質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一三九号

子宮頸がんワクチンに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年五月三十日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   子宮頸がんワクチンに関する質問主意書

一 国立がん研究センターの統計によると、二〇一四年の子宮頸がんの死亡者は二千九百二名、子宮頸がん罹患者数は二〇一一年の数字で一万一千三百七十八名となっている。このうち、HPV(ヒトパピローマウイルス)十六型と十八型に罹患している患者は、それぞれ何名なのか。その数がわからない場合は、何故わからないのか。子宮頸がんワクチン問題を考える際に最も基本的な事実(ファクト)は早急に調査すべきではないか。政府の見解を求める。

二 子宮頸がんワクチンのガーダシルについて、厚生労働省が作成した平成二十三年六月三日の審議結果報告書の「審査結果」には、「本剤の対象疾患から検出されるHPV型の分布は、国内外で異なる傾向も否定できないことから、安全性情報を収集する使用成績調査に加え、本邦における前駆病変等の発症予防を確認するための製造販売後臨床試験の実施が必要と考える」と記載されている。この「使用成績調査」と「製造販売後臨床試験」は実施されているのか。実施されている場合、どの医療機関で行われているのか。終了するのはいつ頃になるのか。終了した場合、その内容を評価するのは、誰が、どのように行うのか。それぞれ明らかにされたい。

三 平成二十七年七月二十八日に、ガーダシルの製造販売元である米国メルク社の日本法人MSD株式会社(以下「MSD社」という。)は、七月三日付で「組換え沈降九価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン」(ガーダシル九)の承認申請を行ったと発表した。ガーダシル九の九価のうち四価が共通するガーダシルの「使用成績調査」と「製造販売後臨床試験」が終了し、その結果の評価が終了するまで、ガーダシル九の承認はするべきではないと思うが、政府の見解を求める。

四 子宮頸がんワクチン「サーバリックス」の審議結果報告書には、国内臨床試験HPV-〇三二試験は、「国内十三施設にて実施された」と記載されている。またガーダシルの審議結果報告書には、国内臨床試験〇二七試験は「国内十四施設にて実施された」と記載されている。この「国内十三施設」、「国内十四施設」はどこなのか。それぞれの医療機関等の名称を明らかにされたい。
 また、両剤国内臨床試験の治験責任医師は誰なのか。氏名を明らかにされたい。
 今国会に提出された内閣提出「臨床研究法案」の目的には、「臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公表の制度等を定めることにより、(中略)国民の臨床研究に対する信頼の確保を図る」と明記されている。医療機関等の名称及び治験責任医師の氏名を明らかに出来ない場合は、その理由も明示されたい。

五 今年五月十八日に日本で開かれたMSD社主催の第三回シンポジウム「女性のための予防医療」に、アメリカのジョージ・ブッシュ前大統領が来日して参加された。このシンポジウムの案内状によると、ブッシュ前大統領は、このシンポジウムのためだけに来日した、とのことである。その前日五月十七日に安倍総理は、ブッシュ前大統領と面談した、と報道されている。その際、ブッシュ前大統領から、子宮頸がんワクチンの早期勧奨再開やガーダシル九の早期承認の要請はあったのか。また、この時期にブッシュ前大統領あるいはMSD社やその関係者から、厚生労働省等の政府機関に対して同様の要請があったのか、それぞれ明らかにされたい。

六 今年四月四日、参議院行政監視委員会で、TPP協定が発効した場合、子宮頸がんワクチンの製造販売会社であるグラクソ・スミスクライン株式会社や米国メルク社が、日本政府のワクチンの積極的勧奨の差し控えに対して、TPP協定の中のISDS条項、すなわち投資家対国家の紛争条項を使って、日本政府に損害賠償請求することが可能になるか、との私の質問に対して、政府のTPP対策本部の澁谷和久内閣審議官は「仮にISDS条項で訴えられたとしても、訴えが認められることは考えにくい」と答弁した。この答弁の根拠について、詳細な説明を求める。

  右質問する。