられており、「警備員は船やカヌーに乗った市民をデジタルカメラで撮影、画像を拡大してリストと照らし合わせる。「操船者」「乗員」「カヌー」などに分類して名前、進行方向などを把握。報告は現場指揮を執る母船や現地本部を通じて防衛局に伝わっている」、「こうした監視は、立ち入り禁止の臨時制限区域の外でも実施している。また、市民が拠点とする汀間漁港敷地内の車からも監視していて、出港準備の段階から把握する」とされている。
 これらのことについて、五月十六日、沖縄防衛局長は、「記事の内容については、現在受注者に事実確認を求めている。その結果を踏まえてお答えします」と回答したが、その調査結果の詳細を示されたい。

四 沖縄防衛局はマリン社に、本件リストを渡した事実はあるか、答弁されたい。

五 海上では、海上保安官や在日米軍の警備担当者が、抗議活動を行っている市民の名前を呼ぶことがあるが、本件リストには何名が記載されており、記載内容は顔写真と氏名だけか、明らかにされたい。

六 本件リストの作成に当たり、市民の氏名をどのような方法で特定し、顔写真はいかなる方法で入手したのか、説明されたい。また、沖縄防衛局は本件リストを作成するにあたって海上保安庁や警察から情報の提供を受けた事実はあるか答弁されたい。

七 マリン社から沖縄防衛局に対し、海上での個々の氏名を特定した行動記録が報告されていた事実はあるか。あるとすれば、その報告書の記載事項を全て明らかにされたい。

八 本件海上警備業務の警備員らは、抗議船やカヌーに近づいて、抗議する市民らの写真や映像を撮り続けている。これらの写真・映像は、前述の報道のように、抗議する市民らの氏名を特定するため以外に、どのように使われているのか。また、撮影した写真や映像は誰が、どこで、どのように管理しているのか、答弁されたい。

九 昨年以後発注された四件の本件海上業務及び本件陸上業務の特記仕様書には、「警備員は、過去一年間に個人情報保護法の研修または教育を受講しているものとする」と明記されている。沖縄防衛局が特記仕様書に、警備員の個人情報保護法の研修・教育の受講について記載を指示したのは、何故か。沖縄防衛局は当初から、警備業務の内容が個人情報を扱うことを想定していたのか。また、今回の受注業者は個人情報の保護に関する研修、教育を実施していたか、答弁されたい。

十 沖縄防衛局は本件陸上警備業務の受注業者にも、本件リストを渡し、報告するよう指示した事実はあるか、答弁されたい。

十一 本件海上警備業務に関し、本件リストを作成し、個々の氏名を特定した行動記録を報告させていたことは、「個人情報の保護に関する法律」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に違反するものではないか。また、そもそも憲法で保障された「表現の自由」を侵害する重大な違法行為ではないのか、政府の見解を示されたい。

十二 政府は、本件リスト、報告で氏名を挙げられた市民に対して、謝罪する用意はあるか。今後、政府はこのような行為を絶対に行わないことを確約すべきと思うが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。